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氷の女王
時の流れなど感じていないかのような 安古いこのモーテルは中も狭い 下着もつけないままで 君はテレビを黙って見ている やる気のない企画物が垂れ流れている 俺はベッドに座り煙草をくゆらせる 君を間に挟みながら 煙がテレビの光で浮かび上がる 男優のにやけた顔も 女優の作り笑顔も すべてが画面の中で収まっている しかしその半分は 君に遮られてしまっている 映画館のようだ 俺は観客で 画面の中の世界には一切干渉できない 君は演者でもなく 観客でもなく 喘ぐ女優とそれを見て興奮もしない俺の その間に鎮座する影として存在する エアコンの風で君の長い髪がゆれるが その一本一本までもが スクリーンから飛び出る光を遮る 淫らな映画は歪な形に切り取られる 君は依然として動かずに すらりとした背骨を伸ばしたまま テレビのほうを向き続けている その姿には さっきまであれほど熱く伝わってきた体温は 幻だったかのように今は感じられない まるで氷のように 燃え上がるセックスをした後の君は居る 夜はまだ続く
氷の女王 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 966.6
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2017-07-31
コメント日時 2017-08-03
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
この作品は直近に発売された『詩と思想』2017年8月号の読者投稿にて佳作をいただいた作品です。 佳作は作品は掲載されない代わりに選評は載ります。また8月号には入選して作品が掲載された拙作「灰色の丘」もありますので、それや選評と合わせて今作を読んでいただければより面白いかと思います。 8月号で同じく佳作をいただいた「埋めたてて」は文学極道のほう(http://bungoku.jp/ebbs/bbs.cgi?pick=9802#20170731_705_9802p)にアップされていますのでそちらもどうぞ。
0こんにちは。 作品の輪郭がきちんと定まり、事の顛末がわかりやすく叙述されているところにシンパシーを感じて読みました。作品に描かれた場面が二人の関係の過去と未来にどう関わり合いを持つのか、は読み手に委ねられています。これが言葉の外の世界を保証し、僕のように自我表出を表現とすることについてアレルギーを持つ読者にもやや安心感を与えてくれるようです。 ただ、登場人物としての「俺」と語り手との距離の取り方が曖昧で、行為の前後の「君」の捉え方が単純に図式化され、より生々しく複雑な読み方への障害となってしまっていることが残念でした。
0「灰色の丘」の迫力と比べると、この作品の緊迫感は、いまひとつ・・・というところなのかな、と思いました。比べると、という言い方も変ですが・・・。 「埋め立てて」の方のインパクトと幻想性、意味に拠らない意味(というのも、これまた変ですが)世界観の映像化、というようなダイレクトな感覚・・・の方が、ずっと迫力はあると思いました。 〈君は依然として動かずに すらりとした背骨を伸ばしたまま テレビのほうを向き続けている〉 〈俺〉の方を向いていない、かといってテレビから流れるAVにのめり込んでいるわけでもない。 〈君〉は、映像の中の虚飾を実地で確かめた後、なのか。演技などしてやるものか、という意志の表れ、なのか・・・〈俺〉が、〈君〉の態度に焦りを覚えているのか失望しているのか満足しているのか・・・という心情が、まるで伝わってこない。伝わらないように抑制している、そこが眼目であるのかもしれないけれど・・・世界の傍観者のように〈君〉を見つめ、〈君〉が見ている(興奮も高揚感も与えてくれない)映像を見つめている〈俺〉とは、いったい何者なのか。 〈一切干渉できない〉〈今は感じられない〉このフレーズから、激しい交感を望む〈俺〉と、それを拒否する〈君〉との関係性を描きたかったのか、女性の感覚についに同化し得ない男性を客観視しようとした、のか・・・映像喚起力は強いけれども、その関係性を通じて言わんとしているところが、(他の二作と比べて)どうもいまひとつ伝わってこない、そんなもどかしさを覚える作品ではありました。
0モーテルでテレビの企画番組を流れているであろう男女のコミュニケーション。別々の性であろうとするふたり。普遍的な性の存在感を描こうとしたのであろうかと感じました。その挑戦は半ば成功した、のではないかと思うのです。圧倒して支配しようとさえする女性性のありよう。叙情にスキが見えない積み重なる氷層を感じました。
0蛾兆ボルカさん 詩をやるのだから詩だからのことをやりたいと私は思っております。漫画や小説や、いまは動画制作なんかも色々やってきた身として、それぞれの表現方法によって個別に利点欠点があるというのが実感です。なのでそれぞれの利点を活かすことこそがその方法を選ぶ理由になり得るでしょう。詩を書こうとして書かれた詩という評価は有難いです。 ただ、詩中のテレビはこれ完全に有線のアダルト番組として書いたものなんですよね。読み取り方は読者の自由ではありますが、ここでブレが生れるとはさすがに想定していませんでした。もう少し丁寧に説明したほうがよかったかしらん。 淫らでありながら冷めていることについて、もっと個人的な経験からくるものが伝わってくると、もつと良かったのでは、と思いました。 まぁ実際これ経験を元に書いた奴なんですけどね。どこまで話していいのかあれですが、多人数プレイのため一時間バイクを走らせて市町村またいでモーテル行ったことありまして。主催者の彼女が一人なんですけどね、主催者の方は混ざらないで見ているだけ。全員が終わってからゆっくり二人でやるとかなんとかで。 畳敷きの小上がりがあるかなり小さなモーテル、多分一般的な広さの2/3あるかどうかぐらいのところでして、その中に割かし大画面なテレビやパチンコ台が詰められているような場所でした。気のやさしそうな除染作業員の方でして、自分でゴム持っていったらベッドわきの使っていいよ、真面目だねぇ、そういうの好きだよと笑いながら言われたりして。 んでまぁいろいろやった後なんですけど、丁度この詩の構図のように、〔テレビ―主催〕―自分 (〔〕は小上がり。自分はベットの上) という並びになっているのに気が付きまして、明りはそのテレビのバックライトだけで、天上の低い昭和家屋のようなそのモーテルの中をぼやっと照らしていて、なんかそれがとても温かな光景に思えて、だからそれをネタにしてこう詩を書いたんですよ。 そもそも構図が発端ですから、個人的な経験とかそういった方面にははなから意識が向かなかったという裏話でした。 いやぁだからこの詩をビーレビに投稿するか悩んだんですよ。当初は氷を文極埋めたてをビーレビにしようと思っていまして。投稿したら絶対上記の話にはなるしそもそもイチャラブ無い代わり酒の席のネタになるような話は持っている私が語りたくなるしなんちゅうかそういうのビーレビより文極のほうが許されそうな雰囲気あるじゃないですか。んでも定石踏むのもつまらんと思いあえて氷をビーレビにしてみました。どうだったんだろう。んまぁ語っといてなんですがそんな裏話は無視してもらって構いません。
0Migikataさん 結構具体的かつ限定的なイメージの元これを書きました。そこらへんが輪郭の明確さに繋がっているんでしょうね。 行為の前後の「君」の捉え方が単純に図式化され これはかなり意図的に、「君」の人格が現れないようにした節があります。ドライな空気の中で映画館のような光景を流したかったのです。ただコメント読んで生々しさのある方向性も面白いかもと思いました。
0まりもさん 「埋めたてて」は文極見てもらえればわかりますが経緯が現実的なので政治的要素の臭さが出ないよう意識して幻想性高く寓話然としたものになるよう書きました。幻想性は薬味ですよ。 対してこちらは現実に沿うようなイメージを描こうとして書いたものです。なぜっていうのは、例えばビーレビに投稿したのだと「夕陽に顔面」は女子高生「妻の夫」は(人)妻、文極だと「脳の中で」(http://bungoku.jp/ebbs/log.cgi?file=528;uniqid=20170503_417_9587p#20170503_417_9587p)は美少女、『詩と思想』2017年5月号に載った「抱きしめる」も(人)妻……なんでか私の詩に出てくる女性ってロリか熟女かしかいないんですよ。別に狙ってやっていたわけじゃないんですが気づいたらそうで。フェチレーベルかよって。だからひとつ中間的な年齢、自立した成人女性が出てくる詩を書こうってのがこの詩のコンセプトの一つでした。だから現実的な方向になったんですよね。自立した女性ですから、ロリ系のよう男性の願望を満たすがままの存在にはならないし熟女系のような「私」を無条件に肯定してくれるような存在にもならない。 まぁでも、女性を書くって難しいですわ。世界最大の謎はモアイ像でもキャトルミューティレーションでもなく異性なのかもしれません。 今月の三作ではやっぱ自分としても「灰色の丘」が随一ですね。あれは最近私がはまっているfps(完全一人称)視点での表現を実行できた作品でありますから。
0竜野欠伸さん その挑戦は半ば成功した、のではないかと思うのです。 半ばでも成功したのならもう大成功ですね。私もそろそろ非現実の美少女ばかりでなくリアル路線も兼ねて持ち合わせたいですし。
0引用符としていた記号「だいなり」が表示されていないですね。 記憶だと前は表示されていたような。
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