わたしあの日のことは忘れません
母に連れられ眼鏡を買った帰り道
未知の明瞭さに慄いてばかりで
俯いてしまいました
そうして初めて凝視して
地面の色を認識した
わたしあの時のことは忘れません
アスファルトの灰色なんて意識もしない
つもりでしたが模様の美しさに魅せられて
蹲ってしまいました
そうしてさらに丸くなり
感覚が狭く鋭く凝縮された
ひどく興奮したのです
地面を見下ろしながら星空を思うだなんて
恐ろしくもあったのです
自分の世界の不確かさを知ったので
眼鏡を掛けたり外したり
地面の中に散らばる輝きと
地面に塗り潰されて見慣れた灰色
交互に現れては問い掛ける
私の本物はどちらだろう
わたしの本物はどちらでしょう
わたしは母に聞きました
どうしてみんなこれを見ないのって
アスファルトが宇宙に見えないのって
もしかしたら気でも触れていたのか
そうかもしれない
おそらく疑問は受け流されて
残ったものは印象のみか
母はわたしに何かを答えたでしょうか
わたしは憶えていないのです
しかしあの瞬間の
あの感情を忘れることはありません
作品データ
コメント数 : 2
P V 数 : 1448.6
お気に入り数: 1
投票数 : 0
ポイント数 : 204
作成日時 2020-04-23
コメント日時 2020-04-25
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/12/04現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 202 | 0 |
可読性 | 1 | 1 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 204 | 2 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 0.5 | 0.5 |
前衛性 | 101 | 101 |
可読性 | 0.5 | 0.5 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 102 | 102 |
閲覧指数:1448.6
2024/12/04 02時27分00秒現在
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2パターンの読み方で読んでみました。 1.初めから終わりまで素直に読む(普通に読む) 2.先に段落が下げられていない箇所を読み、その後段落の下げられた箇所を読む(それぞれを別々のものとして解釈する) 結果1のパターンではこの作品の旨みは出ないのかな、と個人的に感じ、2のパターンを吟味しました。 初め、本作品は段落の下げられている箇所の方が写実的かつ主観的な感情の描写であり、メガネを初めてかけた正にその時の生々しさが表れており、 また段落の下がっていない箇所はどちらかと言えば今現在の私の回想録的な雰囲気であり、客観的かな、と思っていました。 ……そうなんです、思っていたんです。ここが驚きポイント。 6連目 >私の本物はどちらだろう >わたしの本物はどちらでしょう >わたしは母に聞きました >どう………… この辺りから、それぞれのパートの役割が逆転するのです。 正直最初に読んだ時は、なんだか中途半端な構成な気がするな……と思っていました。が、しっかり構成を見直すとこれがびっくり、「私の本物はどちらでしょう」と言う所で本当にどちらが本物か分からなくなった結果、パートの逆転が起きているのですね。 ひゃー凄い。 こりゃビックリです。 なんだか中途半端だな、とか考えてしまった自分が恥ずかしい。
1眠い人さん コメントありがとうございます。 読み込んでくだされたようで、とても嬉しいです。 そうなんです。 >わたしの本物は… の文以降は、それ以前の文章の法則性を破って書いてみました。 というか、勢いで書いて気付いたらそういう構成で書いてしまっていて、敢えて直さずにそのままの構成を保たせたという感じです。 思い出の当時、眼鏡を初めて掛けたことによる『世界のゆらぎ』と、 その思い出を回顧している現在の自分の中での『世界のゆらぎ』。 この二つの揺らぎを同時に表現できるのではないか?という思い付きでの試みでした。 正直、この詩を投稿してすぐは、やっちまったかなと投稿したことを後悔していました。 それこそ、眠い人さんが書いてくれた第一印象のように、一見ただの中途半端な出来と思われて終わりかなと… ですので、こうして気付いて貰えて、コメントも頂けたことは本当に励みになります。 ありがとうございました。
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