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線が夏が返送が不信が
I. 美しい名前だけ選んで書く 路のまんなか、白墨で きっとおまえは鳴き声だけのいたち 匂いだけただよう裏路地の夕飯 目にだけ見える肉のえろさ 味わったことはないけど 触れるだけの時の端 不在の補助線が引かれたおまえの声 じゃれあったあの声 いつほどけたのかわからなかったぜ 股を擦りあって複製する 鳥の翼だけ 交差点で 誰もいないのを確認して 明日会おうよ、 II. 夏なんて時間があったこと、忘れてる 底の知れない誰かと花火を回して笑いあうもの ぬるい夜気のなかを歩き、漕ぎ、踏みつづけるもの 記憶、ちかちか、と、口のなかでとなえて 濁ったみなもを見てるよう 明日は変則的なしあわせにまぶされてる そういう信仰のもとで 跪くかわりに走っていた III. 省みられない詞だけがきれいだ そんなことはもうわかっていて 葉のうらの繊毛を指の背でなでる 原っぱの住所が知りたいか? なんとなく覚えて愛着を持たされるポスタルコードも? ひとりのたかがしじま そして海には辿り着かない IV. 心が容易に体から剥がれる、あのときの気持ちを思い出していました。夏の海鳴りと潮風の中に、錆びた自転車と歩くきみの隣に、防波堤の先に霞んで目を凝らした未来の予感に。わたしの体がどこにあったか、それはよく覚えていません。でも心は確かに、しゅわしゅわと泡立ち、弾ける季節の中にいたのでした。 踏み切りに立ち止まっても、 ふと横をみると、 きみの髪が風に吹かれながれている 変だね。 変だよ。 ここが時間のそとがわなんてさ。 制服のままはだしになって海に入っていくきみはもしかしたら少し滲んでいたかもしれない。足下にはきみに置いていかれた靴とくしゃくしゃの靴下。目を糸みたいにして歯を見せて笑ってる、声もなく。海鳴りが呑み込んでしまっているの?いや、だってここには時間がないから。一度引いたら戻っては来ないかもしれない漣。いま眼上ぐときみはどこにいるだろうか。浅瀬ではしゃいでいる。もう飽きてこっちに来ようとしてる?それとも隣にいて何もなかったかのように笑う? ガレージの埃きらきら、 誰も見てないことが勇気を出す理由だったんだろうか。 きらきら、きらきら。 時間は流れていないのに、 きみの白い背中は踏み切りを渡ったはずだ、 左に曲がった、いや右、 瞼の裏にも、 隣にいるはずもなく、 きみは見えなくなったのだった。
線が夏が返送が不信が ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1277.5
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 5
作成日時 2020-04-21
コメント日時 2020-04-23
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 3 | 3 |
前衛性 | 1 | 1 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 1 | 1 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 5 | 5 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 1.5 | 1.5 |
前衛性 | 0.5 | 0.5 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0.5 | 0.5 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 2.5 | 2.5 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
量が多いのでまずは目で眺めてみました。言葉が凄いし、おもしろいと感じました。『現代詩手帖』なんか読むよりこっちじゃないかとさえ思いました。半分冗談ですが、半分は本気なのです。 私は部分を楽しんで読む性格もあるので、そういう面から作品を見ると、 >そういう信仰のもとで >跪くかわりに走っていた とか >原っぱの住所が知りたいか? >なんとなく覚えて愛着を持たされるポスタルコードも? とか >一度引いたら戻っては来ないかもしれない漣。 とか >誰も見てないことが勇気を出す理由だったんだろうか。 というところ、とても味わい深かったです。 道具立てとしては、「交差点」「海」「踏み切り」というものがちょっと陳腐に思えましたが、出さざるを得なかったのでしょう。 流れ的、意味的な面から作品をとらえると、これは一読者である私の勝手な読みですが、Ⅰの部の「美しい名前だけ」、Ⅲの部の「省みられない詞だけ」、Ⅳの部の「でも心は確かに」のフレーズが互いに呼応しているように感じました。言葉と心は在り、反面、言葉ではないものと肉体は、存在しなさそうだということでしょうか。難しいですね。
0南雲さん、コメントありがとうございます。 今回は自分のポップさ、通俗性みたいなものと一度向き合ってみたのです。 やはり少し陳腐だったでしょうか。もっと目を向けるべき、取り逃がしたモチーフがあったかもしれません。ご指摘、感謝です。 味わい深かった部分として、幾つか挙げてくださってますね。いいと思うものをいいと思ってもらえるのは率直に嬉しいです。 また、最後に入れてくださった読みですが、興味深く読ませて頂きました。書かれた詩があって、それに対する読みが返ってくる。高度なコミュニケーションだなと思わされます。(思っているだけかもしれませんが) 読んで下さり、ありがとうございました。
0ナイスポエム もっとコメントついてほしみ! 喋ってくるような言葉が優しい 「もし君が本当のことを知りたいのならデイビッドカッパーフィールドみたいに話しはじめたほうがいいんだろうけどなんだかそんな気分になれないんだよね」 って感じがキャッチャーインザライの始まりで いきなりこうコーフィールドくんが目の前に座って僕に話しかけてくる感じなんだけど それと似た親近感じみたものを感じたのでした
0ナイスポエムとのお言葉、ありがたく頂戴します。 「ポエム」って揶揄として使われうるし、そう言われる詩は大抵実際に魅力的ではない。でも「ポエム」的でありつつ、そのことに自覚的なまま「いい」に帰着できるのかを確かめたかったのです。Um Fantasmaさんがナイスポエムと言ってくださったことで少しだけそれが確かめられたかなと思います。 喋りかけるような雰囲気というのは、あまり自覚していなかったですが、確かにそうかもしれません。別角度から言語化されると、認識の解像度があがるのがわかります。 ありがたいコメントでした。ありがとうございました。
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