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irrational
きみは√5を演じた。 えいえんの数列をとほく見つめて 限りあるいのちを限りなく近付けていく。 冬生まれのかさぶた、と 言ったの? きみの生まれた日が 《最初のさんけた》 という『言葉』で伝えられたとき 演じる私に演じよと差し出されたてにをはを ひとつひとつ拾ってくれて、本当にありがとう。 怒りをしらないきみの右目が 『数字』を知っていく日々に 左目だけは数を見つめていた。 いつか私はきみに無理数を教えたけれど きみは「かなしい」と思い、右目で恋をした。 《さいしょの三桁》 は、幾度反復するのだろうか などと問うこともせず 《さいしょのさんけた》 を、愛したまま、 きみの左目はえいえんの数列が 銀河の果よりも続く姿を受け入れている。
irrational ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 885.2
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2017-07-17
コメント日時 2017-08-02
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
〈きみは√5を演じた。〉この不思議な立ち上がり、数学苦手な私には、絶対に思いつかないものだと思いつつ・・・数学の(比較的)得意な息子に、ルート5って、なにかイメージある?と聞いてみたけれど・・・なにか普遍的なイメージがある、というわけでもなさそうなので、逆に言えば、読む人ごとに自由に解釈されて構わない、ということなのかな、と思いました。 掛けあわせると、5、になる。五体満足、の五・・・につなげるのは、いささか無理があるかな、と思いつつ・・・掛けあわせないと完全なものにならない、そんな不完全性を私は感じました。 〈えいえんの数列をとほく見つめて〉このフレーズから思い出すのは、吉原幸子さんの哀切な詩句。でも、全体にそのテイストが響いているというわけでもないので、この行だけ、なんとなく浮いている気もしますね・・・でも、とほく、でなければ、どうしても表せない「気持ち」があるのかな・・・必然性があるのか、どうか・・・素敵な詩行を暗記するほどに読み込むと、そのムードに飲まれてしまうことが多々起こるので、私も自戒するところです。 〈冬生まれのかさぶた、〉傷を保護するための、仮の存在。直れば、用済みとして剥がれ落ちるもの。親の言葉(傷つけることもあるけれど、手助けになることも、たまにはある)も、子供の心のかさぶたみたいなものかな、と思うことがありますが・・・ここでは、きみ、そのものが、かさぶた、と捉えられている。この感覚の新鮮さに惹かれつつ、イマイチ入り込めない、なぜだろう、という気持ちが残ります。 〈きみの生まれた日が 《最初のさんけた》 という『言葉』で伝えられたとき 演じる私に演じよと差し出されたてにをはを ひとつひとつ拾ってくれて、本当にありがとう。〉 このフレーズも、sの音の連鎖や(記憶に刻まれる)最初の3ケタ、という独特の言い方、私もまた、演じる者である、という設定や、出会いが言葉のやり取りに還元されていく流れなど、とても面白いと思いました。 〈怒りをしらないきみの右目が 『数字』を知っていく日々に 左目だけは数を見つめていた。〉 数、と数字。右目と左目・・・作者が伝えたい乖離の感情であったり、矛盾や理不尽、社会との不整合、などなど・・・様々な事柄を代入しながら読みたいと思いつつ、そのような重さをできるだけ削ぎ落して、左右とか、数と数字、といった無機的な記号のようなもの・・・なまなましさを削ぎ落した、観念的な世界に誘い込まれるような気がしました。あえて重苦しいものに蓋をして、それを観念という箱に納めて、その箱を並べていくような感覚。辛さや痛みが伝わって来るわけではないので、心地よく読めますが・・・箱の中身は何だろう、というもどかしさも残りますね。 三桁とさんけた、漢字のごつごつしたイメージと、やわらかく開かれたひらがなのイメージ・・・も、なんとなく、伝わるような、伝わらない、ような・・・ 言葉の感覚に敏感な作者だと感じました。個人的に体感している鋭敏さと他者が感じている度合いの差、これは、大変に難しい問題だと思いますが・・・作者個人が体感している違和感や、観念世界に託している想いの内実を、より詳しく知りたい、そんな印象を受ける作品でした。
0蛾兆氏、まりも氏;お読みくださってありがとうございました。特にまりも氏のコメントの一部は、私の書きたかったものに届きそうなほどだと感じました。「そういうことが言いたかったの。あなた、正解!」ということではありません。私自身が意識できずに書いた部分を、まりも氏が言語化してくれたから私もハッとした、という意味です。
0全体の連関が素晴らしい表現になっていると思います。演じることと数学との関係としては、数の完全性と幻想性(?)、 個人の不完全性と硬直性(?)といったあたりを、明快で深さのある言葉で主題を探したのを見るべきか、 あるいは日ごろの思想を展開したのかといった印象です。良作として、よく楽しめました。
0黒髪氏;お読みくださってありがとうございました。「数の完全性と幻想性」「個人の不完全性と硬直性」など全く理解できませんでしたがさておき。
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