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臨終にあたって地獄の論理的実在を説き聞かされる僕
「人は永遠を丸ごと実感することはできません。 永遠の中に生きていても、今の前後は記憶と予感に支えられているだけです。 特に夢のように意識が周囲の事象から隔絶して成り立っている状態では、物理的手段による時間測定はできません。 たとえ一瞬であっても、あなたが永遠の一部を過ごしている、と感じれば、それが永遠なのです。 記憶は現在からいくらでも紡がれるし、「確かな未来」であっても同じです。 あなたはもうすぐ死んで無になる。 脳が環境に対しての正確な認識を失って暴走し始め、やがて全機能を喪失するまでを時計で測ればほんの数分でしょう。 しかし、永遠の世界を収める時間的な「体積」は、それくらいで十分なのです。 脳が環境の制約を離れて働き始めると、単位時間あたりの情報の展開量はすさまじいものになりますよ。 あなたはそこに穏やかな喜びに満ちた記憶と予感を感じきるだけの確信に満ちた人生を送ってきませんでしたね。 失望と孤独、後悔、恐怖、不安。今回の闘病で、健康時の想像を絶する肉体的苦痛も既に経験しました。 地獄に必要な情報の各要素は揃っています。 そうそう、ドメスティックな輪郭はかなり失われていますが、あなたなりの地獄観もお持ちのようですね。 こんなものですか?」 僕は大きな川の辺り、薄暗闇の荒涼とした河原に立っている。これは現実ではないが、現実だ。この世界を覆す方法は無いのか?足掻こうとするが、世界は堅固だ。身体が油汗に塗れていく感覚がある。 突然、無数の人間の悲鳴や嗚咽が聞こえはじめ、川の向こうに炎に包まれた楼門が現れた。 案内人は言った。 「ようこそ無限地獄へ。」
臨終にあたって地獄の論理的実在を説き聞かされる僕 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1416.1
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 26
作成日時 2019-12-21
コメント日時 2019-12-22
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 2 | 2 |
前衛性 | 6 | 6 |
可読性 | 6 | 6 |
エンタメ | 5 | 5 |
技巧 | 3 | 3 |
音韻 | 1 | 1 |
構成 | 3 | 3 |
総合ポイント | 26 | 26 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 0.5 | 0.5 |
前衛性 | 1.5 | 1 |
可読性 | 1.5 | 0.5 |
エンタメ | 1.3 | 1 |
技巧 | 0.8 | 0.5 |
音韻 | 0.3 | 0 |
構成 | 0.8 | 1 |
総合 | 6.5 | 7.5 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
見事。
0感謝。
0文章のうまさが、際立っています。それに、現実や論理に基づくようなことを、確実なこととして、感じているようで、 思考が自在で面白く、創造性と自由と効果の素晴らしさ、脳自体へ自由に働きかける面白さが、 際立っています。 派手さに走ったりすることもなく、言いたいことと、言っていることが、二重にお互いを引き立て合うような、不思議な印象があります。 それは、もっと言うと、現実と想像とが、生み出しあうような、不思議な印象です。そして、それは、 正しいということが、言えると思います。なぜ正しいと思うかというと、それが、意味を生み出しているからです。 内容の方は、地獄ということですが、筒井康隆などを、ほうふつとさせるものだと思いました。 実際の地獄を、論理的に導き出しておられるので、やはり、感情に溺れていない、強い詩に思います。 うまく捉えきれないのですが、僕が捉えられた結果の範囲を見ても、時間の謎や、論理のもたらすものと現実 との間の二重的な謎、といったものを、明らかにされており、感嘆しました。
0地獄の恐ろしさの表現がすごいとかんじました
0黒髪さん、お久しぶりです。コメントありがとうございました。 過分な評価を頂きましたが、読み返すと粗も目立ちます。「無限地獄」はやっぱり「無間」ですしね。 論理を見失わず、語り手のテンションが上っていくように心掛け、また怪談風の味も加えました。 福まるさん、コメントありがとうございます。 地獄はチラ見せくらいの方が恐さが伝わるみたいですね。
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