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エキゾチカ
エキゾチカ 毎日の空砲に名前 つけなくなった12歳 はるか昔から鳴り続けている 耳を塞ぐこともやめてしまい 鳴っていることさえわからなくなった 耳すましても聴こえなくなった 慣れてしまうことは劣化であって ずっと鳴っていることが鳴っていないことと同じだなんてと絶望したものだ もちろん彼らには聴こえていないなにひとつ 我々は確実にひとりずつ消えてゆく 消えさせられてゆく 時間と一緒に流れゆく火炎 灯れば消えて 消えたら二度と灯ることはない そのことを忘れてはいけない 混乱のなか 落ちる距離に比例して処理することのできなくなる種子 ぽったりと人の影に収まり やがて形ととのえる茄子 晴天に水の幼さをまき散らしても 猿が砂で遊ぶのに拍車 かけて 甲斐なく いなくなる 刻む蜃気楼に針落とすその時 頭は垂れ下がり 呪いは間引き 日は落ちて 鮭の腹を裂き また腹を満たして縫い閉じる 自分の腹を縫い閉じる 人間の腹をこねるならばそれもまた工作 純粋に形だけを整えたなら静物 ゆるす必要もなく 畜生がもの言いもせずに食い金を払う 人間以外に死があるが 宇宙にも死があるというセンチメンタルを 粉砕し 目的 貫徹し 午前から永遠までを泳いで渡る 一方で、私は毎晩自分とは異なる肌の色した人に銃で撃たれる夢を見る 銃で撃つ夢も見る かといって目の前では 卑屈で泣くという習性を持つ 空気を殴るのも茶飯事 彼が一晩中泣きながら話していたことの 単語のひとつさえもわからなかったけれど 火に照らされて言葉は音楽のようで 武器を持たずに一緒に寝ることの意味を 放置したまま止めることなく聴いていた 遠く離れたところから見ている わかられることを必要としない音楽は 私が気持ちいいだけだと思っていたが 時間の端と端をそれぞれ持つ偶然は そのままで このままで良い のだと互いに大きなくしゃみをし いつか戦争が起こるのを待つ 角度によっては重力のない砂漠 鰓で呼吸しうつむく軽躁の 星霜の奥まで届くようにと あるものが白い旗をあげる 自動的にようやく迫る船 彼は乗り込むつもりであり その船は その他もろもろの重力と 暴力の後始末をつけに 宙に浮くことを望むものたちを 迎えに彼方からはるばる 銀色でできて やってくる 声も立てずに やってくる 手を繋いだことのない者は乗り込むことなく 常に過去に浮かんでいる船は乗っても沈まず 日々に支障をきたすから苦しんで静ませる 跡形もなく つまりあらゆる文明を捨てて 死んでいったことを省みることもない これから彼らは ずっと鳴っていない空砲を 朝も昼も夜も踊りつづける つまり彼らに もはや誰も攻撃をすることはできない だって届かないのだ
エキゾチカ ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1994.5
お気に入り数: 1
投票数 : 0
ポイント数 : 28
作成日時 2019-12-13
コメント日時 2019-12-23
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 6 | 6 |
前衛性 | 2 | 2 |
可読性 | 4 | 4 |
エンタメ | 2 | 2 |
技巧 | 2 | 2 |
音韻 | 5 | 5 |
構成 | 7 | 7 |
総合ポイント | 28 | 28 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 1.2 | 1 |
前衛性 | 0.4 | 0 |
可読性 | 0.8 | 0 |
エンタメ | 0.4 | 0 |
技巧 | 0.4 | 0 |
音韻 | 1 | 0 |
構成 | 1.4 | 1 |
総合 | 5.6 | 5 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
この詩、気に入りました。私は完敗だ。 この長い詩には、すぐれた詩句、表現が数知れず埋め込まれていて、息が切れそうになったちょうどそういう時に、詩を盛り上げていて、何が書かれているのかという、内容を問うよりも先に、詩句、表現を味わうことができます。 私は物事からキーワードを取り出したり物事を要約することが嫌いな人なので、この詩についてもそういうことはしません。すべての字が大切です。
0何度も読みに来た詩は多分これが初めてです。また読みに来ると思います。 退廃的な世界観と、垣間見える人情のバランスが好きです。 メロディーのない歌みたいだと思いながら読んでいたところ、途中で音楽の話になり、そういえば序盤でも音の話をしていたと伏線に気づいたり つくりが深いなと感じます。読めてよかったです。
0戦争と死を詠んだ詩ということでしょうか。 それをこのような角度で、完成度を高めたのはすごい事だとおもいました。 >はるか昔から鳴り続けている >耳を塞ぐこともやめてしまい >鳴っていることさえわからなくなった >耳すましても聴こえなくなった 感覚が鈍麻するほどの空砲が撃たれ、 >宇宙にも死があるというセンチメンタルを >粉砕し 目的 >貫徹し >午前から永遠までを泳いで渡る 死を詩情豊かに思い、 >そのままで >このままで良い >のだと互いに大きなくしゃみをし >いつか戦争が起こるのを待つ 諦観し、 >だって届かないのだ そして終わったのでしょうか。 何度も読む必要がある詩かもしれません。
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