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グラスハープ
正しい流れ星になるために、ぼくは学校に通っていた。紙 飛行機で届けられる人間の子供の願い事を、きちんと叶え ることが正しい在り方で、仕事を終えたら綺麗に燃え尽き ることが正しい生き方だと教わったのに、先生はいつまで たっても燃え尽きない。友達は、毎日のように一人ずつ消 えていく。空席には、やがて新しい生徒が現れて座る。 ぼくは落ちこぼれだった。いつでも先生の言うことと逆の ことしかできなかった。ぼくの身体は、カルメ焼きみたい だった。お日様に憧れていた罰だ。ぼくは時々アルマジロ になる。みんなは丸まっているぼくを使ってサッカーやド ッジボールをして遊ぶ。授業中、ぼくは言葉がわからない ので、ひとりで日記を書いていた。今日はリンゴが空に実 りました、今日は風がウソをつきました・・・。友達が親切そ うに取り上げて、みんなの前で読み上げた。みんなが笑っ た、先生も笑った。ぼくも笑おうとしたけれど、からから の目玉だけがカタカタと鳴った。 家に帰ると、目玉がクラゲのように膨らんでいたので、網 に入れて物干しざおに吊るして干した。したたる水が綺麗 だったので、グラスを探して下に並べた。並べたグラスに 指で触れると、ウィイイイイイン・・・と部屋に響く。音はオ ーガンジーのスカーフのようにぼくを包み、するすると部 屋にほどける。ぼくは窓を開けた。青や紫に光りながら、 音は風に運ばれていく。
グラスハープ ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1320.3
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2017-06-25
コメント日時 2017-07-04
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
上手に書けていると思います。こういう作品が好きな人も多いし、評価もされるでしょう。 しかし私はこの詩を好みません。かろやかな詩語を用いて美しく痛みを描くという形式が、あまりにも手垢にまみれていると感じるからです。B-REVIEWの先月の大賞「新宿のシャンゼリゼでベトナムごっこをしたいだけ」も、同じような指摘が可能な作品であると感じました。この掲示板ではウケる形式なのかもしれません。 痛みを描くとき、ややポップな方向にずらす、あるいはユーモアを織り交ぜるという手法の裏に、「痛みを真っ向から描くのはダサい」というような意識が感じられることがあります。しかし私はそれには同意できません。 作品の批評ではなくなってしまいました。そう思う人もいるのか、程度に読み流してくだされば結構です。
0コメントありがとうございます。 二連目、確かに、日常性から、突き抜けてないというか、ぶっとび感、デフォルメの勢い、そのあたりが、まだ足りないかもしれません。 アルマジロ的な防御、の生真面目さ、よりも、エリマキトカゲ的な、どわーっと駆け回るユーモアというのか、あっけにとられるぜ、的な感覚の方が、突き抜ける強さに繋がるような気がします。
0まりもさん、こんにちは。 僕には『銀河鉄道の夜』のジョバンニのモノローグを聞いているように思えました。物語の少年が躍動しています。 どんなに日常的な描写があっても、いい意味で地に足がついていない。地面からの浮遊に成功していると思います。 80年代の良質な少女漫画の幻想のようでした。
0自分の身体をカルメ焼きに比喩した作品に始めて出会い、興奮いたしました(^^) 最初の連が、あまりにもよくできているんですが そうすると最終連に行くに連れて着地に困ることはありませんか?しかし、最後まで想像力が炸裂していましてそこに大変好感もちました。 素敵な作品をありがとうございました。
0完備さんへ 率直なコメントありがとうございます。痛みを美化する、ストレートさを削ぐ、あるいは真綿でくるむ・・・という、守りの手法だけでは、自分の鬱屈を別の言い方で言い換えたに過ぎない、逃避なのかもしれません。単なる言い換えではなく、そこに新たな詩的世界を現出する、その方向に多少なりとも踏み出しているか否か・・・その部分を、常に自省していきたいと思います。 Migikata さんへ 元々は童話の形態で書き出したものでした。学校、という閉ざされた空間で、複数の登場人物が主人公を追い詰めていく会話となり、他者を外したモノローグの形になりました。賢治の世界も響いているかもしれません。 村田さんへ カルメ焼って岩石(火山岩)に似ているな、と常々思っていたので、このような比喩がイメージされたのかもしれません。 全く種類が違うけれど、外見や性質や状況が似ている・・・という連想ゲームのようなやり方で、物事を見ることが多いです。コメントありがとうございました。
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