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あれはわたしたちの駅まで まっすぐに至る広い道路だった 街路樹がきらめく晴天の日 わたしはこの道路を走るバスに 初めて一人で乗った あの時わたしは幾ら持っていただろう 余計には持たされず 与えられたものだけで大きな駅に着くことができた 与えられたものだけで生きていたのだった 時にわたしの内側で 液状の記録媒体が再生される すでに死滅している夢や欲望が ドロドロと見えてくる それらは渋滞し 連なって輝く わたしは歯嚙みして眺め遣る しばらく経つといつもこの渋滞は 濁流に返って消えてゆく 噓をつくのが嫌だから わたしは色々なことをやめた やめ続けていったら 何かを持っている証拠を言えない人間になっていた わたしは今 ここにたどり着いた わたしは住み慣れない新しい隣人として 挨拶がてら呟く 「慌てないで、今の今与えられているものを大切にしていこうと思います、あの頃のように」 ここはわたしの最後の 掛け替えのない住処、盆地だ 峠なんか探さない 誰かに 「まだそこに住んでいるんだね」 と言われても 峠なんか探さない 風にまくられるにまかせ続ける砂漠の面 その砂漠のように 何にもこだわらない 減ってゆくものはないであろうし 捨てられるものもないであろう 且つ且つ与えられているもので生きる ここにはもう わたしたちの駅 はない そして 何かを持っていることの証明も できないにしても
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作品データ
P V 数 : 1191.6
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 15
作成日時 2019-10-04
コメント日時 2019-10-04
項目 | 全期間(2024/12/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 6 | 6 |
前衛性 | 1 | 0 |
可読性 | 3 | 2 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 4 | 4 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 1 | 1 |
総合ポイント | 15 | 13 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 1.5 | 1 |
前衛性 | 0.3 | 0 |
可読性 | 0.8 | 1 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 1 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0.3 | 0 |
総合 | 3.8 | 2.5 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文