生ぬるい生活 - B-REVIEW
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PICK UP - REVIEW

ことば

ことばという幻想

純粋な疑問が織りなす美しさ。答えを探す途中に見た景色。

花骸

大人用おむつの中で

すごい

これ好きです 世界はどう終わっていくのだろうという現代の不安感を感じます。



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生ぬるい生活    

亜熱帯の夕立が東京の下町と私を濡らし、シャツと皮膚が境を少しだけ曖昧にする。体温に近い雨粒を遠い昔のギリシャの人ならばきっと、何かの神様に喩えたろうなとうっすらヘレニズムかぶれの感傷を覚えつつ、家路につく。 この国の四季は失われるって知ってもあまり驚かなかったのは、ずっと季節の彩度の褪せる過程をゆっくりとゆっくりと五感で触れていたからだと思う。それにもうこの国は継ぎ接ぎだらけの腐乱顕主体んフランケンシュタインの怪物で、歴史は透明にされたまま、もう次の神話を孕んでる。宇宙がひらかれる前の無の態勢フォームへと変態しながら。 きっと私は次の宇宙へは行けない人だろうってぼんやりと想いながら台所で食べるOIKOSのヨーグルトは矛盾している気がするけれど、いずれ滅びる命でも栄養のあるものは美味しい。カロリーメイトの約半額で買えるパチモノのバーを噛みながらモロモロとこぼれ落ちる欠片を指の腹にくっつけて、ティッシュの上に落としてゆく。まるで報われぬ死者への慰霊のように。 こうやって、生ぬるく、傾いてゆく世界の速度をやり過ごせなくなるまで暮らすのだろう。きっと、その時が来たら詩の一編だって脳裏に灯りはしないのに、今は鮮やかな滅びだけが、ダイエット・コークのように熱量を無くして泡沫に弾けている。


生ぬるい生活 ポイントセクション

作品データ

コメント数 : 4
P V 数 : 2272.5
お気に入り数: 0
投票数   : 0
ポイント数 : 58

作成日時 2019-08-21
コメント日時 2019-08-25
#テキスト #アドバイス募集
項目全期間(2025/04/11現在)投稿後10日間
叙情性1616
前衛性22
可読性1414
エンタメ11
技巧1313
音韻11
構成1111
総合ポイント5858
 平均値  中央値 
叙情性3.22
前衛性0.40
可読性2.81
 エンタメ0.20
技巧2.61
音韻0.20
構成2.20
総合11.64
閲覧指数:2272.5
2025/04/11 17時50分29秒現在
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    作品に書かれた推薦文

生ぬるい生活 コメントセクション

コメント数(4)
ジミー
ジミー
(2019-08-24)

後ろ向きな未来の想像って字面だけなら嫌なイメージがあります。でも詩にするとキレイなんですよね。不思議。貴方の詩、キレイです。 内容についてです。滅んでいった文明と、きっとくるであろう自分の終焉は、時は違えど終わるという意味では共通するものですよね。自分の好きな終わりと同じように、自分もキレイに終われたらいいなって時々思います。それに対しては、周りと喧々諤々しても、自分よければ終わりよしって、私は思います。それとも、貴公は終わりの時に、周りが美しいことを望みますか?周りも、自分も美しい状態で終われたらとは私も思いますが、どうでしょう?

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なゆた創a.k.a.NORANEKO
(2019-08-25)

yamabitoさんへ 率直なご意見、ありがとうございます。固有名詞についての指摘について、少し意識的になって書いてみようと思います。 ジミーさんへ お褒めいただき恐縮です。私は実際の滅びというものを美しいとは思いませんが、時折そういったものを漠然と甘やかに捉えている自分を見つけて苦笑することはあります。そういった愚かさを含めてこの作品には書きました。 沙一さんへ 私の意図したところを拾ってくださり感謝です。二連めの“しき”の解釈を興味深く受け取りました。

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藤 一紀
(2019-08-25)

おはようございます。yamabitoさんのコメントの中の「若さがびりびりする」という感覚、私もそれは感じたのですが、どちらかというと、さほど意識してはいないけど、現在の日常を生きる人のリアリティを言語化したら、こんなふうになるんじゃないかなと思いました。じめじめと湿っぽく貼りついてくるようなどこか鬱陶しい感覚とか、少しずつ感性を奪われていくような気持ち悪さとか、不完全燃焼のままエネルギーを滞留させてしまっているか、もしくは使われないまま漏らしてしまってるような居心地の悪さとか。そこからどこへ向かおうとするのかはまだ見出せず、生ぬるさのなかにとどまっている不味さが現れているように感じました。

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なゆた創a.k.a.NORANEKO
(2019-08-25)

藤一紀さんへ 拙作をお読みくださりありがとうございます。たしかに、今作はこの世界の一角に日常を生きることの空気感をテクストのなかに漂わせることが目的のひとつでした。不快さや閉塞感、自己陶酔に感傷といったものを含めて叙情のなかに溶かし込むことが詩のなかにある種のリアルを籠めることだという感覚は昔からありますね。

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投稿作品数: 2