一瞬の素描 - B-REVIEW
新規登録
ログイン
PICK UP - REVIEW

ことば

ことばという幻想

純粋な疑問が織りなす美しさ。答えを探す途中に見た景色。

花骸

大人用おむつの中で

すごい

これ好きです 世界はどう終わっていくのだろうという現代の不安感を感じます。



作品を
別枠表示

一瞬の素描    

夕方の草原を蛇行する河。鈍色に光る北極の海。 飛行機に乗って地球の形を眺めていると、僕たちは決まってあの世界に引き戻される。 心地よくて、少し恐ろしい宙吊りの世界。 大きな月が沈んだあとの蒼い砂漠に、一人放り出された気分。濃い草と土の匂いに塗れて、 輝く夜空を眺めているような気分。世界の何もかもが不思議で仕方ない。 どうしてこの川はこんな形なのか。この氷海はなぜこんな模様をしているのか。 あの星座は? あの丘は? あの森は? その形象には、世界についてのどんな手掛かりが隠されているのか。 竜の卵のように柔らかく強靭な問いの前で、僕たちは息をひそめ、じっと立ち尽くすばかりだ。 世界には無数の色がある。無数の形と匂いがあり、音がある。 いつどのようにしてそれが生まれてきたのか、そこにどのような意味があるのか、 皆目分からないけれど、世界は時おり気まぐれに、太古の問いに対する答えを、 言い換えれば「裸の意味」を垣間見せてくれる。 凍結した呪符のような絵画。夢の地平で震えるサスペンス。最小限の音でつくられた 奇跡的に透明な旋律。そして束の間に消え去る鋭い愛の言葉。 蒼い砂漠をいくつも越え、ひび割れた鏡の海を渡り、時間の濾紙を使い切ったある日、 人類はきっと宇宙の謎を考えながら消滅していくに違いない。 街も森も風化し、やがてこの水の惑星もすっかり干上がってしまうだろう。 流砂に埋もれた都市の廃墟、そのずっと奥まったあたりに一枚の紙片が落ちている。 遠い昔、だれかが残したメモ。数字と記号を組み合わせた、わずか数行の走り書き。 人が消え去っても、刻印や記号は残るだろうか。それは、消えゆく風紋のように 精妙で気高い痕跡。世界の秘密についての一瞬の素描──。


一瞬の素描 ポイントセクション

作品データ

コメント数 : 4
P V 数 : 1775.9
お気に入り数: 0
投票数   : 0
ポイント数 : 26

作成日時 2019-04-20
コメント日時 2019-05-19
#テキスト
項目全期間(2025/04/05現在)投稿後10日間
叙情性1111
前衛性00
可読性1010
エンタメ55
技巧00
音韻00
構成00
総合ポイント2626
 平均値  中央値 
叙情性3.72
前衛性00
可読性3.30
 エンタメ1.70
技巧00
音韻00
構成00
総合8.72
閲覧指数:1775.9
2025/04/05 21時30分38秒現在
※ポイントを入れるにはログインが必要です
※自作品にはポイントを入れられません。

    作品に書かれた推薦文

一瞬の素描 コメントセクション

コメント数(4)
かるべまさひろ
(2019-05-18)

agathさんの作品は、いつも完成していると感じていて、尊敬しています。 なんで完成していると感じるのかなと、少し読み込んでみたのですが、実は用いられる語の意味をそのまま100%のまま書かれているのが特徴だからだと読みました。 何を言っているかわからない、という現象がほぼ起きないつくりなんです。 言っていることはわかるので、わからない部分や想像や読解で補完する部分は、語の外側に配置されているので、スマートで奥が深いなと感じます。 ありがとうございます。

0
agath
(2019-05-18)

かるべまさひろさん、コメントありがとうございます。過分な評価をいただき恐縮です。 実はそれほど考えて書いているわけでもないのです。表現や言葉を考えているというより、言葉の周辺を手探りしながら、まあこんな感じかなあ、よし、これで行ってみよう、エイヤッという感じです。 でも読んでいただけて、すごく嬉しいです。ありがとうございます。

0
哀愁亭
(2019-05-18)

ジョディ・フォスター主演の「コンタクト」という映画の中で、主人公の宇宙飛行士が宇宙に行ったときに言うのです。「私は科学者である自分こそが宇宙に行くべきだと思ってた。でも、それは間違っていた。私には、この美しさを言葉にすることはできないから。宇宙に行くべきだったのは私じゃなく、詩人だ」と。 僕はこの映画のこのセリフがとても好きで、この作品を拝読して、そのことを思い出しました。詩人は、詩は、やはり美しさを語るものなんじゃないかと僕は思います。詩はそれだけのものではないとしても、それでもやっぱり。 この作品のような美しい詩を僕も書きたいです。

0
stereotype2085
(2019-05-19)

詩書きの物思いをそのまま誠実に描写したような出来映え。まさに一瞬の素描。読者にこのやや長い思索が、本当に一瞬のうちになされたのだと思わせる表現があれば、もっと良かったかもと個人的には思いました。

0

B-REVIEWに参加しよう!

新規登録
ログイン

作品をSNSで紹介しよう→

投稿作品数: 1