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百色打嗝
(詩想はあふれこぼれきったね。湯切りをしながら痔瘻を思いやるよ。ひとり→ふたり→さんにん。ため息は、なぜでるのか、雨のなかです 夕闇がステューシーの胃の中で滅んだ始業式の日、僕はこっそりさぼってミカルゲを育てていた。ハイアットから通いに来てる、幼馴染みのペリエに再会した連休の最後の夜、明日どうかハッキングして出席にさせといてと頼んだ時の、膝にまだ灰土が染み込んでいる。 茶色をぼーっと見る。黒に近い。どす黒い茶色。 実はここから、会場が見える。お下がりの望遠鏡で、いつも覗き用に使うように設定して、ペリエを確認する。器用な右手と器用な左手とばらばらに動く左目と右目。ドラムプログラムで鍛えた力を人生の充実のためには惜しまなかった。この奇妙な自分の動きが、なにかタオル越しのそわそわに似て好きだった。 ステューシーが登壇している。また粘膜と捕縛の関連について、ネオレジオネラ菌のこと。ペリエが殴っている。個人的な百鬼夜行を、僕は参列するでもなく、左手は厳選している最中で、右手は用を足していた。右目だけが自由かのようでいて、そうでもない。右目はどこへも行けず、ただこの一点で地球儀のように芯からは逃れられずに、ぐるぐる廻るただの独楽だ。 これが僕の極楽。読書タイムの秘密だ。 だった。よ、と。この地に眠る亡霊の手が寄り添って、寝返りを打つペリエの横顔、漫然とした彼草原を、百回目を過ぎる頃。の。わたしがいのちを感じたのは、うまれたからではなく、数多くの詩想の海の一粒の分子として組み込まれ(もしか、)、ここは凪のまん中:Area sr 「壊れた精神を口にするのは簡単だけど、狂気は更に難しいのだ」 右手にはそうメッセージが遺されていた。 ステューシー。ゲップを繰り出そうとしている。僕が今いる地点・地層は古代のバッガラ系より訪れたタイプの指紋の上に立つ。まさに山積されたつちつちに、生ぬるい革靴をはさんでいるんだ。僕。まだ僕がうまれる前に僕が(当時の呼び方で)ボーイスカウトに参加していた頃の話、(斜向かいの)群生主義の伯母さんから教わった指で秘密を描く仕草やコツを、アイデンティティと呼ぶのが嫌だった。認めるまで、時間のかかったそれ。きっと、橙色よりも黒い吐息に、指はとけていく。それが僕の虎や病であるんだ。古代のタトゥーとしてのそれだった。 左目を見られた。ステューシーじゃない。ペリエでもなかった。 誰にだ? 右目か? ) ほんとうに五月蝿い大通りの歩道の特に狭くなっている部分で、空気ガードレールで留まって左手を眼鏡のつるの定位置へ導いてから初めて裸眼であると確認する。忘れてしまうことが多いなら、そのたびに再確認をすればよい。のだが。初めてのコンファームを、もしか、して、毎回しているのかもしれない。( ほぼ確実に、鍛練に勝るものはない。厳密には筋肉は裏切るのだが(ライフルには勝てないし。動体視力を筋力と勘定するならぐうだが)、学習された能力によって生来の機能は果たされてきた。そして、研究は満たされつつあって、 ステューシーも、ペリエもまた、自らの制御に長けていたように思える。ふたりが融合を果たした昨年末、圧倒的な能力で脱人間をまざまざしたの、僕は記憶をめぐらした。その時はまだペリエが内在している(外在もしていた?)のは気付いてなかったのだが。僕は右目・左目・記憶の三景色の狭間に自我を見出した。 鋏は構えられている。獅子や虎を狩るのに大迫力なアサシンが潜んでいる、この緑地、の、外になにもかもが。ある 事を済ませた右手は(その読書カードはオリジナル)清廉な「ピアニスト」を消えない白いインクで記した。すべてのデータを出力しておくにはもっともっとばらばらに、鍛練が必要だ。ペリエ。僕も会場に行けたらよかったのだけど、おそらく未来、僕は会場に居たと記録されていることだ。芳名帖のログもまた、綺麗な認証痕である、とペリエが横顔で言っている。この目を見たのは鬼か仏か、ステューシーの背広が透けてきて、ノウス、デルトイデウス、蛇か人か。僕は、太陽暦の大晦日を明けると、また一つ齢を数えるのだ。それに正を返す。ただ、そのフリック入力が、痛くて、怖い。ささくれが、めくれたかのようだったので、今一度目を、閉じました。 これは、なおるだろうか。 ステューシーの凄まじいゲップにたじろがないペリエの壮麗さに引いてしまった。 そして、色違い。ウェル、カム、撫でるために、僕の方から世界の膣へ潜っていきます。その冒険譚をエスノってくる奴が、居たのを、思い出して、全身を、振り向かせて)
百色打嗝 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1943.5
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 66
作成日時 2019-04-10
コメント日時 2019-04-18
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 20 | 20 |
前衛性 | 12 | 12 |
可読性 | 1 | 1 |
エンタメ | 6 | 6 |
技巧 | 20 | 20 |
音韻 | 1 | 1 |
構成 | 6 | 6 |
総合ポイント | 66 | 66 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 3.3 | 0.5 |
前衛性 | 2 | 0.5 |
可読性 | 0.2 | 0 |
エンタメ | 1 | 0.5 |
技巧 | 3.3 | 2.5 |
音韻 | 0.2 | 0 |
構成 | 1 | 0 |
総合 | 11 | 11.5 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
ユリイカ2019年2月号「今月の作品」佳作 作者自身の再読にあたっての付記: 「詩想」は造語。「詩世界」とか「女詩的」とかの使い方と同様のもの。 執筆当時、痔瘻の術後だったため、「湯切り」は素麺のこと。 こうして実体験を脈絡なく潜り込ませるせいで、 詩の主体は作者、という認識を促進させてしまっている点は、たまに反省をする。 タイトルにもあるが、 カラフルなため息とか虹色のゲップとかが主題。 どうやら幼馴染の女子とめっちゃ久しぶりに再会したらしい。 でも「僕」といえば、もっぱら片手でポケモンを厳選して、 片手で自慰にふけって、 片目で覗きをして、 片目で読書をしているような人間になってしまって、 「ハイアット」から通うブルジョアジーな幼馴染との差に 引け目を感じているよう。 幼馴染の女子が授業の成果発表をしていると、 頭のイカれた同級生が殴りかかってきたらしく、 辺りはしっちゃかめっちゃからしい。 さて、人が死んだことのない場所はないようで、 この地も同じように亡霊がいるよう。 精神はそれを感じ取ると簡単に壊れてしまう代物らしいが、 「狂気」というものは「更に難しい」と。 右手に書かれていたということは、精液か あるいは、幻覚かノンバーバルな表現で読み取っているのか。 そうこうしている間に、クラスではポケモンバトルさながら 幼馴染の女子が「ゲップ」を繰り出すシーン。 すっかり臨場感を覚えていたが、「僕」はそれをあくまで 覗いているのであって、 クラスの外のどっか、土のあるところにいるらしい。 「群生主義」とは出る杭は打たれるの類義語としての造語。 しかし、そこで教わったこともまた 「僕」を形成する。 ここで、覗いていた側だった「僕」は 誰かに覗かれた。 冒頭からここまでが括弧内の心中描写。 詩中主体は普段は眼鏡をしている人物で、空気イスならぬ 「空気ガードレール」をしている、いろいろと強靭な人物らしい。 たしかに、生きていることそれはつまり再確認ばかり。 ここから最後まで括弧内の心中描写。 なるほど、やはり筋肉がすごいらしい。 バトルの凄まじさが滲み出ている。 バトルの果てに融合するとはなかなかダチョウ倶楽部。 のびえもんや仮面ライダーWにアイデンティティが2つあるように、 自我というものも、五感と記憶に潜んでいるらしい。 「ピアニスト」はイェリネクの作品名であり、また、作者のコンプレックス。 白いインクはやはり精液か。 そういえば幼馴染の女子はなんだかんだ「僕」を出席扱いにしておいてくれたようで、 それは詰まるところ、未来の考古学者からすれば重大な歴史改ざん。 ノウスデルトイデウスは作者の歌詞集「ハレの日」に入っている一作で、 三角筋のこと。そして作者は1月1日が誕生日。 フリック入力が痛いのは、 「指」を使っていることに気が付いていないから。 そうこうしていたらミカルゲの色違いが厳選できたらしい。 ポケパルレで撫でるために、「指」を使わないといけません。 ので、もう一度社会参加を試みるのですが、 そういえばこれをずっと民俗学的にエスノグラフィーしている 「傍観者」としての研究者がそばに居たことを 思い出して振り向く。 2019年4月10日 かるべまさひろ
0イェリネクコンプレックス! コメント欄まで使った長大な作品ですね。おもしろかったです。 ユリイカに載ってるかるべさんの作品は少しだけ顔つきが違っていてより好みです。最初に読んだのはなんだったかな。 ちなみに、やしろさんのツイートを見たのでここへ来ました。
0まず何より、「ユリイカ佳作」などといった肩書き付きの作品ほどコメントしづらいものはない。持ち上げれば権威に媚びていると思われ、下げれば分かってないやつだと卑下され、などと自意識過剰な私のような読者にとっては、の話として、それはさておき、豊富な語彙を織り込みつつ、言葉のリズムを上手に構成して、文章の巧さはことさらに強調しながらも、通俗性をできる限り排除する、というのは、果たしてそれが作者の意図であるかは別としても非常に難易度の高い技であり、さらには、「特に意味がありそうで、なさそうで、ありそうな絶妙な雰囲気」に落とし込めれば(そして、この作品はこれらの条件をかなりの程度満たしていると感じさせられたわけであるが)おそらくある基準からすれば満点であろう。 通俗性を排除しようというこの感じがなんだかとても通俗的に感じられるのはおそらく私が偏屈な人間だからであるし、さらには「とはいってもまったく面白くはない」などという但し書きをつけてしまえばもはや負け犬の遠吠えといわれても言い訳できないのでやめておくが、こういった作品にほとんどコメントがつかなくなったのをみて、やはりビーレビの参加層が大きく変わってしまったんだな・・・と半年ぶりに参加してみた正直な感想なのでした(まあ、ポイント制度もあって下手にコメントして自爆するよりはポチポチしてたほうが安全だし、と思いつつ結局コメントしてしまったのでした、笑)
0こうだたけみ様 コメントをありがとうございます。 先日、社町さんと物理的に再会をしました。 不思議な世界をまだまだ生きています本当。 ◆◇◆◇◆◇◆ survof様 コメントをありがとうございます。 ユリイカ佳作についての本当の期待は、ニュートラルに読んでもらうことでした。 しかし、確かに、そのせいで評価的に読みづらいというのも理解しました。 B-REVIEW、もといインターネットでの詩の投稿は一年しかしておりませんので、過去の傾向はリアルタイムではなく読み返してしか触れていないのですが(読み返す人が少ないことが閲覧数を搭載したことで判明しつつありますが)、僕はゲームをしていて、とても物語が短いものが増えたことを感じています。流行・市場規模・肌感というものはあると思います。 しかし、やはりコメントはうれしいです。ありがとうございます。 ゲイなので、出会い系がいつも人生のそばにあったために、その奥の生きている人、ということについては考えるところが常にある(そういうゲイはそして肌感で多いです)のですが、実直に自分の日本語を書き下していることが多いです。豊富な語彙というより、豊富なところしか書けないのです。 なので、本当にまだまだ勉強しないといけないことばかりです。考え続けています。 ありがとうございます。
0かるべさんへ やしろさんと会ったんですね! いいなあ。 私も不思議な世界を生きたいです。アリス気分で。もちろん、シュヴァンクマイエルのね。
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