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有想枕
僕は 何も出ない器を 逆さにして捨てる。 埃だらけの手紙を、もう捨ててしまう。 ライターもチャッカマンも、使えないけれど。 月灯りを見る。想う。 …最初の火の粉が …細い花びらに封じられていた …お父さんのたばこ用の火を …こっそり点けた 始まりの匂い 暁に溶かされかけながら 細い糸をゆたり ゆたり引きずる 何時か頃 狼の様に仕事疲れだけ背負っているだろう。 おもむろに ノートを開けたら 灯りに見守られながら 綴った内臓が居て 僕は はにかみながら それも破いて捨てる。 ひび割れた写真たても記憶ごと千切る。 夢と汗の物語を 強引に霧散する。 僕は干からびた 八足の嫌われ者のよう ライターもチャッカマンもガスが抜けて久しい。 よしんばあっても 燃えるモノなど残ってない。 仕事鞄も、くたびれたら捨てちまおう。 今日も心臓が、元気だ。明日もきっと、元気だ。 僕は、魔法のビンとうっすら夢想していた、 器を逆さにしてみた。 むくりと部屋を出、埃の布団を剥がして ちっぽけな手紙を広げた 記憶を広げた 月を見上げてみた。一つ一つが 一つ一つの行動が あれよ という間に過去になった。 コロン。 と 小さな音に 僕は気が付かなかったけど 突然生まれた器の中のあれは 捨てなかった全ての火の粉の結晶だと 一つ一つを生き抜いたあとで 分かった小さなことだった。 うとうとしてくる。胸が燃えるのが分かる。 明日も、大切で小さなフレアの一片になるから 考えなくなった。寝た。
有想枕 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 890.7
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 3
作成日時 2019-02-03
コメント日時 2019-02-17
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 1 | 1 |
技巧 | 1 | 1 |
音韻 | 1 | 1 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 3 | 3 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 1 | 1 |
技巧 | 1 | 1 |
音韻 | 1 | 1 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 3 | 3 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
ラストの「考えなくなった。寝たい 」という一文が、それまでの流れを断ち切るようで好き。 しかし、それまでの文章の中身が「切実そうな」内容であるのに対して、その実、「切実な」ものとは私には思えなかった。ラスト以前の言葉に、もう少し重みがあれば、ラストの一文がはえるのではないかと思った。
0左部さん、ありがとうございます。その通りですね。捨てる、捨てる、と繰り返していた割には、なぜ捨てるのか、そこの掘り込み具合が足りなかったと今分かりました。勉強になります。
0ふじりゅうさんの作風が変わってきているような、あるいは、引き出し(技術)がたくさんあるのか…… 青山のライブハウスの名を連想しました。月見ル… 日本語の文章的表現とカタカナ語の結び方は好きです。いわゆるやさしい内容だと感じました。足りなかったのは詩中主体の火への想像力かなとも思いました。どんな火なのかなと考える、という意味では楽しかったです。
0かるべさん、コメントありがとうございます。 そう仰られると、確かに以前と比べて作風がかわったかもしれません。私には詩の引き出しどころかボキャブラリーさえ貧困ですので、いつも苦心してアイデアを出しております。 悲しい物語に少し飽きてきたので、テイストを変えてはみています。 書き終えて思いまするに、かるべさんのご指摘通り「やさしい」内容の作品は、負の要素が主体の詩に比べて数段難しい、と個人的に感じました。 火の想像力が足りない、ご指摘の通りです。指摘されるであろう箇所を整えて形にしたつもりが、中々良い作品というのは難しいものだ、と思います。し、それが次の作品への情熱ともなっております。 本作は根本的に、長さと言いますか、内容の付け足しが必要だったのかもしれませんね。精進致します。
0とても知的な詩で、難解なところがまた良いですが、角がない感じが、ふじりゅうさんの心の優しさがにじみ出ている気がして素晴らしいと思います。
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