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証明写真
証明写真を見る度に 両親への罪悪感が沸き起こってくる 一枚で五〇〇円を超える デパートで撮った証明写真を 何枚も 何枚も無駄にした 表情は移り変わるはずなのに 証明写真の僕は 真面目そうな顔をしたままだ 本当に真面目であるかはわからないのに その証明写真が通行手形となって 普段は入れない数々の会社に足を踏み入れた そこで 自己PRや志望動機などを一方的に語る それを聞くお相手は 証明写真の僕のように表情を変えなかった 今日も一枚 明日も一枚 証明写真だけが 無くなっていって 通行手形の残りが気になってしまった それでも両親は 証明写真の僕のように表情を変えなかった はじめに手にした 何枚かの証明写真が無くなったから 両親には黙って 追加で証明写真を発注した それでも 今日も一枚 明日も一枚 証明写真だけが 無くなっていった (自己PRや志望動機を語ることで、証明写真以上に僕を証明していたはずなのに、あなたがたは、一切表情を変えませんでした。僕は一体、あの場で何を証明していたというのでしょうか。あの証明写真は何を証明し、どこへ行ってしまったのでしょうか。フェルマーの最終定理だって、宇宙の仕組みだって、人工知能だって、これらの難しいとされていることは徐々にわかりゆくのに、あなたが表情を変えないその理由が僕には証明できませんでした) 手元には 何も残らなかった 僕はついに 証明写真を履歴書に貼る作業をやめた (あの値段の高い証明写真が証明してくれたのは、子に少しでもいいものを与えたいという親の愛情という名のエゴでしかなかったのでしょうか。そう言えば、中学受験をした時にあなたは、第一志望校の願書を朝早く出しに行きました。そこで与えられた番号は、掲示板に張り出されることはありませんでしたから、あの時から変わらずに、僕は、いまだに何も証明できずにいるのでしょう) 一枚、一枚と、どこかへと消えていく、証明写真は、変わるはずの、僕の表情を拘束して、凡人の烙印を、刻む、時が流れるにつれ、僕の顔には、点々と、黒子が増えていった、これは、何も証明できない、僕の原罪の証なのでしょうか、このへそは、母から生まれた証だ、この二重まぶたは、父から生まれた証だ、表情を変えないあなたがたには、きっとこの証がわからないだろう、そして、あなたがたが、この僕の顔に、原罪の証を、こくこくと、刻んでいたということも デパートで撮った証明写真が どこかへと消えていってしまってから こくこくと積み重ねた 明日の先にある いま 胸にかかげられた職員証には 三年ほど前に量販店で撮った証明写真の僕が 表情を変えずに写っていて その顔が 両親のどちらに似たのだろうかと ふと考えている
証明写真 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1256.0
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 15
作成日時 2018-12-29
コメント日時 2018-12-29
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 15 | 15 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 15 | 15 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 15 | 15 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 15 | 15 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
減っていく証明写真と増えていくおもいを感じました。読み進めていくうちに証明写真の意味が重くなっていっていると感じました。最終連での話の持ち運びに光る事実が在ると思っているんです。でも話してしまうとネタバレになるので、秘密にします。すみません。
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