別枠表示
安心
豚毛の箒で突っころがした朝 はしか雨にぶたれたのだった 水溶性のいのちを垂らしこめる容に 手のひらくるりと。きほうを帰そう 言うなれば 試験管暮らしの呼吸器が 感情不在とに満たされている 私が身投げを図ったのは小学四年生のことである。身投げの現場に居合わせたのはそれから約二年後のことであった。お天道様に供物を供えんとした男が北北西の風に削げ落ち、向かいの踊り場に大腿を突き立てると漸く花は咲き、ぶっとい根っこを下ろした。夕刻、人間は生肉というより新鮮な果実であった。男の端書きは翌日、地方欄にて謹んで逆縁を知らしめ、それからというもの私は日々、おのれの欠損死体を克明に夢想してから眠りにつく。 * ** * * * 鎖骨に埋もれるクリスマス。つんと澄ました線香の色香が鼻先を遊ばす。時折ふ、と息を吹きかければ、仏間に大小様々な腸を描きだす。ドライアイスの痛みにさえ唇ひとつ濁さず、あんたはぽかんと口を開けている。真っ暗な口腔を覗き込む。いかなる菩薩も鬼も見当たらず。鼻に詰まった綿玉だけが、必死に仏さんを主張している。しかしこの漆黒の穴蔵の通じるところは誰しも尻の穴と決まっている。遺言とは謂わば呪いであった。──曝すまじ、東京。この酒喰らいの創傷。痩せた筋彫り、肉の花びら。それだけを孝行と信じて。私はただの、真円になりたかった。
安心 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1179.7
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2018-12-11
コメント日時 2018-12-18
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 0 | 0 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
最初から最後まで、感覚が無い。痛覚の麻痺、あらゆる事への不感症を感じさせられた作品です。安心しているのは、前述した事も含めて、それだけのコトがあったのでしょうね。 ※私はただの、真円になりたかった。 安心だけでは無いモノを感じました。丸とは違う平たい円に想像を膨らませています。
0つきみさま コメントありがとうございました。これは詩であって回顧録でもあり、つまり書く行為それ自体の持つ意味を思い書いたものです。お言葉を拝借すればそう、「感覚がない」。だからこそ行間に湧き立つ何ものかを確かめ、信じるために書いてきたように思います。
0硬直していく身体と比例する心のようなものを感じました。 具体的な死や病を感じて、あぁこういう類のものを書きたい、と思いました。
0かるべまさひろさま コメントありがとうございます。 私が必要とするものは人の数だけ存在しうる真実ではなく、唯一の事実なのだと思います。
0俯瞰という意味でしょうか?なら、合ってますね。ふむ。面白い作品です。事実の考察の過程を追っている、感覚がしました。
0俯瞰といっても多角多面で見れますし、先にコメントした通りですね。
0つきみさま 言ってみれば「あらゆる事への不感症」を俯瞰しようとしています。「私」の行動・思考は本当に不感症的なのか。外在化がなされていないだけで、きっと「私」なりの論理や感情に基づいているはずです。作中のようなエピソードを情念側から描いた作品はありがちですが、その逆のアプローチを取った形です。
0んー知性化をご存知でしょうか?
0つきみさま 不勉強なものでネットで調べて参りました。
0はいー。不感症、俯瞰に繋がる事かなと。斉藤木馬さんの作品が知性化特化、求めているかなと。
0※作中のようなエピソードを情念側から描いた作品はありがちですが、その逆のアプローチを取った形です。 >不感症、俯瞰に繋がる事かなと。斉藤木馬さんの作品が知性化特化、求めているかなと。 連投すみません(;´・ω・)
0つきみさま 知性化のお話、腑に落ちるところがありました。今回に限らず、私は意図的に情感を切り離した書き方をすることが多いです。勉強になりました。ありがとうございます。
0