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夢魔
密度の濃い闇に 天空の端から端まで 張り巡らされた細 い銀色の網 吐息のようなかすかな投網 交点から交点へ と 光が闇を走り 網の目の形をかたどり 再び沈黙を引 き寄せる 網全体が放つ拍動 光の濃淡が闇に広がる 交点で明滅する光 燃え尽き零れ落ちようとするたび ま わりの網がすり鉢のように伸びて 火の滴を受け止める さらさらとこぼれ落ちる光の粒 ああこれが命の姿かと 夜半に手足の感覚を失ったまま うす青い天井を見上げる 生もののように心臓にはりつくものがある 剥がそうとの ぞき込めば引き込まれる渦 触れるそばから崩れていく壁 かろうじて灯をかざし闇を照らす 私の内の黒い空虚を 噛むように育ちゆく鋭角の六角柱 壁面に生成する結晶体 青白い腕が侵入する 水晶に似た結晶体を 採掘し薄片に 細断し 発振子を作り上げる 細い指が闇をまさぐり 内 から取り出す電磁パルス あなたと私のひそやかな合意 通電のたびに生まれる言葉 その産褥 肉体が滅びたら 私の抱え持つ空虚は 熟れ崩れたアケビ のように あからさまに地にさらされるのか 覆いかぶさ る夜の圧に 渾身の力で持ちこたえる 私の闇は私だけの もの あなたの指を腕を呑みこみ 寝台の上で息を詰める
夢魔 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 845.8
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2017-04-23
コメント日時 2017-05-09
項目 | 全期間(2024/12/04現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
最後まで読み終えるとタイトルの意味というか迫力が増しますね。第1連と第2連で顕著ですが、視覚的な表現が上手いと思います。第4連の擬似的な水晶発振子に関する描写は、1970年代の短波ラジオやアマチュア無線に夢中だった頃を思い出して懐かしくなりました。でも作品の方はエレクトリックな愛の形という感じでそのまま一気に最終連になだれ込んでいく。生々しい内容なのに必要以上に生々しくない、その匙加減には脱帽です。
0>通電のたびに生まれる言葉 その産褥 一見ペダンティックに思っちゃうような語の連続で最初結構困惑したのですが、ここのフレーズを見て「言葉」にまつわる事を言ってるのか、という事が理解出来た途端に書き込まれた比喩や表現の煌きが五割増に見えてくるという点で、とても面白い作だと思いました。そう、本作の核のイメージを言葉に置くまでが中々大変でしたが、一度読めたらかなり明瞭に言葉で言葉を構築するというのか、見事な詩だと思います。 詳しくはなかたつさんと話した録音があるので、それを元にいつか再レスか動画にまとめたく思いますが。寸感としてこんな感じでまとめさせて頂きます。
0これは朗読するとものすごくいいんじゃないかと、初読の印象で思いました。 エロティシズムのある詩なのですが、そこに単なる性が描かれているのではなく私のありよう。存在の仕方が非常に巧みに表現されている。 ちょっと外国の詩の翻訳体のような雰囲気があるなと。 傑作だと思います。
0皆さんへ なるほど、確かに翻訳体的な感じもあるかもしれません。カッコイイ言葉というか、術語のようなものを使って見たかった、というのもありますし・・・ もともとは、昔から繰り返し見る悪夢というのか、美しさに吸い込まれそうになる夢、がベースなのですが・・・落ちていく火が、自分だったら・・・と思うとぞっとする。そんな、危うげな網のようなものの上で、言葉というネットワークでかろうじてつながっている「いのち」のようなもの・・・・(それは、実際の命というより、言葉の命とか、そんなイメージかもしれませんが)を書きたい(かけない)というあたりの、言葉を生みたい、的なもの、なのかなあ、と・・・思い、ます・・・。
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