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唯一の友だち
忘れ去られ、蔦が這い 色褪せくすみ、ねむったまま 死んでいく、そんな佇まい そんな救いのような光景を 横目に朝夕を、行き帰る 遠くのタバコ屋の廃屋まえ どんどんとカメラが引いて行き エンドロールが遠く聴こえる そんな空間にいたはずの そんな物が国道沿線沿いに 移され、あまりにも綺麗に彩色されて 泣いていた 声を押し殺し 口を真一文字に引き結び 静かに泣いている ポストが 夕陽に濡れて赤々と 泣いている、葉書の一枚も 一通の手紙も与えられず 無用の長物と化した姿を晒されて 一層、赤く、流れない涙に滲んで *** 初めて泣いたのは いつだったろう? 多分、産まれたときだろう なんで泣いていたのかは わかるはずもない まだ言葉を知らないから 叫んだのかもしれない ただ言葉にならないものを 叫んだのかもしれない もう、言葉にならない詩を 叫んだのかもしれない 産み落とされた苦しみを *** あなたへの手紙を朝に夕に、書き殴り そうして、なんとか、行き帰る ポストは変わらず待っていて 腹を空かせて待っていて 銀の唇には蜘蛛の巣 それをゆっくり ひき裂いて 手紙がなかへ、なかへと 舞い落ちて、虚ろを満たしていくと わたしは軽やかな器になっていく 叫びを、詩を、死を ポスト、あなたに送ります ギブアンドテイクもwin-winも嫌いでたまらない そんなわたしの唯一、対等な友だちへ
唯一の友だち ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 2225.7
お気に入り数: 2
投票数 : 0
ポイント数 : 21
作成日時 2018-09-03
コメント日時 2018-10-16
項目 | 全期間(2024/12/04現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 3 | 0 |
前衛性 | 3 | 0 |
可読性 | 3 | 0 |
エンタメ | 3 | 0 |
技巧 | 3 | 0 |
音韻 | 3 | 0 |
構成 | 3 | 0 |
総合ポイント | 21 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 3 | 3 |
前衛性 | 3 | 3 |
可読性 | 3 | 3 |
エンタメ | 3 | 3 |
技巧 | 3 | 3 |
音韻 | 3 | 3 |
構成 | 3 | 3 |
総合 | 21 | 21 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
鮮やかな一コマであり、作者の人生が滲んでいるような、読み応えのある一作です。終連もよかったです。
0fiorinaさま 読み応えのある作品に仕上がったようでホッとしています。この長さ、自分の中ではかなり長い部類でなかなか仕上げ苦戦しました。 別、レスですがつい書いてしまいオジさんであることがばれてしまいました 笑 Bレビには少しナイーブというかソフトな作風を投稿しているからかもしれないですね。内面の何割かは女性性が占めているのかな?掘り下げると、さてどんな詩が産まれるだろう。
0前略失礼いたします。郵便ポストという強かで愛らしい物体がもともと好きなのもあり、初読からときめいておりました。モノクロの映画に突如色を差す第3連<ポストが>の鮮やかさ。生まれる時代や場所が違えばもっと人々の生活に寄り添うことができたかもしれない作中のポスト氏、でも現実は行き交う車のうちでどれだけ が氏の存在に気付いているのか。<ポストは変わらず待っていて~わたしは軽やかな器になっていく>ふたりの交流にはある種の官能さえ覚えそうですが、ポスト氏も<わたし>もひとつの存在として確りと独立しているからこそ、結果的に打算の無いまま健全に成立しているギブアンドテイクの構図を愛おしく感じました。うまく言えません。纏まりのない乱文何卒ご容赦くださいませ。一言で表現するなら、この作品が好きです。 草々
0前略失礼いたします。郵便ポストという強かで愛らしい物体がもともと好きなのもあり、初読からときめいておりました。モノクロの映画に突如色を差す第3連<ポストが>の鮮やかさ。生まれる時代や場所が違えばもっと人々の生活に寄り添うことができたかもしれない作中のポスト氏、でも現実は行き交う車のうちでどれだけ が氏の存在に気付いているのか。<ポストは変わらず待っていて~わたしは軽やかな器になっていく>ふたりの交流にはある種の官能さえ覚えそうですが、ポスト氏も<わたし>もひとつの存在として確りと独立しているからこそ、結果的に打算の無いまま健全に成立しているギブアンドテイクの構図を愛おしく感じました。うまく言えません。纏まりのない乱文何卒ご容赦くださいませ。一言で表現するなら、この作品が好きです。 草々
0(↑推敲の終わらぬうちに操作ミスを起こしてしまいただでさえの乱文がいっそう乱れてしまいました。お見苦しくてすみません。でも最低限の思いは籠っておりますことを申し開きます。)
0しかも二重になっちゃってますね……重ね重ね申し訳ございません……。
0タキザワさま コメントありがとうございます。 共感していただける所があったようで嬉しく思います。ぼくはありふれた物や忘れられていく物、それらとの自分の関係や人との関係、意味をよく空想してしまいます。社会的に意味がない、と思われた物が個人にとって意味がある。それを描いて他者が読むに値すると思ってくれたなら、詩として意味があったのかと思います。
0独特な悲しみを感じさせますね。 確かに郵便ポストは風雨にさらされ、孤独に立ち尽くしている。 場合によっては一切の手紙を与えられず、変に鮮やかな色彩を背負わされて。 そんなポストに親愛の情を感じる、この語り手も相当な孤独だ。 孤独を詠んだ良い作品だと思います。
0羽田恭 さま コメントありがとうございます。この語り手、相当孤独ですね。て、ぼくが描き手なのですが帆場自身ではない気がします。何、言ってるのだろうか。 ですが、そんな感じで描きあげた作品ではあります。良い作品、というお言葉嬉しく思います。
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