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きみのしおり
彼女は、床に転がった僕よりもほんの少しだけ背の高い椅子に座り、この部屋でいっとう安定したフィラメントになって、ほんのかすかにだけ揺れている。ときおり僕の視線に指を向けると、すうかい縦に小さく振ってみせた。その指で、読み掛けの本の隙間にでっちあげたほぼほぼ神さまみたいなやつの頭を摘まんでは、またどこかに差し込んでいる。 僕は自分のダンマリについて、数十行にわたってレシートの裏に書きとどめ、そのうちの彼女がシチューに使った数行が、また僕の身体を可能な限りカーペットの下へめり込ませていた。まだ陽に透けるいくつかの数字は、昔の動物占いで必要なものだったような、そんな気がしている。ただの猫背でスマートフォンを転がしつづける僕は、もうクロヒョウでも何でも無くなりながら、いつまでもヒトの神さまの名前をなぞってる。 きみがめくる紙のページを、西陽が朱くそめていて、僕をてらす長方形の青空は、5インチちょっとで途切れてる。めまぐるしくかわる灯りの下で、知らないやつが、知らない世界を救おうとしていて。とうとつに、物語を台無しにするキス。
きみのしおり ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1089.3
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2018-08-10
コメント日時 2018-08-28
項目 | 全期間(2024/12/27現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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可読性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
ビーレビは引用符が表示されるようになってほしい。
0ゼンメツさん、こんにちは。 世の中を支配する(かのような)神と神の定理についてのちょっとした詩的コメントかな、と思って読みましたがどうでしょうか。 彼女はかりそめの神。「僕」はルソーの絵に出てくるようなエデンの被造物としての黒豹。舞台の一場面のようにありながら、その設定は長く安定してはいられないのですね。見るまに崩れる。 最後の「物語を台無しにするキス」はお洒落だけれど、無残な現実の端くれでもあります。
0うわーーありがとうございます。右肩さんめっちゃカッコいいっす。書いてるときはまず、ライトに読んだときに短くてちょっとかわいい作品に見えるものにしたくて、でももしかするとこう読んでくれる人もいたらいいなって感じで推敲で揃えていったんですけど、真っ先についたコメントでこういう読み(というか僕のだいぶふわっと描いてたものなんかより遥かにスマートな言葉で!)が飛び込んでくるなんて驚き感動です。「その設定は長く安定してはいられないのですね」の部分もぴしゃりです。投稿するときは、読んでくれるみんなが彼女のキスと本を閉じるときに起こる頁と頁のキス、それでお話も何もがすべて止められること、なんかを重ねて読んでくれたら、もうそんくらいでいいかなーくらいの感覚でしたけど。一瞬で表紙が剥がれました。というか僕おバカさんだからすぐ喋っちゃいますね。でもいいや。だって嬉しかったから。ありがとうございました。
0はじめまして、ゼンメツさん。 ユーモアの伝わってくる良い詩だと思いました。 世界に向ける、視線の柔らかさ、というか。ほっこりするよう詩だと思いました。 幸福というものが、特別なシチュエーションなのではなく、視線の在り方なのだ。 という様な、そういう感覚世界を提示するような、そういう作品だと思いました。
0尾田さんありがとうごいます! そうなんです。「幸福というものが、特別なシチュエーションなのではなく、視線の在り方なのだ。」この詩の絵面だけ抜いて眺めたら、お行儀よくダラダラしてる彼女と、お行儀わるくダラダラしてる僕との、なんでもない、ほとんどなにもおこっていない、ほんのみじかな一場面なので、こうやって視線だけで与える物語が、なにもない世界としてもきっと変えてくれると思っております。しかし、なんだかこれは、とても幸せな内容のレスの並びですね。ありがとうございました。
0どうも貴音です はじめまして ゼンメツさんは最近 ビーレビで気になる方の一人です これからもどんな作品を見せてくれるのか とても楽しみにしています ってファンレターです。
0お、おおお、これはこれははじめまして。僕的ビーレビの象徴として筆頭に浮かぶ貴音さんじゃないですか。冗談抜きです。あなたとあなたの企みがここで大賞をかっさらったことに、僕は現代詩のイマを切り開いていく力を感じました。あ、ちなみになんですけど、ええ、ぜんぜんめちゃくちゃ「ちなみに的」話なんですけど、僕、七月から参加した際に、なんだか気になってイマラチヨさんの作品を一気読みしました口なので、んん、これ、なんでいきなりレトリックばりばりになってんの? 中身、ちげーんじゃないの? ってコメントでバラす前からカナリ疑ってました。ウフフ、しかし、なんだかものすごいコメント覧になりましたね。実のところ、ここには僕なんかが書くべきじゃないのかもと、ちょっとくすぶってましたけど、なんだかやる気がでてきました。いやあ、男の子ってヤツは、いつまで経っても単純なものですね。
0この一見、漫然とした思考が書き記されているかのような詩が、最後の「とうとつに、物語を台無しにするキス」によって、ドラマ性を帯びていく様がとても心地よくありました。彼女がシチューに使った数行などの、一連の流れの中で一目見ただけでは「何だろうか?」と思う表現でさえも、意味とドラマ性を持っていく。そんな印象を抱きました。
0ありがとうございます! ところでビーレビはメタ詩が多いですけどステレオさんも筆頭書き手さんですよね。僕のこの作品は、もう簡単にいうと、前作のがかわいくなく台無しにされてたやつなので、対比として今作をかわいく台無しにしたかったんです。最後がこういう作りになっていると、ん?ってなるので再読してもらえやすいんじゃないかな、てかしてほしいな。って僕のいちまつの望みみたいなものですね。シチューのところは、彼女が引用した僕の言葉はレシートの裏面に書かれたものなので、めくると丁度、それらの材料を購入していた部分に当たるみたいな、それが作為なのか無作為なのか、みたいな部分を思考していくと、レシート、じゃなくて、詩の裏っかわが楽しめます。的な部分です! ありがとうございました!
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