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春のうちがわ
熊のぬいぐるみが柱時計の下で夢をみています 桜色のホットケーキは腹の上でバターを溶かしながらぼんやりしています 老いることを恐れた美少女が曇った鏡を覗きこんでいます しっとりとした春の雨の後はどこか憂鬱です 古いラジオからチャイコフスキーのセレナーデが流れています 海苔をまいたおにぎりを頬張りながら老人が泣いています やがておとずれる別れがカレンダーを赤く染めています はげしい春の嵐の後はどこか切ないものです 買ったばかりの洗濯機がお風呂の横でふるえています やぶれたドレスをまとったフランス人形が段ボール箱の底で眠っています 入試前の青年がルノワールの画集を眺めながらため息をついています 雲に覆われた春の空はどこか不安です 色華やかな千匹の鯉のぼりが空をたかく泳いでいます 本棚には読み終えた千冊の本が甘いショートケーキの香りを放っています 若い母親が赤子に乳をふくませながら料理番組をみて微笑んでいます 走りつかれた子供たちが運動場で大の字になって寝ています 雨があがった後の春の虹はどこか爽やかです
春のうちがわ ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 832.3
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2018-05-23
コメント日時 2018-05-28
項目 | 全期間(2024/12/27現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
はじめまして。春のうちがわ、という題名ですが、作者(あるいは語り手)が自分の「うちがわ」で感じ取った、春のイメージ、という印象で読みました。 春の天候と、様々なシチュエーションにおける「気分」を取り合わせていく。春、それは私にとって、こんなイメージですよ、と見本帳のように広げていく感覚が面白いと思う反面、それだけでは表層的な、気分の並列になりはしないか、という物足りなさも残りました。同じ文体、同じスタイルで繰り返される「のどかさ」「安定感」が生まれる、と言う効果もありますが・・・。 「買ったばかりの洗濯機」、そして、春の漠然とした不安。 社会人としての新生活、あるいは学生としての新しい生活が始まったばかりの主人公の目がとらえた、春の風景であろうと思うのですが、その視点が、もっと読者に伝わるような形で強調されていると、アクセントが生まれたと思います。
0こんばんは。 どこかしらメルヘンチックというか甘い香りのただよう作品ですね。(あくまでも香りです。) しかし、そのようなメルヘンチックな雰囲気を醸すことを意図したかどうかはやや疑わしく思います。むしろ、そうした雰囲気に陥るのを慎重に避けた印象です。 例えば第一連の「美少女」。書かないなあ。というか、書けない。だって美少女ですからねえ。「少女」ならわかります。「娘」「乙女」(まあ、古いですが)でもわからないではない。でも「美少女」はちょっと書けない。 第二連の「海苔をまいたおにぎり」、第三連の「入試前」、最終連の「料理番組」、これらも書けないまではいかなくとも、連から立ち上がる甘い雰囲気に対して、そのバランスを壊すような現実味があります。で、その現実味が他の行とギャップを生んで、総じてメルヘンチックな甘さをより現実の側へ引き寄せているように感じます。いかにもありえそうな光景へと。
0まりも様 コメントをいただき感謝します。またご指導いただきありがとうございました。 藤一紀様 コメントをいただきありがとうございました。 藤一紀様の分析力を素晴らしいと思いました。
0そういえば5月は春なのかと、再発見させてもらえました。 ありがとうございます。
0かるべまさひろ様 コメントをいただきありがとうございます。感謝します。
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