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参照点
太陽は強く照っていて、ぼくらを暖かく包んでいた だから、ぼくらは日光に浸されていたのだった 草原の上から、ぼくらは広いこの青空を見上げた そこでは見えないはずの太陽がぼくらを包んでいることを ぼくらはこの身に感じることができたはずだった もし風がひとたび肌を撫でていったとしたら そのとき太陽が離れるのを感じることができたはずだった 同じようにぼくらがニヒリズムを取り上げるときに、 だが、ニヒリズムのどこをつまめば それを取り上げることが出来ただろうか? ぼくらは未だにニヒリズムを掴み損なっていて だから浸そうとしていたブルースは、そのニヒリズムの 液体の精神の底へと沈んでいってしまっただろう 病名がステータス。いや、むしろ病いは相変わらず彼の周りを浮遊してい るようだった。つまりは、その漂いを見えないと言うことでその浮遊さえ 見えなくしたかったので、誰もいない輪を生み出しては、弾の入っていな いピストルでその中心を打ち抜いていたのだろう。夜の街を徘徊する亡霊 に未だ突き動かされて後ろを向いては弾丸を放つオブセッション、捕われ ているその病名は未だつかずに、言葉を打ち続けているのに違いなかった。 夢には、どちらかと言えば 味ならあったかもしれない。 それは綿菓子のような。 味を書くとしたら わたしはどんな言葉を使うだろう。 あまい しょっぱい からい にがい おいしい まずい そんなふうに夢の 形は綿菓子のように溶けかかって 書いた傍から順番に どろどろに溶融していった 先生はそれを見て 何も書いていないじゃないかと怒ったけど、 わたしは多くをそこに書いたはずだった だが、ノートはいつまでも きれいな姿をして、そこにあったのだ 母と父のいない子どもたちにとって 「振り払うことなど思いもよらない あたたかな枷」 笑い声をあげる華奢な肢体は、服の裏に影を潜ませていた 私たちではなく、幸せと呼んだのはきみで 赤とんぼの羽根は袋に戻せなかったくしゃくしゃの セロファンだったからもう今は要らなくなった 夕焼けの中で赤とんぼは影に全くその身を浸していて それゆえに 私はそれを愛していた 手は空漠としていても温度はそこにある 赤外線が未だにぼくらを暖かく包んでいたから寒くはなかった 初めから何も手にせずに産まれたぼくらにとって 未だそこに何もないからといって、何も無くしてはいない 熱を発する機能が全く欠けているわけではない 語り得ぬことが言葉を持ち始めてやがて きみの中で語り始める その夜、輝いている星は一点だけ存在していた。それを見ている彼女の 個人的な感傷をここに留めておくためには、それを彼女のもとから流さ ずにここに滞留させる必要があったから、彼女は伝えることをやめたに 違いなかった。そして彼はそれを彼の世界において存在しないものと考 えていたから、それ故に部分を一切持たない点に他ならない。彼にとっ ても彼女にとっても内なる美であり、互いに通じはしない二点だ。しか し、だからこそ彼はその美に一切干渉しない彼女の傍を離れることが出 来なかった。
参照点 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 932.6
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2018-04-28
コメント日時 2018-05-14
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
投稿有難う御座います。多数の投稿者がいらっしゃって、いろんな作品の印象が錯綜してしまって、最近では必ず投稿者の方の過去作品を確認してコメントしております。昨年12月に『the Milky Way 』を投稿された日下ゆうみさん。『the Milky Way』は印象に残る作品でした。 イージーな感じ(解りやすいという意味でこのように評してました)でありながらも、芯が太い感覚を読後感として受けておりました。で、今作では、解り易さよりも難解さが前面に来るなあという一読目の感想でした。しかし、3連目がスッと入って来る。 >同じようにぼくらがニヒリズムを取り上げるときに、 >だが、ニヒリズムのどこをつまめば >それを取り上げることが出来ただろうか? >ぼくらは未だにニヒリズムを掴み損なっていて >だから浸そうとしていたブルースは、そのニヒリズムの >液体の精神の底へと沈んでいってしまっただろう この連は前段の太陽についての語りの対比としてニヒリズムを語っていると思われるのですが、この3連目だけで独立した1作品となるぐらいに完成された詩情が含まれたものに読めて、とても魅了されました。魅了とは何度も読み返したくなったという意です。 私はブルースという言葉が好きです。好きなミュージシャンが語るブルースという言葉、好きな歌詞で使われるブルースという言葉、そういったものには出会ったことがありますが、詩作品で使われているブルースで、これほど魅力を発しているものに出会ったのは初めてです。ブルースの音階、コードは解りやすい。そこに込める魂の芯がなければ、他者へ響かせることが困難なものではないかと思うのです。日下さんが詩作の感性として持たれる、その魂を込めること、たとえそれが平易な言葉の展開であったとしても。それがとても表現されている3連目だと思いました。しかしながら、全体としての難解さが、ごめんなさい、私には冗長な感じに受けてしまいました。次回作も読みたくなりましたし、過去作品ももう一回読み返してみたくなりました。それほどに、今作には磁場が出ていると思いました。読んで良かったです。
0三浦さん、コメントありがとうございます。ブルースというところに感じて頂けたところがあったというのは嬉しい限りです。それだけで、こういう形で一つには投稿して良かったと感じられました。 「全体としての難解さ」が「冗長な感じに受けてしま」うこととなったのは、確かにそういう性質をこの作品自体が持っているせいなのかもしれないと思います。つまりこの作品は、「このサイトに掲載された幾つかの詩や詩中の語句を参照しつつ、それらと、そこから自分の形で詩を作ったものとを比較してもらえたら「難解」な形式の中にある感覚をある程度分かってもらえるようにできるのではないか」という断片的な試みの集積として成立していて、そのため中間部分は前半の延長ではないので前半から見た中間以降は冗長でしかなくなっており、またその説明を欠いてしまったために全体としても難解なままに留まってしまったのだと思います。従ってこの点ではこの作品は失敗してしまっていると言えると思います。 ただ、三浦さんがブルースという言葉にご関心があって、そこにまた一つの感覚を生み出せていたのだとしたら、一方ではこのブルースの文脈に一つの意味を作ることが出来たと言えるのかもしれないと思いました。もう少し「平易な言葉の展開」の中に身体感覚をこめるということについても考えてみたいと思います。ありがとうございました。
0浸そうとしていたブルースは、そのニヒリズムこれ僕の詩の欠片使ってます?
0enokizさん、ブルースを浸すというイメージ自体はenokizさんの詩を一つには参考にさせて頂いていてその意味では詩の欠片を使っていると言えると思いますが、一方でenokizさんの詩におけるブルースを浸すイメージへの感じ方をそのまま埋め込むのではなく、ブルースを浸すというモチーフに対して更に一つの感じ方を並べるようなつもりで書いたという意味では詩の欠片は使ってはいないと言えるかと思います。
0見覚えのあるモチーフが散らばり、継ぎ接ぎ感があると思っていたら、やはり、そういう意味での「参照」でしたか……。私としては、この手の作品には、コンセプトの説明や参照元への一言などが必要だと思います。 論評なのか、コラージュ的な詩なのか、別の何かなのか……私には読めない作品でした。
0Rさんコメントありがとうございます。引用よりも少し距離を離す形で、それが書かれたモチーフに対して書く見込みではあったのですが、「この手の作品には、コンセプトの説明や参照元への一言などが必要だと思います」とのご指摘のように結局は引用に近いままになってしまっているなら、それが「読めない作品」として結実してしまったことも含めて、大変申し訳ない限りです。以降はそのようなことがないよう、引用を含まない形で出来る限り書いていこうと思います。 そのような作品に対してコメント頂き、大変ありがとうございました。感謝申し上げます。
0コメントを読めば、これがどういった作品であるかがわかってしまうが、それを抜きにしても、フレーズに惹かれ、いい作品だと思った。 引用/参照元を明記すべきである、というコメントもあるが、私は不要だと思う。何故なら、引用した場合は「(…)」と括弧付けでそのまま引用し、典拠元を記すのが引用の際のルールであるが、先ず、フレーズそのものが作者によって新たにつくられたものであるからである。また、そもそも、私たちが普段使っている言葉など、そういった引用/参照している言葉ばかりではないだろうか。言葉を知らない私たちが言葉を使えるようになったのは、周りの人の発した言葉を用いたに過ぎず、見知らぬ/聞いたことがない言葉を発する/用いることが果たしてできるだろうか。 かの吉岡実の「楽園」という作品の冒頭3行はこうある。 私はそれを引用する 他人の言葉でも引用されたものは すでに黄金化す と。この意味合いも容易に読み取れるものではないが、引用された言葉は使い古されて錆びついたものではなく、また新たな命が宿るかのような印象を受ける。 この「参照点」は、単なる引用を組み合わせたパズルではない。作者による加工がされており、また、選択が伴っている。その選択とは、どの作品を参照するか、どの作品のどの部分を参照するか、という選択である。選択された作品、選択されなかった作品があり、同じ手法を用いて、他者が同様の作品をつくろうとした場合、先ず、絶対的に作者に起因する選択によって、結果としての作品は異なるものとして生まれるだろう。 それに、異なる主題/作者によって生まれたはずである別の作品が、一人の作者の一人の作品によって、一つの線で繋がれている。これは、間違いなく「参照点」という新たな一つの作品としてこの作品を読まなければならない理由となり得るのではないだろうか。 (余談:昔、勉強会で、T.S.エリオット→西脇順三郎→吉岡実を系譜として、引用を詩作に用いた彼らを論じたことを思い出した…) さて、作品の内容であるが、「太陽」「草原」「青空」と自己の外部にある風景から、「ニヒリズム」「液体の精神の底」と自己の内部へと視線が移っていく。ただ、「病いは相変わらず彼の周りを浮遊しているようだった」と、内部に在り得る「病い」は自己のものではなく、自己の外部にあるものとして描かれている。あくまでも、視線は外部へと注がれている。 「夢の味」を夢想する様子は、まるで幼い時の記憶に立ち返っているような風景。この連は独立して一つの作品として成り立つような、だからこそ、映像として挿入される記憶として効果的である。 その記憶の風景の世界観をそのままに、展開は続いていく。その風景は一体誰のものであったのか。この視線は、語り手にあるはずのものであるが、「引用」がもたらす効果とは、他者を自己に取り込むことであったのかとここで気づかされた。 母と父のいない子どもたちにとって 「振り払うことなど思いもよらない あたたかな枷」 というのは、自己の価値観ではない。他者の価値観を取り込んで、風景を描くということ。「私たちではなく、幸せと呼んだのはきみで」と言うのも、他者がどのように世界を見ているかという視線を取り込んでいる。 語り得ぬことが言葉を持ち始めてやがて きみの中で語り始める は、キラーフレーズ。この2行に出会えただけでもよかった。 「参照点」とは、作者にとっての誰かの作品であった、というのはメタ的読みであるが、この「参照点」はそうした具体物だけではなく、作中の最終連にいる「彼女」にとっての「輝いている星」でもある。ここでも、他者の視線を忘れないでいる。「そして彼はそれを彼の世界において存在しないものと考えていたから」という、他者が同じ「それ」を見た時にどういう価値判断を下しているのかという視線。 それでも、「彼にとっても彼女にとっても内なる美であり、互いに通じはしない二点だ。」と、自己の他者との隔たりを明確化する。その互いの内なる美を知っている彼女は、彼に干渉しない。そして、干渉しないということが彼にとっての「美」なのだろう、だからこそ、彼女から離れないでいる彼。 引用/参照をするということ、それは他者の視線を借りることである。それは、単に作者というメタレベルにおいて語るべきものではなく、作中世界というオブジェクトレベルにおいても、この作品では実践されている。この語り手は、絶えず、他者が世界をどのように見ているのかという視線を取り込もうとしている。ここにこそ、この作品の魅力/議論の余地があるのではないだろうか。
0なかたつさんへ 私は「引用した部分とその原典を示せ」とか引用のルールではなく、「作者に無断でモチーフを利用する事は如何なものか?」と言いたかったのです。 参照された作品は、ここへ投稿された作品です。私の知らぬ所で話し合いがあったなら、それはそれで良いと思いますが、無関係な私がどの作品を参照したかを察する事が出来るのだから、参考にされた本人はどう感じるか……参考にした作品と同じ掲示板へ投稿するなら、尚更、その配慮は必要と感じた次第です。考え過ぎでしたかね。
0Rさんへ 確かに、私の読み違えがありました、大変失礼いたしました。 「如何なものか?」については、作者が表明したとおりで、私が口を出す術もなく、もし議論するならば、掲示板上のルールに発展するので、なおさら、口をはさむつもりはありません。 ちなみにですが、掟破りとは言え、この作品には私の作品も参照されておりますが、元作品より優れたものになっているとして、この点については作者を讃えるのみです。 これが「本人はどう感じるか」の一言であり、内容面において優れていると記したのは以上に付したとおりです。
0断章形式の、非常に魅力的な作品だと思いました。 連ごとの外面的(情景的)な関連性が弱く、飛躍の幅が大きいので、各連ごとに*などで区切りを入れても良かったかもしれません。あるいは、無機的に番号を振っていく、など・・・。 引用、参照に関しては・・・そのままフレーズを引用しているのに、それを明示していない場合、無断引用、と「みなされる」ことがあります。「誰もが知っている」著名な作品からの引用であれば、本歌取りと同様の扱いを受けることもあります。イメージやアイディアを「参照」している場合・・・印刷物では、誰それの○○と言う作品からインスパイアされた部分がある、とか、参照した部分がある、参考にしている、などなど、なんらかの言及をすることが多いですね。「みなされる」と書いたのは、引用された側や、第三者による指摘があって、それから問題になることが多い、からです。何年も経ってから問題になることもあるので、出版などの際はかなり慎重になる方が多いです。 もちろん、問題になるから、いけない、ということではなくて、相手方へのリスペクトに欠ける、と見做される可能性があるからです。本来、相手方の作品に感化されたり、情感を喚起されたり、詩情を引き起こされたりする、つまりは、相手方へのリスペクトが「引用/参照」のきっかけであるのに、それが逆の意味合いで取られてしまったら、非常にもったいない(自分の作品を無断で「改良」された、と相手方が考える場合もあり・・・なかなか、難しいところです)と思います。 引用、参照、に関しては、幅広く捉えれば、私たちの言葉そのものが、父祖代々受け継がれてきた用語や用法を習い覚えて、例文を覚え、組み合わせを変えて「使える」ようになっていくもの、であるので、何かしらの引用、参照でほとんど全てが出来上がっている、と言えなくもない。 私自身、自然の情景などから詩情を喚起されることもありますが、他者の言葉に反応して、自分の中から言葉が出て来るときの方が多い。その意味でも、積極的に他者の作品のイメージやアイディアを自身の作品に取り込み、より膨らませて相手方に還す。相手方も、その応答の中に、自分が言いたくても上手く言えなかったこと・・・逃げていくポエジーの後ろ姿を見いだしたりする。そんな、ある種の共同作業が生み出されていけば、本当に素晴らしい、と思っています。
0再びお邪魔します。 まりもさんの仰るような事が最初から書けたら良かったのに……言葉足らずな自分が情けない。私自身、この作品の試みを悪いとは思っておらず、寧ろ、面白いと感心していました。 参照する作品が変わる度に流れが途切れるように感じたり、受け手である私の問題として内容をうまく飲み込めなかった為、「読めない」と評しました。読めていないので、内容の良し悪しを述べるつもりはありません。私のコメントは感想の一つとして受け取って頂きたく……。
0>なかたつさん コメント頂きありがとうございました。自分としては、むしろ自分の感覚に引き寄せていくということを中心に考えていたつもりだったのですが、「他者の視線を借りる」ということをご指摘頂いて、そちらの方が中心にあったのかもしれないと思いました。何を書いているのか掴み切れてはいないものを、作品を作る過程で理解していくことは実際にどこかに含まれているようで、自分自身としても有意な行為だったかもしれないと考えました。評価頂き大変嬉しかったです。ありがとうございました。 >まりもさん コメント頂きありがとうございました。確かに「*などで区切り」などを含めて読者にとっての受け取られ方を考えきれていない突貫工事のような作品で、「無断引用、と「みなされる」ことがあります」と言われている点についても、言及などの配慮が足りていないのは反省すべき点だったと思います。「ある種の共同作業が生み出されてい」く過程が目に見えていくのもまた面白い試みだったかもしれないと思いますので、またその点についても配慮を考えつつ試みていきたいと思います。ご指摘頂いてありがとうございました。 >Rさん 度重なるコメント、大変ありがとうございました。モチーフそのものでさえ、確かにオリジナリティが含まれていることがあって、それは例えば注目されていないものに光を当てるという意味ではその人の功績でありながら、それを奪取するように書いてしまっていたとしたらそれらの方々には大変申し訳ないことだと反省しました。ご指摘頂きありがとうございます。試みとしては面白いという点では、私も少し配慮を重ねつつこの方法についてまた考えてみたいと思いました。「読めない」と感じられたという部分も含めてまた考えていきたいと思います。貴重な御意見を頂き、ありがとうございました。
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