海の途切れる場所に着いて、
振り返るとそこでは、
光が七つの色を放って、
傷痕を拭っていた。
救いの旋律はずっと前に、
僕に届かなくなったけれど、
それでも純粋な骨だけは、
土の中で眠るだろう。
街のざわめきは途絶えて、
人々は遠のいていくばかり。
きっと彼らが抱いていた夢は、
赤児が引き継いでいくはず。
もう流れない涙でさえも。
歪なあなたを、歪な私を、
どうすれば共に受け入れ合えるのだろう。
歪んだ鏡に映っているのは、
この世の悲しみと儚さばかりで、
確かに見えていた永遠という名の、
二人の記憶は海の果てへ、
流されるのを待っている。
優しい言葉だけでは、
伝えられない何かを、
胸に抱きしめたまま。
波が音を失った場所に、
いつからか居心地のよさを感じて。
トランクに入れた荷物は、
手放す方がよいとわかった。
二人の体の熱は遥かずっと昔に、
望みはしない温かさになって、
それでもその腕は変わらぬままで、
僕を守るように包んでいる。
配達夫になったマグリットが、
届けた無限の感謝さえも、
踏みにじられる世の中で、
紡いでいくものがあるとするなら、
目に見えない、触れない形なき何か。
憎しみと愛を秤にかけて二人は、
いつかはきっと互いを忘れてしまうだろう。
だけどあの時の体温は、
どこかで今も消えずに残っている。
データや数字だけでは、
はかりえない想い出を連れたまま。
僕らはきっと未だ知られてない、
誰も探せていない、
無辜の地平を見つける旅をしている。
穢れもずるさも、醜ささえも抱えたままの、
旅を。
作品データ
コメント数 : 19
P V 数 : 1421.7
お気に入り数: 1
投票数 : 5
ポイント数 : 0
作成日時 2024-12-13
コメント日時 2025-01-14
#現代詩
#歌誌帆掲載応募
#縦書き
項目 | 全期間(2025/01/18現在) | 投稿後10日間 |
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技巧 | 0 | 0 |
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2025/01/18 16時48分09秒現在
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此の度は、歌誌「帆」自由詩掲載欄へとご投稿を賜りまして、允に有り難うございます。 此処で、重要なお報せなのでございますが、 第四号始動期間に大幅な変更がございます。然るに、皆様に於かれましてもご傾聴を賜りますと嬉しく存じ上げます。 第四号用草稿に附きましては、来年秋季から冬季頃より始動、着手とのご意向へ遵いまして、募集をさせて頂きたく存じ上げます (つまり、当初予定より一箇年程猶予を置きましての募集と為ります)。 多くの皆様のご応募を賜りまして、允喜ばしく、感謝も頻りなのでございますが、投稿を為される地点にて、 上記の事情の斟酌の程を、何卒宜しくお願い申し上げます。 御作を、拝読させて頂きました。 非常に手堅く、叙述-文体も普遍的であり。なお且つ、表層-裏に湛えられました含蓄、酸や苦みに裏打ちをなさていらっしゃられ、 地味ではございますが良い、と感受を致しました次第でございます。 第五聯、ルネ・マグリットへの象徴的言及の様な記法にて、御作全体を起草し得る事もできましたでしょう。 然し乍ら、ピン・ポイントにてその記述をとどめていらっしゃる技法に拠りまして、一層くきやかにその背景が顕ち上がる様な効果を呈していらっしゃられ、 中々唸らされました次第でございます。 説明的詩句が略、省略なされており、それも読者の背景把握の程度に拠りまして読み取り得る趣きが変転なされる様な造りとなっていらっしゃられ、 実力派である、と感受を致しました次第でございます。 唯、之は普遍性を附帯なされた作品群に通底致します問題なのでございますが、 個性、特殊性、独自性と申します様な趣きが稍、薄れがちと為って仕舞いますことは、致し方のありませんことなのでございましょうか。 熟達為された手腕にて、之より如何なる実験作品をこころみになられるか如何かを心より期待を致して居ります。 それでは、復のご挑戦をお待ち申し上げております。 此の度は、ご応募ご投稿を賜り、允に有り難うございました。
1鷹枕可さん、コメントありがとうございます。鷹枕可さんの言語空間というのはとても難解で独自のものだから、なかなか読み取りづらいんだけど、つまりは実験性に欠けるからあまり良いとは思わなかったと笑 この詩ね、鷹枕可さん、コメントなかなか入らないからこの場で書かせてもらうんだけど、あるミュージシャンのために書いた詩なんですよ。その方に僕があなたの楽曲に詩を寄せるなら、このクオリティの作品ができます、という表明なんです、この詩は。その点においてこの作品は、僕にとって満点に近いし、評価に繋がらないとしても僕は大満足なんです。この詩はそのミュージシャンが歌うに相応しいクオリティを持っている。そう確信しています。だからその方に届いて響けばいいんです。コメ欄が賑わなくともかまわない。それほど重要な詩なんですよ。ちなみにこの作品で出てくる「あなた」とは実在する人物のことを指していません。空想上で向き合う女性、あるいは幸せか歓喜の象徴であったりします。松本零士さん作品におけるメーテルみたいな存在笑 とにかくも鷹枕可さん、おそらくあなたが不得手な作風であろう!作品に時間を費やしてくれてありがとう。お陰で僕はこの作品について意思表明をし、存分に語り尽くすことが出来た。大満足なのだ、そうなのだ、バカボンのパパなのだ笑
0おじさんの90年代ノスタルジアをエグいくらいエグってくる。ステロさんはこういうのがイイと思いました。
1おまるたろうさん、コメントありがとうございます。エグっちゃいましたか、エグるでしょう。こういう詩笑 ただ僕は90年代を生きてきたものの、90年代に「いる」感覚はないんですよね。それなのに、おまるたろうさんから90年代ノスタルジアという言葉が出てきたからには、90年代的何かがこの詩にはやはりあるのかな、と思いました。カフカの「城」か何かで、ある婦人について主人公が語った「なぜ彼女の着ている服が懐古的だと私が思うのか私には分からないが、彼女が懐古的な服を着ているのが私には分かった」というニュアンスの言葉があって、それを思い出しました。悲しいね、僕個人としてはもっと爆発的なアップデートも欲しいところです。おまるたろうさんの褒め言葉自体はとても嬉しいです。ありがとう。
0こういう言い方は失礼かもしれませんが、こういう詩を書ける方ってあまりいないのではないかと思いました。前向きなことを前向きに書くってかなり勇気がいるし、自分を信じていないとできない。後ろ向きな感情を書きたくなるのはわかるのですが、意外とそれを読みたいばかりではなくて、前向きな気持ちのときに前向きにしてくれる詩って意外と少ないのではないかと思います。
1佐々木春さん、コメントありがとうございます。前向きなことを前向きに書くのは勇気が必要で、かつその勇気を持つ人は少ないと。確かにそうかもしれません。僕、自分がレアだと信じているんですよ。僕、自信がありますもん、自分に。何言ってるんだって話ですが笑
0このまま旅を続けるのだろうか。歪で不器用な2人の関係はこのまま続いてゆくのだろう。まるで闇のような世をなんとか払い除けながら、それでも飲み込まれそうになりながら、2人は共に歩き続けるのだろう。
1「優しい言葉だけでは、 伝えられない何かを、 胸に抱きしめたまま。」 この三行に海の旅行者の厳しさを見ました。海の途切れる場所とはどこの事であろうかと思いました。波が音を失った場所とは。詩を読みながらこれらの疑問が詩を読み解いてくれたらと思いました。
1秋乃さん、返信遅れました。コメントありがとうございます。共に歩み続ける。そうかもしれません。行く道や方向は違っても。二人は、二つの価値観は共同体なのかもしれませんね。秋野さんのコメントの一語一句から、この詩に何かを感じ取ってくれたことが伝わりとても嬉しいです。
1エイクピアさん、コメントありがとうございます。返信遅れました。海の途切れる場所、波が音を失った場所。そのいずれも内面的な場所で目には見えないのでしょう。ところで、ふと思ったのですがエイクピアさんとも長い付き合いですね。あくまで詩掲示板での交流ですが。今年は久々にビーレビに投稿して、思い返すことも多々あり、楽しかったです。エイクピアさんもよいお年をお迎えください。
0stereotype2085さん、こちらこそ嬉しいですね。 「行く道や方向は違っても。二人は、二つの価値観は共同体」、とても素敵だと思います。 これからも書かれる作品を楽しみにしています。
0穢れもずるさも、醜ささえも抱えたままの、 旅を。 深いですね。
0秋乃さん、再度コメントありがとうございます。これからの作品を楽しみに。嬉しいです。今年は変転の一年にしたいのでよろしくお願いします。
1田中さん、コメントありがとうございます。田中さんに「深い」という一言をもらい、ちょっとしたお年玉を頂戴した気分です。ありがとうございます。
0私も今年は変転の一年になりそうなので、お互い頑張って行きたいですね。
1激動の笑 一年にしましょう。
1ぜひ、そういたしましょう。
1海の途切れる場所。光が七つの色を放って傷跡を拭う。歪なあなた歪な私。配達夫になったマグリットは画家ではないのか。旅が何を意味すのかと思いました。
0エイクピアさん、再度コメントありがとうございます。この詩で発見、新しい創作というものがあるのならば、やはり歪なあなたを、歪な私を、どうすれば…の箇所だと思います。ここは自分で再度読んでも浮き上がるように、目立っていて、とても気に入っています。歪んだ部分を共に受けいれられれば、世界はどれだけ幸せでしょうか。
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