椅子の足からお前はやってくる
久しく会わない友のように
あるいは、ふと出た失言のように
まだら雨が音を変える瞬きのように……
お前から逃れるために
私が選んだもの
それは私自身の質量を
お前に放ってしまうことだった
だから私はお前がやって来ない時
我に返って思うのだ
「ああ、この重みをどこかに預けたい」と
私はお前なしでは
お前から逃れる私にも逃げられてしまう
私一人では重さを描くことすらできはしない
お前に吊り下げた重しを見る私でなくてはただの一つさえ……
私にはよく晴れた日の昼間や
まだしとやかな雨の朝に
お前と対話しようなどという
出所の欠けた情熱が沸き上がってくることがある
“この椅子から立たねばならない、
お前を受け入れ、お前から逃げる私と
一度対話しなければならない“
しかしそれらは
物憂げな絵画なように
はたまた恋愛詩のように
私が見ようとしなくては消えてしまうものだった
私は最初から
それを理解して許可を出すのだ
出産の痛みを忘れ、二人目を宿す母親のように
知っていながらも私は許可を出すのだ
決まってその後重い一息が私を取り立てに来て
やっぱりお前は
それを大勢の抜け殻の元に置いていく
ああ、それがどうしてこんなにも不快にするのか
お前は私にしか現れないと
何度も確かめているというのに
絵の中の詩にならない影を
本当のところは一番信じたいというのか
椅子の足からお前はやってくる
久しく会わない友のように
あるいは、ふと出た失言のように
まだら雨が音を変える瞬きのように……
作品データ
コメント数 : 2
P V 数 : 301.6
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作成日時 2024-11-02
コメント日時 2024-11-05
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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2024/11/21 21時01分34秒現在
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人生における、身体の疲れと、精神的な重さが、感じられます。失敗の瞬間が、 何度も訪れ、しんどいのかなと。だれしも、聖人君子ではなく、やらなければよかった と思うことは、あるのですが、椅子から立ち上がる気力を振り絞って、今日の夜 眠るときまで、頑張るのでしょう。
1ありがとうございます!いつも黒髪さんのコメントが励みになっています。 この詩は自分でも捉えきれていない、夕方らへんにやって来る重 い塊みたいなものを書こうとした詩なのですが、黒髪さんのコメントから考えると、"お前"は疲れから訪れる漠然とした怠惰の化身みたいなものとも考えられるかもしれないですね。
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