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kissはチョコの味
模型のようなチョコレート工場が頭の上に浮いている 私の身体は検体の如く堅いベッドに固定されている 七色の熱電球が工場を派手にデコレーションして 轟々鳴る機械音は蛮人の儀式みたいに響き渡っている 外を通過するトラックのライトは部屋の壁を刺して去る おもちゃサイズのチョコレート工場はまるで 亡霊 工場に眼球などあるはずもないのに 私が微細な動きさえもしないよう 無機質のそれは冷徹に見張ってくる チョコレート工場だというのに陽気さはひとかけらもない 壁面の鉄板には呪詛が刻まれているかのように錯覚してくる 血液が消えていく 身体は動かない かわいらしい大きさとは裏腹の暴力的な機械音は 生物を命あるまま砕いているかのようで 変わらず鮮やかに光っている電球は 工場から漏れ出た屍の怨念ではないだろうか 首を回して目を逸らすこともできない 私は生きていないかのよう 暗闇に薄く見える自室のカーテンや天井たちは 昼間と全く変わらない様相で静かに眠っているが 対して機械音は容赦なく増していくばかりだ 存在感は異空の穴のよう重く その一点だけが歪んで見える 血のようなチョコの臭いはいたずらに鼻腔を刺激し 体躯を真っ直ぐに伸ばしている私は蝕まれるよう犯される心地だ 筋肉が収縮する 心臓だけが興奮している こわい 浮遊している工場は 化物のような金属音を急停止させたかと思うと 鉄門を開放し中から尾を引いて 白肌の魔女が出てきた 発光するブロンド髪と青い瞳が 動けない私の顔を捕食するように撫でる 魔女の口にはできたての小さなチョコがくわえられていて そのまま私の上に飛び乗り 甘いキスをした 視界さえも消えた
kissはチョコの味 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1035.7
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2017-03-14
コメント日時 2017-03-30
項目 | 全期間(2024/12/21現在) | 投稿後10日間 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
ような、如く、みたいな・・・とこれだけ直喩を連発してクサクないのは、確信犯か?という立ち上がりですね。おおっ、次はどうなる?と、スピーディーに読者を引き込んでいく。 〈チョコレート工場が頭の上に〉というシュールで具体的な状況設定、〈身体は検体〉リアルな肌感覚を伴った金縛り感、それでいて〈七色の熱電球〉という祭りのような、ハイテンションのムード、〈機械音は蛮人の儀式〉という意外なシチュエーションと・・・映画の『チョコレート工場』の、侏儒たちのダンスのようなイメージ。 ベッドに「くくりつけられたまま」の躰と、部屋の壁の対照が〈トラックのライトは部屋の壁を刺して去る〉という、光が刃物のような鋭さを持っている感じで、躰の上を素通りしていく感じ・・・自分が固定されたまま、外部の世界が展開している感覚があって、面白いと思います。 そういう、展開(というか、「送り」詩行の「運び」)が素早いのに、丁寧な状況設定があるので、空中に浮いた工場に見張られている、なんて妙なシチュエーションなのに説得力があるんだな、と思います。 〈存在感は異空の穴のよう重く その一点だけが歪んで見える〉 そこに幽体離脱して吸い込まれていくような、でも踏みとどまっているような恐怖感の上に、〈血のようなチョコの臭い〉チョコレート色の血液のどろりとした血栓のような、吐血のようなイメージ。死の象徴なのかもしれない。 夢魔というのか、魔女が突然現れるところの突発感、突然感が弱い、というか・・・もっと衝撃的なシチュエーションによる「登場シーン」があっても良かったのかな、というのと・・・〈工場に眼球など~機械音は容赦なく増していくばかりだ〉の部分が長いので、バランスが取れない、という印象があるのですね。ここを、もう少し切りつめてもよいのかな、と思いました。
0工場というのはそもそも、無機質なものかと思うのですが、チョコレート工場だとなぜかポップなイメージになる。そのイメージと、中身のアンバランスというかズレがこの作品の核だと思いました。では、チョコレート工場のポップさはどこから来るのかと考えたところ、チョコレートという言葉の持つ魔力と、チョコレート工場の映画のせいかと。そういう全体も何もないところから出発したとして、どれだけの強度を保てるか、ということが気になりました。
0花緒さん 題名は確信犯(誤用)です。 題名は罠です。普段私の詩風の作品は読まない層をこれでおびき寄せて、本文で捕食します。 ストロベリーソングオーケストラという寺山修司や江戸川乱歩的な世界観のパンクバンドがいるのですが、このバンド名は名前は可愛いけど実際(ライブ等)は怖いという「悪徳商法・詐欺まがい」な命名理由でつけられたものです。私のキスチョコもこれに近いですね。
0まりもさん 私としてはこの詩は「ホラー路線」なんですよね。経緯は省きますが、詩という形式は恐怖を演出するには好適ではないだろうかと思ったのが始まりです。 「怪談新耳袋」というテレビドラマを知っていますか。同名の書籍を映像化したものなのですが、1話が5分の尺しかないんですよ。なので怪異の理由などはまず言及されず、怪異がただ現象としてあるだけで、それがパッとはじまり脈略無く終わる。 そこに論理性は無いんですよ。でもそれこそがホラーだと思うんですよ。正体不明だからこそ恐怖であって、むしろ結果に原因を求めるのは人間が恐怖に打ち勝つために得た武器でしかない。闇はその先が見えないからこそ恐怖の対象足りえる。 そのため、魔女はあえて肩透かしな感じにしました。盛り上がり方が綺麗な右肩上がりなのは人工的なにおいがしてしまうかなぁと。多分実際に恐怖体験に遭遇した時って、その時の現象の展開の仕方は小説とは全く違った、脈略では測れないものだと思うのですよ。だからこそそれが上手く表現されている「怪談新耳袋」は面白い。 んでもそれの結果詩の面白さが削がれてしまっているのならそれは作者の失敗ですね。ホラーは難しい。
0葛西佑也さん ジョニー・デップが出ているほうの某チョコレート工場映画は傑作ですよね。私はそれの原作者であるロアルド・ダールと、「ちびまる子ちゃん」の作者でありエッセイがすんごいさくらももこからは、散文の方面で多大なる影響を受けています。 映画由来のチョコレート工場に対しての印象のポップさは結構な量の人々が共有しているかと思います。青い猫と書いてドラえもんのが想起されるよう、パブリックで養われたイメージは有効に活用していきたいなと思っています。
0インダストリアル・テクノの雄、キャバレーボルテールの音。それは、僕の身体を脱力にして踊らせる。しかし、無情感を与えるものではなく。それは、なんだろうか、異次元の体感なのかもしれない。異次元の体感とは、一般的には知られていないけれども、平たく云えば、霊的なるものとの交信なのだ。「霊的なるもの」この言葉は、この言葉で読者の皆さんには不可解なものでしかないだろう。「霊的なるもの」、あるいは、トリップ。ある一つの曲だけをエンドレスループで聴き続けるという行為は、身体と脳にはよくないらしい。まあ、トリップとは、そういう体感だ。誤解無きように云っておくと、僕は、スピリチュアルなものは信じていない。霊的なるものはあると思うけれども。 『kissはチョコの味 』で現れる工場。ここでは、血の音がして筋肉が収縮する。そのことが、僅かだけれど、僕の意識をリアルワールドに執着させる。でも、深い読みを続けていると、その毛筋程の接点が切れてしまいそうだ。
0三浦果実さん 実際この詩は、ホラーと詩の形式は相性が良いのではという仮説の元で作られたものです。 リアルからファンタジーの世界へ通じる道の途中こそがホラーではないだろうか。恐怖は現実と幻想の両面を向いていなくてはならない。振りきれず、戻ってこられず。
0チョコレート工場というと「チャーリーとチョコレート工場」が出てくる。昔みた映画のイメージしかなく、原作の方は読んでないからなんとも言えないんですが、映画のイメージをなんとなく思い出してみると。。。という点でちょっと僕の中で色々読みが詰まっている作品。(無理に重ねる必要はないと思いながらも、やっぱり重ねてしまうという所で難しいですね) 僕はホラーにそこまで詳しくないからなんとも言えないんですが、恐怖ってなんなんだろうな、みたいな事を考えていった時にまず僕が思うのは、不可解な事象に外堀を埋められていく感覚なんですよね。それは、僕の中ではまさしく得たいの知れない比喩と同格なのですけれども、その点この詩は結構直接的な恐怖を書いてしまっている。だから結構文章自体から怨念が浮上してくるかというと、そうではなく、結構温度の下がった文章かなと思っています。 >おもちゃサイズのチョコレート工場はまるで >亡霊 >工場に眼球などあるはずもないのに >私が微細な動きさえもしないよう >無機質のそれは冷徹に見張ってくる >チョコレート工場だというのに陽気さはひとかけらもない 工場に眼球などない、とう一節から、逆に監視カメラみたいな物のイメージが浮上してくる。そこから監視カメラに常に見張られる恐怖みたいな物が湧き出てくると思うんですが、個人的にはちょっとくどい言い回しかなという印象が勝ります。 >かわいらしい大きさとは裏腹の暴力的な機械音は >生物を命あるまま砕いているかのようで >変わらず鮮やかに光っている電球は >工場から漏れ出た屍の怨念ではないだろうか 結局の所、工場とは何かという話になってくるのかなぁとも思います。チョコレートは工場を引き出す為のブラフにすぎなかった。というのが僕の第一印象。次にホラーに通じる為の扉を開ける為の鍵としてチョコレートがある。でもチョコレートを作る時に何かを殺すかというと別に何も殺さないんじゃないのかなという所でイメージがずれていく。亡霊なんて工場のどの段階で発生するんだろうかみたいな感じです。そこから、これは本当にチョコレートを作っている工場なのかなぁという感じで読んでて醒めちゃう。作られた恐怖のイメージが出てくる。 多分、チャーリーとチョコレート工場ではちゃんとチョコレート作ってるんですよね。あれはファンタジーでありながらも、映像の中できちんと金を掛けて暴力をふるっているのに対し、割と工場とは関係のない言葉にパッケージ化されたそのままの恐怖が羅列されている印象です。結果、単純に映像として弱いかなぁという感想が残りました。
0hyakkinnさん 感想を読んで思ったことは、作為した恐怖の内容と、感情を表出させぬよう淡々とした文体が相反してしまっているのかなと。稲川淳二の階段のような有機的情緒的な恐怖も、未解決事件のwikipedia雉のような無機的機械的な恐怖も、どちらも上質な恐怖に成り得ます。ただどっちかにしないとぶれてしまうのかな。ホラー路線、正直難しいです。
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