軒下で蟻たちが黒い列を作り蠢いている
そこへ一匹の蟻が逆走して
他の蟻を押し退けながら強引に進もうとしていた
蟻同士はぶつかり合いながら
なんとか狭い隙間を縫って歩んでゆく
(去年までの私もこの蟻たちのように立ち働いていたのだ)
非正規労働者が多く働く職場で
非正規である私たちは常に仕事と責任と時間に追われ
企業からは
「お前たちの労働力なんざいつでも
ITに挿げ替えることができるんだからな」と
暗に脅しをかけられ
肉体的にも精神的にも余裕がなくなり
限界を迎えた私たちは
同じ労働者である筈の仲間を攻撃することで
なんとか精神の均衡を保とうとしていた
他課から転属してきたばかりで
右も左もまだわからぬ新人には手厚い制裁を
出社後お決まりの無視と威嚇と嘲りの三重奏
やられた相手は精神に異常をきたし
働く意思を奪われたあげく出社すらできなくなり
やがて退社を余儀なくされる
因果応報繰り返される歯車に絡まったまま
いつしか無感覚に陥り
そして私も気づけば歯車さえも抜け落ちて
平日の昼日中に
自宅軒下の蟻を見つめている羽目となった
蟻は相変わらず一本の少し曲がりくねった列を作り
脇目も振らずに働いている
目を転じた先に白いコンクリート製の地面が
日差しで白く浮かび上がり
乾涸びて伸び切った木菟の死骸がこびりついていた
作品データ
コメント数 : 10
P V 数 : 509.2
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作成日時 2024-10-02
コメント日時 2024-10-03
#現代詩
#縦書き
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2024/12/27 02時15分13秒現在
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……夕陽さんのいつもの軽快さという美点が欠落している。 地に足を取られすぎてるというか……。 (※僕自身が詩に現実性を持ち込みすぎないようにしてるのもあって、違和感がすごい)
0むしろ、こういった詩の方が喜ばれることが多いです。
0観察力の賜物ですね。
0頭の良い方ですね。 勉強になりました。 また詠ませて下さい。 ありがとうございます。
0勇気のある詩。信じることにそって生きるのも難しい事です。貴方の前途に幸がありますように!
1現実社会は空想とは違い、理不尽に苦しんでいる人がたくさんいます。
0実際に起こっている身の回りの理不尽を描いただけです。
0湖湖さん、ありがとうございます。 「好きでなったわけではない」非正規労働者の現実を理解していただけたなら幸いです。
1武士道残酷物語や青春残酷物語が思い浮かびました。この詩で言うと労働残酷物語でしょうか。第一連の蟻たちが象徴的で、第二連以降で労働のリアルな実態が余すところなく詩作されているようで、現代の何とか残酷物語のような気がしました。
1エイクピアさん、感想ありがとうございます。 今まで受けてきた実態をありのまま表現することで現実社会の不条理や理不尽で苦しむ人々への理解に少しでも繋がれば幸いです。
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