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浦
ああ 浦! 其れはしづかにいぶく 死骸を砂にうちあげて。 波止場でゆれている舟 舷をうつ波の音 月光よりあわい風。 幾千もの命をうばった海は あどけなくゆれている。 凶暴な面影をひめた海は 赤ん坊の眠りにしづんでいる。 舟に死骸をはこび いぶく浦からはなれる。 舵をとり 命からはなれる。 ふかくで目はかがやき 赫きに生気はない。 冷たい水にうかぶ 幾千もの目は 水死体の浮腫みで わらっている。 ああ なげいれた死骸の 游泳に終わりがあれば! 舵をとり 命にかえっても 其処にはいぶく浦。 砂の反射にうかび 舟にせおう死骸の みしらぬ顔立ち。 ああ なぜ其れはかわっているのだ! 息吹は完璧に 反復しているというのに!
浦 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 369.3
お気に入り数: 0
投票数 : 2
ポイント数 : 0
作成日時 2024-07-30
コメント日時 2024-07-30
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
月光よりあわい風、のところで泣きそうになりました。 さかさんが、すごくまじめな人と知っているのですが、その情緒の発散の方法が、 個性的で、いつも見入ってしまいます。この箇所だけが分からなかったので、良かったら 教えて下さい。「ああ なぜ其れはかわっているのだ!」
1コメントありがとうございます。 ご指摘の箇所については、どう書くか悩みました。解釈としては、次の二つが考えられると私は思っていて 「其れ」は最初と同じ、浦をさすのであれば、戻ってきたら、そこはまったく違った浦で、見覚えのない死骸がある。という意味で 「其れ」が直前に書かれている死骸の顔をさすのであれば、死骸がいつも新しいものにかわっている。という意味で、この場合は浦の風景そのものはかわっていなくてもよい。 最初書いたときは、後者の方を想定して、単に「顔」と書いていたんですが、前者は後者を兼ねていると思い、「其れ」にしました。どちらにしろ、音(息吹)は不変であるのに対して、何らかの視覚的要素(死骸)は毎度かわっているという意味です。 分かりにくくて、すみません。 この作品は、萩原朔太郎の「沼沢地方」という詩に触発されて、書いたものです。青空文庫のものを載せておきます。 沼澤地方 ula と呼べる女に 蛙どものむらがつてゐる さびしい沼澤地方をめぐりあるいた。 日は空に寒く どこでもぬかるみがじめじめした道につづいた。 わたしは獸のやうに靴をひきずり あるいは悲しげなる部落をたづねて だらしもなく 懶惰のおそろしい夢におぼれた。 ああ 浦! もうぼくたちの別れをつげよう あひびきの日の木小屋のほとりで おまへは恐れにちぢまり 猫の子のやうにふるへてゐた。 あの灰色の空の下で いつでも時計のやうに鳴つてゐる 浦! ふしぎなさびしい心臟よ。 ula ! ふたたび去りてまた逢ふ時もないのに。 あとは、以前翻訳として投稿したブロークの詩の影響もあるでしょう。 夜 街路 街灯 薬屋 無意味で仄かな光。 あと世紀の四半期暮らそうが── 全てこのまま。活路はない。 死ぬ──また振り出しに戻り 万事が昔のように反復される。 夜 水路にはまだ凍らぬ波紋 薬屋 街路 街灯。
1「なぜ其れはかわっているのだ!」の部分から、投げ込んだ人と、投げ込まれた人が、入れ替わっていたら面白いなと想像しました。「みしらぬ顔立ち」は、それを否定することとして読みましたが(投げ込まれた人は投げ込んだ人の顔を知らないという可能性は残りますが、投げ込んだ人の視点でこの作品が語られているものとして)、全体的に、蛇口からゆっくりと水滴が滴るような雰囲気が漂ってきて、静謐な怖さを感じました。
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