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プラモデル
築20年は経ってそうな住み慣れた我が家の台所の奥に、普段気味が悪くあまり立ち入らない場所がある 暖簾が架かっていて、そこには普段使わないような鍋や蒸し器、お重なんかが棚に並べてある その奥がそのまま洞窟 足元はがさついてひんやり柔らか 所々に岩肌に埋め込まれた非常用の小さな灯りが透かした靄を吸ってるこれは藁敷き、か? 恐々、奥へと進み、出口があるのかどうか探してみる 探してみていた 前までは それが今はその中で、セックスしてる 眼前のパーツを試行する 夜が好き 欲望によって生まれた子に欲望の抑え方を伝えられるか? なぜ抑えねばならないかだって本当は分からない 一瞬を求めた足取りは定まらず眼が中途半端 一瞬て何? 陽が廻る間を分や秒で分けた 陽が見えなくなってしまったら、出てくるまで律儀に待ってまた分けた 分けた先で面倒臭くなって一瞬て呼んだ だけどそれは量の単位じゃない 一瞬の間をずっと観察したいんだ だらだらと糸引き垂れ続ける延々と続く100m走のスローモーションのように、それを見てた 並走しながら 見て、見て、見て見て見て見て見て見て、見た 取りこぼさないよう 光の量が少ないから眼は藁に棄てた 湧き続けるものを拾うための皿になった 『歪』 そこでは湧き溜まった、生きている痕跡がマーブル模様のミルキー臭を放ってる 夜が好きなのは眼で見るしかないのに、眼を信用していないから しかし耳も、鼻も、舌も、触覚も全部不器用だ 頼りなく持ち合わせたその道具で掻き集める 掻き集めたらそれを元に組み立てた 組み立てたものを光がない中でさっき棄てた眼を拾って確かめる 藁がくっついてるじゃねーか でもさっきよりよく見えてる
プラモデル ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1020.7
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2018-01-22
コメント日時 2018-02-02
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
投稿ありがとうございます。対象を装飾せずにそのままを語る。浮かび出る言語ねままに。他者とその共有するかを排除された作品として読めば、孤独な寂しさを感じました。凄く難しく思うのですが、作風としては独自なものとして、私には映りました。
0普段使わない食器や鍋類を仕舞い込んである。そうした物置が母屋の台所にはいくつもあります。ひょっとしたら何かの住み家になっては居まいか。暗くて覗き込むのも躊躇ってしまいます。 勇気を出して覗いたらいつのまにかその異次元世界に迷い込んでしまった。この詩がそうですね。 無意識に描いてしまう夢の世界。これも紐解けば実は忘れていた記憶の集積。それは隠れた潜在意識のパーツだったりする様ですね。 そのような表現が客観的になされていると思います。 なかなか手強い作りの詩です。
0はっきりした対象描写があるのは第一連だけで、他の連では諸感覚の断片とそれらへの反省的思考がずっと展開されています。そのコントラストから、話者が世に生を受けてから20年かそれで以上経った頃に、生きることの中に隠然たる部分を発見して、没入している様子がうかがえます。五感とそのほかのすべてを結集して得られるものが半径いわばマイナス1メートルくらいのなかにあって全部薄暗くてねばついているかのようであるなかで、見出された「くっついてる」「藁」の具体性とその邪魔な感じが突き抜けてます。
0これはなんだろう? とても不思議だ プラモデルという題は 掻き集めたらそれを元に組み立てた というところにかかるのかな? 最初の情景描写はまるで戯曲の設定の説明のようで 途中から光、藁、眼の話にほとんどシームレスに変化していく たとえば手紙を書いている途中から気が変わって日記を書き始めてみた みたいな不思議な構造 僕はこういうの好きです
0『ナルニア国物語』の中で、タンスの洋服の中を分け入って進んでいくと、異界に出る、というシーンがありました。 台所の奥の納戸のような場所・・・以前、農家の後ろの岩肌をそのまま削って冷蔵庫代わりに使っていた古民家を見たことがありますが、そんなイメージも重ねつつ・・・藁敷き、濡れた岩肌を持った洞窟が台所の奥に続いている、そんな不思議な「異界」への連絡通路を連想。それが、築二十年の家に、果たして「実際に」付属しているのか、どうか。過去の防空壕跡を、ワインセラーとして使っている例があって、その入り口と台所の裏口とが連結されていましたが・・・ここでは、「実際」の光景というよりは、夢想世界にのみ存在している異界への通路である、と、私は読んでみたいと思います。その読み方でいくなら・・・ 〈前までは〉これは、子供時代には冒険の洞窟、として想像力の中にあった、ということか・・・。 〈それが今はその中で〉出口を探すことなく・・・セックス、とは言っても、相手、が居ない。精神的な充足行為、という意味合い、でしょうか。もともと、洞窟や空洞は膣や子宮を暗示するものではありますが。精神的にこの洞窟にこもって、自己再生を図っている、そんな、墓場であると同時に、子宮でもある場所。 〈陽が廻る間を分や秒で分けた 陽が見えなくなってしまったら、出てくるまで律儀に待ってまた分けた 分けた先で面倒臭くなって一瞬て呼んだ だけどそれは量の単位じゃない〉 この一節に特に惹かれました。逆に言えば、ここに至るまでの展開が、若干、丁寧過ぎるというのか、口語風にくだけすぎている、というのか・・・実況中継的で、まだるっこしいような印象を受けました。 プラモデル、とは何か。後半の感覚器官の分離と再構築(のイメージ)を読むと、自分自身をプラモデルのパーツのように組み立てている、そんな作業場であるようにも思います。 皿に乗せられた目のイメージ、聖女ルチアのささげもつ、銀盤にのせられた二つの目玉の絵を思い出しました。 真実を見極める目、時間という見えないものを見よう、として見切れなかった目。外界に適応する自分自身を作り直す、再構築する為の、お籠りの場。そんな、洞窟。 前半の書き方を、もっと緊密に、スピーディーに進めても良かったのではないか、と思う一方、後半の視点がユニークな作品だと思いました。
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