別枠表示
太陽と月に背いて
一人は太陽に 一人は月になれる 眼の中に芽生えた小さな不安よ そいつが死を願い始める 流れ星は聞こえないふりをして流れ去っていく 俺は路上に突き刺さったガラスの断片として ずっと一人だった ある人が言う サルバドール・ダリが時計を溶かしたのか? ある人が言う シュレディンガーの猫が隣で眠っているのか? 口を閉ざした銃口の不気味な微笑に向かって 注射器のその針が赤ん坊の泣き声を出して叫んだ 氷は美しい時間そのものだった 氷の嬉しそうな表情が憂鬱を溶かしてくれるだろう 長い悲しみから夢を見るにはきっと涙が足りない 一人は太陽に 一人は月になれる 八つ裂きにされてもなお重なり合う矛盾の持つ力強さのように 魚の腹に沿って取り出された大きな後悔のように 太陽と月が手を繋いで流れるとき 公衆便所で育まれた最低な落書きたちが物語を生み出してゆく 時計の針で何度も午前零時を突き刺してやろう 蝸牛の中に溜まった幻聴を引っぱり出してやろう 指の上に風を呼んだ 目の前で空気の粒がひとつまたひとつと空中を食い破ってゆく 彼女は炎だった 熱かったけれど綺麗だった 俺は猛火に焼かれながら 彼女の燃える手を掴んだ もう放さない ある人が言う あなたには愛が必要だ ある人が言う 底なし沼のような陰部に包まれていても果てない忍耐力も 拳銃の中に叶わぬ想いをしまい込む 今にも撃ちたい気持ちで狂いそう 涙を食べて育った 虐待児の手のひらに月明かりが眠る 突然の雨が突然の暴力を振りかざしていても こうもり傘は超音波で濡れた犬の存在を感じることができる こうもり傘だって一緒に濡れて欲しかっただろう 長い悲しみから目を覚ますにはきっと涙が足りない 一人は太陽に 一人は月になれる
太陽と月に背いて ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 532.0
お気に入り数: 0
投票数 : 2
ポイント数 : 0
作成日時 2024-02-28
コメント日時 2024-03-05
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 0 | 0 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
月並みな感想で申し訳ないのですが、上手だなと思いました。特にそう感じたのは、くりかえすことば(リフレイン)を巧みに使われている点でした。ほぼすべての連において「一人は太陽に 一人は月になれる」が入れられています。言葉を反復させる方法は、その言葉を強調したい時に用いられて、詩の表現としても割とメジャーに思いますが、ともすると出落ちになってしまったり、往々にしてラストもくりかえすことばで締められるので、縛りのような定型的印象を読み手に与えてしまうこともあるかと思います。「太陽と月に背いて」においてはそれが正に作用していて、「一人は太陽に 一人は月になれる」という言葉が、それぞれの連ごとに違った印象を見せながら、その意味を強めてくるように思いました。作品全体を通してみると、イメージの伝達がスムーズで、無駄な言葉がなく、リフレインという手法を用いたお手本のような作品だと感じました。飽きることなく、最後まで新鮮な気持ちで読ませて頂きました。
0太陽と月に背いてという映画を思い出した
0コメントありがとうございます。 リフレインの使用が、詩のテーマ性を維持しつつ、同時に変化と深化をもたらすようになったことをお気づきいただけて嬉しいです。また、リフレインの使い方が単調にならないよう心がけました。最後まで新鮮な気持ちで読んでいただけたこと、とても嬉しいです。
1コメントありがとうございます。 「太陽と月に背いて」は、アルチュール・ランボーとポール・ヴェルレーヌの破滅的な愛と魂の交感を描く作品として、1995年にアニエスカ・ホランド監督により映画化され、レオナルド・ディカプリオが主演したことが分かります。このような芸術家の複雑な関係と生涯に迫る映画は、文学と美術の愛好者にとって興味深いものとなるでしょう。
1ベートーベンのような荒々しいとも言えるクラシックを思いました。 ところどころ、フレーズの切れ味というか、エッジが効いている感覚を思いました。
0ダダダダーン! コメントありがとうございます。 素晴らしい感性ですね。ベートーヴェンのクラシック音楽は非常に力強く感情豊かであり、時には荒々しいエネルギーを感じさせます。私は重度の聴覚障害があるので、ベートーヴェンには人一倍敏感に、そして特別な存在のように感じています。詩において時折エッジが効いていると感じていただき、光栄です。
1