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白い固定電話
作業机の上に白い固定電話が置いてある その滑らかなフォルム 丸みを帯びた姿態に僕は見惚れる 1の隣に2が並び 3の下には6が置かれる という完璧なデザイン 機能性を重視した そのクリエイティヴィティに僕は感服さえする 音量調節のボタンもほどよい場所にある 固定電話の万能性の前に 僕はひれ伏すばかりだ この美しさの秘密に みなは気づいているのだろうか もし気づいているのならば 僕は敗北するはずだ 僕は視覚的要素だけでなく その機能面にも注目してみる 何と驚くべきことに ワンタッチダイヤルというものがあるのだ これはスマホの「連絡先登録」に先駆けたものと見てほぼ間違いない この固定電話の奥深い魅力 称えるべき底力を目にしては 大抵の家電製品はかすんでしまう もし僕が固定電話の有能さに気づいていたとしたら 今頃僕は巨富を築いていたことだろう だが今は固定電話は驚異的な数値を示すほど 各家庭に普及しているらしい 僕に先見の明がなかったことを嘆くしかない 多くの人がこの固定電話の汎用性に気づかずに もしくは当たり前のものとして看過していることが 僕のせめてのもの慰み 救いだろう 作業机の上に白い固定電話が置かれている 5の下には8が配置 という完璧なデザイン この固定電話のパーフェクトな作りについて語り尽くすことが出来れば 僕のジェラシーも少しは払拭できるかもしれない 僕は今から固定電話について夜通し語り尽くすつもりだ だがちょっと待って 今大切な人から電話がかかってきた この詩の続きはまたあとで 付き合ってくれてありがとう 今日も夜は寒いよ 温めて眠って 風邪をひかないようにね それじゃあまた
白い固定電話 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1324.1
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2018-01-21
コメント日時 2018-02-17
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
投稿ありがとうございます。なんといいますか、固定電話についての語り、この口調、イメージしてしまったというか、思い出してしまいました。トムとジェリーの真ん中の話でよくあった、解説者の語りを。あのトムのジェリーの真ん中の話ではよく、文明を皮肉るような内容がよくあったのですが、その文明を皮肉る話には必ず、飄々とした、まさに本作の口調で説明するアナウンスが入ってました。 あれは警鐘を鳴らしてる意味はなく、たんに皮肉って笑いをとるアメリカンジョークなわけなんですが、本作「白い固定電話」には、皮肉ではない、「こんな風な固定電話、みなさんも知ってるっしょ?」的な、固定電話の存在意義を表現するためのいかにも固定電話らしい凡々な語りとして読める。良いか悪いかはわからないのですが、それも固定電話ですから、しょうがないかもしれません。 それじゃあまた。
0沙一さん、コメントありがとうございます。返信遅れました。 対比に可笑しみがあると言っていただけて嬉しいです。この詩はある種のユーモアを交えながら書いたので、そのような感想をいただけて、届く人には届いたんだな、と思っています。「大切な人は友人や家族の類」ではない。その通りです。この詩は「だがちょっと待って」以降のパートのために仕上がったような作品ですので、大切な人は「恋人」と考えて間違いなさそうです。何か一つのことに熱中し、夢中になる余り、大切なことを忘れてしまわないで、というメッセージがこの詩には込められてもいます。綺麗だと思いませんか? 恋人からの電話で話を打ち切り、聞き手の体を気遣うなんて。とてもいい締めくくりだったと思います。閲覧ありがとうございました。
0三浦さんコメントありがとうございます。 固定電話らしい凡々な語りとして読める。その通りです。この詩において大切なのは、「だがちょっと待って」以降のパートであり、その切り替えの美しさと面白味でもあるので。トムとジェリーのナレーションについて僕は残念ながら覚えていません。あの作品において文明批判がシニカルに入っていたとは。とても面白そうですね。今度機会があれば、観てみたいと思います。閲覧ありがとうございました。
0この詩はコメントが難しいですね。僕は長らく固定電話使っていないので、あんまり固定電話を美しいと言う観点から見たことがなかったので、あんまりよくわかんない感情でこの詩を読んでます。色々レス書いてみたのですが(例えば、いやいやスマフォの方がいいぞみたいな反論とか、数字の配列は本当に美しいのかとか)結局の所僕は携帯電話使うようになったのは高校生からなんですが、それから本当に固定電話使ってないなぁというのと、固定電話を使った記憶が殆どないし、使う時は無駄に緊張してたなぁみたいな感じです。固定電話によって他者と繋がるという感じは、やっぱり独特なのかもしれないなぁと思いました。つまり僕は固定電話の事全然考えた事なかったのですよね。 最後の切られ方も、読み手側が反論しようとしたらもう話は済んだというか、読み手よりも大事な相手と話しをする法が大事みたいな感じの切られ方で、本作の語り手が今とは違う位相空間にいるみたいな感じで、軽い断絶を感じました。僕はまだ学生なので、社会に出たら多分電話応対とかするようになると思うんですが、なんとなく億劫だなぁとも読んでて思いました。
0百均様 コメントありがとうございます。長らくこのコメを放置していたのは理由がありまして。どう返していいのかわからない、というのが正直なところでした。 語り手に軽い断絶を感じる。というのは、実はですね。この詩は前半部分は比較的どうでもいいのです。詩にメッセージ性はいらない、という考えをユーモラスに、ギャグにしてみようと思いまして、この前半部分が出来上がりました。だから固定電話についての描写が凡々なのは当たり前なのです。固定電話を鑑賞する様を、さらに一つの鑑賞物(詩)に仕上げようとしただけなのだから、凡々になるのも致しかたなし。この詩において大切なのは最後のメッセージなのです。柔らかく、人あたりよく、聞き手、読み手を労わり、あなたも大切な人を大切にしてね、と仄めかしている。この美しさがこの詩の肝であり、全体のコンセプトを支えるものです。この詩の構成、コンセプト、面白味を少しでも分かっていただけるなら幸いです。 閲覧とコメ、まことにありがとうございました。長文失礼しました。
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