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詩国お遍路(2/2)
【詩国EHIME伊予菩提道40-65】 40.観自在 口笛を重ねる事で 遠回りした接吻を交わす恋人 唇から心が吸われてしまう感覚が 怖くて堪らないのだそうだ 41.龍光 あなたの瞳の奥は架空 飛び込みたくなる極彩色の重なった黒 そんなあなたにこの世は 退屈の欠伸ばかりをさせる 42.仏木 そこの木にぶら下がる いや、垂れているのは誰だろう 面倒臭いから、手を使わないで 紐を使って楽になっている 43.明石 坊や、これは明るさを取り戻す小石 深夜に川に投げ込めば、石の成分が滲み出て 綺麗に発光させてくれる代物 数が少ないから大事に使うんだよ 44.大寶 この月が恋しいと碇を付けて留めさせた 太陽が昇り降りを数日繰り返すと 私の物になりたくなんて無いと 落とした雫は街を悲しみで押し潰す 45.岩屋 昔、空を暴れまわった猿を抑えた 大きな岩の欠片を千円で買った 私はそれを彼の肩に乗せ 身動きを取れない様にした 46.浄瑠璃 その感情の色に浴びせられると 浄化していく何かがあって 歪な輝きを眺めたくて そんな色の海に沈んでみた 47.八坂 二人は手を繋いで坂を駆け上がる そう、まだ二人にとって世界は未知に溢れている そこから更に広がる景色が 二人の足をその先へと歩ませる 48.西林 この躍る群集は枝が手招きする 不気味な林の中へと踏み入る 悲鳴とも狂喜とも思える声が 山頂へと移動してくのを見守った 49.浄土 洗浄されるこの世は縦に回されて 回転が止まったその日 真夜中の空模様は 汚れが落ちた白夜だった 50.繁多 体中から野菜を生やす女 箸を持ち追い駆ける男達 混じった肉を持つ僕は 身を削ぐ事で逃れる 51.石手 使い古されたその手は まるで小石の様にゴツゴツしている だけど、とても温かく 優しさに溢れている 52.太山 貴方は逞しくなりたいと 鍛えているうちに山になった 彼は今、多くの命を背負って生きている 53.円明 飛び散る鋭利な輝きを 捕らえて丸め、君にあげよう 灰色に閉ざされた窓の外にも 色が咲き乱れるだろう 54.延命 何時、覚めるのだろう あなたはまだ、夢から帰らない この呼吸器を外してしまえば この現に息を吸いに戻って来てくれるかな? 55.南光 躍ってばかりいる まるで陽気さに逃げ込んでいる様にも見える ほら、転んで泣いている子供を 誰も起こしてあげる人は居ない 56.泰山 野生の案山子が住んでいるから ケンケンでこの山を登りなさい 羨ましがられて その足を持って行かれてしまうから 57.栄福 揺れる宇宙の水 合図で酷道を下る 呼吸を始める君を見下ろす 八つの太陽 58.仙遊 全てが出来るようになると 退屈で作られていると知る 思い通りにいかない そんな頃に帰れたなら 59.国分 君の透明なその肌は 他人と重なる程に青くなる 僕の一途な赤い心は 君を想う程に黒くなる 60.横峰 その蜘蛛の糸は天まで張り巡らされていて 蝶になった人達を捕らえて餌になる 食べられた蝶は腹の中をずっと飛ぶ 61.香園 その甘い香りに誘われた女達は 色欲の海に溺れ、絡み合いながら息をする 禁断の園、実の割けた柘榴 62.宝寿 それがもう一度入るか分からないが 私のこの命をあなたにあげるから 譲って頂けないでしょうか だってあなたはまだ生きれるのでしょう 63.吉祥 数えていたうちの幾つかは終える頃には無く 再び数え出す頃にはまた幾つかが無くなっている それはまるで生命の拍子である 64.前神 その神様はある日、前を歩いている 決して前を行ってはいけないし 自然と居なくなるまで目を離してはいけない 君が代わりをさせられる事になる 65.三角 私は三角に囲まれてしまった もう逃げ場はない死角は何処だ まるで檻の様だ 殺伐ともしている 【詩国KAGAWA讃岐涅槃道66-88】 66.雲辺 建造物の無い平らな地で 飛び降り死体が転がってた きっと、あの雲の辺りに住んでる人だろう 67.大輿 もうこの夜は永遠に続くんだろう きっと太陽はもう拝められないんだろう だったら神輿を担いで当ても無く 気の触れた祭りで紛らわそう 68.神恵 あれは蛍光塔 蛍が集まって出来た芸術 これを見たら幸せになれるのは きっと神様からの恵みなんだろう 69.観音 花の声はとても澄んでいて 守ってあげたいものだった 「そんな所に居てはいけない」と 僕はついつい摘んでしまうのだった 70.本山 あそこには賢者が住んでいて あの山は近づいてみると本で出来ている 何でも知っているらしいが 彼を捜している間に、解決してしまうのだ 71.弥谷 その水場には死者が帰って来て 水を飲んでいるんだとさ それ以外の事をすると 見張りの獅子に咬まれるんだってさ 72.曼荼羅 傘の下で雨風を受けながら待つあなた やがてその場所に根を生やし大木になったが 何時までも待ち人は来ず、遂には朽ち果てた 73.出釈迦 生まれる場所と時代を間違えたと 断崖から身を投げた僕を掬ってくれたのは 他でもないあなたの手 74.甲山 その山を独りで掘り進んで 発掘した頃にはお爺さんだった この世に一つだけの名も無い鉱物に 君の崩した名前を授けた 75.善通 この先の道は生涯を通して 善い行いが多かった者が通れる 渡れない者は根の海に沈む 亡者の餌になる 76.金倉 狐と狸の化かし合いは激しさを増し 万物が嘘に包まれた戦争に発展する 血と土の混じった匂いが山中から立ち込め 私は嗚咽するのだった 77.道隆 吠える飼い犬は消えてしまった 僕の前には手綱と首輪だけが落ちていて それから時が経った散歩道 何処かで啜り泣く声が聞こえた 78.郷照 疲れ果てた私を故郷は優しく迎えてくれた 住んでいた頃と変わらない街並みに 電車を降りた私は涙を溜めて 夜の街を輝かせた 79.天皇 あなたに従えばいいのだろう それであなたは気が済むんだろう 矯正の効かぬ程に頑固な あなたはそれで満足なんだろう 80.国分 鈴を付けた蛇が地を泳ぐ その音を聞いてると 山奥まで胸につっかえていたもの 持ち去ってくれるようだ 81.白峯 草原の中を走る 誰かを待たせてる気がして あの白くなった峯を目指して 82.根香 牛鬼が動くものを全て食らうから 惑わしに根の国へ香を投げ入れる 牛鬼はそれに釣られて 奈落の底へと落ちていく 83.一宮 罪人に地獄の釜を被せる それは死ぬまで脱げず 僅かに開いた穴に色々と詰め込まれ 悲鳴を響かせて殺される 84.屋島 此処は化け道、人間はまず生きては出られない 狸に食べ物を恵んであげて案内をしてもらう グニャグニャと揺れている道を抜け お礼を言うと狸はドロンと消えてた 85.八栗 栗を埋めてからかれこれ八年の月日が流れた 立派に実るまでの間に、友達は結婚した 両親は白髪が増えて腰が少し曲がって来た 私は詠ってばかりの毎日を送っていた 86.志度 龍が盗んでいった大切な宝物を 小さな女の子が取り返しに行った 誰もが彼女の死を決めつけお墓で泣いていたが 彼女は龍の首も土産に持って来た 87.長尾 あなたの事をずっと怨んで これからの日々を呪う為に伸ばした髪を切り 地中、深くに埋めた 88.大窪 ケセランパサランが沢山飛んでいる 触れると雪の様に消えてしまった それでも皆、幸せに包まれている
詩国お遍路(2/2) ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1095.3
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2018-01-16
コメント日時 2018-01-19
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 0 | 0 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
投稿ありがとうございます。毎回、攻めのスタイルで投稿いただきまして、めっちゃ嬉しいです。とりあえず、私は45が気になりました。千円で買う岩の欠片とは一体なんだろうかと、まず思いました。その千円が高いのか安いのかわからないんですよ。まず、そこで一回妙な躓きだなあと思いつつ、読み進めましたら、その欠片を肩上にのせて身動きがとれないようにした、、これ、めっちゃ気に入ってしまいましたよ。なんと言いますか、私の想像なんですが、ここにあるメタファーは、苦行とはマゾヒと紙一重である、ということなんじゃないかなあと思いました。
0貴音さま はじめまして。 手甲と脚絆をつけ、細い細い一本橋を渡りつづけるような感覚で、興奮と緊張感を感じ続けながら読ませていただきました。88まで読み終えたときには無事に橋を渡りきった達成感のような、ものすごい読後感がありました。絶品だと思います。 ひとつひとつが独立した魅力があり、それでいて続きかなと思わせられる部分もありました。わたしはまだ、ほんとうの意味では読めていないのだと思いますが、言葉のリズムに漂いながら何遍も繰り返し読みたい詩です。
0三浦さん くつずりさん 沙一さん 貴音ですこんばんわ。 普段の私は直感至上主義でして それには理由は様々あるんですが略します。 意味なんての普段は 後から幾らでも付くとも思ってます。 ただ、今回はタイトルの通り 詩のお遍路をさせて頂きました。 直感で書かないで突っ走らず 一つ一つの寺をしっかり歩いて 参拝する様に書いてみました。 お寺の言い伝えや名前 等にも向き合い 私はある意味、放棄していた 意味を持ち伝える 時間を書けて書く その行為に向き合いました。 普段しない事なので、本当にお遍路の格好して歩いてるようでした。 1つ、3~4行になっていますが 私にはそこに意味を込めるのがやっとで 書き切るまでの道程は苦行で 何度も諦めそうになりました。 今回の詩を通して 詩とは何ぞや? 書くとは何ぞや? 意味とは、読むとは? 自分に問い掛けながら 書いて 出来上がった後に読みました。 立派な答えは出ませんでしたが 苦しくたって私は詩を書いていたい 詩を書くのは改めて達成感の連続なんだと 幾つか得る事が出来ました。 殆ど自分の修行記録のような詩ではありますが その中で、良さを見付けて頂きありがとうございます。
0誤字脱字や変な改行していますが、すみません。察してください。
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