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Ice Cream Elegy
真冬のアイスクリーム・パーラー 真夏の資生堂parlor 移り行く季節と狂死のメニュー 全ての罪が許された振りをする雪溶け 匿名に飾られたアイスケーキが円転する朝 彼女らの垂直に突きだすパラソルの群れが 黄色帽の少年や紅い靴の少女の 煌めく楕円形硝子を抉る 白日の下で乱反射する、こぼれ落ちた透明な破片 純粋と光が失われてゆく度に 世界には深紅のリキュールが注がれ 世界から紺碧のソーダ水を奪い去ってゆく 私は傍観者として、その無惨な光景を静観していた 哀しみはあるか? 憐れみは覚えるか? あの静かな夏を思い出すかい? 隣で視姦するジャンキーに尋ねるが 黄疸を纏った彼は涎を垂らしたまま echoの吐き気を催す副流煙を吐き出すだけ 吸殻とメンソールに浸された13IceCream 無表情のカップ或いは渇ききったコーンに沈む 淡いグリーンと歪なチョコレートチップが泣いている バナナチップですら溶ける夏 ポテトチップですら砕ける人ゴミ ポケットのアイスキャンディも 投身自殺死体の如く醜く潰され アオは青じゃなくなって イロは色を見失って 僕らは淫らな極彩色に染まってしまう そう、誰彼が無軌道にかき混ぜた後のフルーツパフェのような そんな妄想の果てにある、鈍色のレストランの三番テーブル上 何時かのライ麦畑で視た 「世界から誰もいなくなった十五時間」に於ける 歪んだ記憶を艶かしく思いだしたことすら いつの間にか忘れてしまうからさ 綿飴雲が揺れる午後二時 暖かさと孤独を感じる街路樹の下 柔らかな肌はあの日のヴァニラ・ファッジのように甘く切なく 私と君は、世界の終わりが見えるベンチにもたれ掛かり ハイネケン・ビールの細やかな沫と 綺麗に揺らめく琥珀を愛していた 溶けて消えたアイスクリームを忘れて 失ってゆく美しさと刹那に怯えながら―― ――やがて二十七歳の君は気が狂う寸前に クリームソーダに躊躇いもなく身を投げて 永遠の蒼に消えてしまった
Ice Cream Elegy ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 913.1
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2018-01-14
コメント日時 2018-01-21
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
投稿有難う御座います。北村灰色さんらしいロックテイスト満載な今作だと一読して思いました。二十七歳。岐路ですね。帰路かもしれません。その道端にアイスクリーム屋さんがあると救われる、そんなこと読んで思いました。
0一文一文が鋭く、混沌とした雰囲気を感じました。原色が濃すぎて胃もたれしそうなほどくらいます。しかし身軽。決して終末や発狂の際でも悲観的ではなく、どこまでも派手にかわし続けていられそうな無関心さがあるように思えます。
0全ての罪が許された振りをする雪溶け。っていいね。世界に向けた筆者の思いがここに込められているよね。 ここでいう真冬とは現代社会を意味するわけだ。溶けて消えたアイスクリームを忘れて失ってゆく美しさと刹那に怯えながら~真夏にアイスクリームが食べれるのならば、そのまま真冬を食べてやろよ、おまえら。筆者の隠された意図が読めてくる。。つまり真冬を意味する現代社会に対して、君や僕らは本気で向き合ってはいないじゃないか。というメッセージ性が込められている。やわらかく盛り込まれ大切なものほど受け皿へと零れていく情報。。見かけに振りまわされ続ける現代人。特に世界の中でもソフトクリームのように脆い日本人の甘えた思想観。よくよく足もとをみれば問題は山ほどあるじゃないか。良質な皮肉ですね。。わたしはそう受けとめた。
0何故そう感じるのか。付け加えておきます。 消費されてゆくスウィートな食べ物。それらは同化するように人間の感情が、そして対比的にみれば矛盾した情念としての無常観に読めてくる。ということです。
0北村灰色さま いつも拝読させていただいております。 27年前に発売されたアイスクリームを調べてみました。いまでも食べ続けられていました。 どこかで誰かが食べ続けているんですね。
0三浦さま コメントありがとうございます。 二十七歳が帰路或は岐路、というのは凄く分かります。二十六や二十八ではなく27。
0ネムマン様 コメントありがとうございます。原色の濃さは読み返してみて、確かにそうだなと思いました。着色料たっぷりなアメリカのアイスクリームを油で揚げたみたいな。 無関心さは自分自身の内面が作品世界に反映されている気がします。悲観的だけど死に繋げることができなくて虚ろになってゆく感覚というか。
0アラメルモさま コメントありがとうございます。 凄く鋭い読みをして頂けて恐縮です。。 世界や事象に本気で向き合わないこと、無常感や皮肉というのは、まさにその通りです。 アイスクリームの携える刹那や色彩、それと同居した無気力な甘美といとも容易く消費される現実という、相反する性質を持ったモノをテーマにすることで、虚ろになること無関心になることへの哀しさや諦めが表れたと思います。
0くつずり ゆうさま コメントありがとうございます。 27年前のアイス、気になります。。ホームランバーは何となくそのくらい昔からありそうなイメージです。
0沙一さま コメントありがとうございます。 確かに三単語ともブランキーの歌詞や曲名にありますね。BJCはとても好きなので、自分の詩にも多少影響があるのかもしれません。
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