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深海魚
深海魚は水圧で潰れている 深海魚にとっては 潰れている状態がほんとうなのだ 深海魚の目は退化して ほとんど何も見えない 深海魚の歯はギザギザしていて その食欲は寂しい 頭から生えた黄色いランプが 彼の病気の顔を照らす 深海の暗闇のなかに その恐ろしく青白い 殺し屋の顔が浮かびあがると 彼自身の弱く 貧しい心は さらに強く押し潰されて小さくなる 彼は永遠に太陽を知らず 眠りを知らない これからどれだけ長生きしても 服を着て地上を歩くことはないし みどりの風の吹く公園で 恋人と並んで ベンチに腰掛けることもない もしも 深海魚が陸にあがって 我々のあいだを 自由に歩き回るようになったら 対人恐怖症の泥棒のように見えるだろうし 少女たちは安心して 外を出歩くことができなくなる しかし 深海の水圧を失った彼は たちまち白くふくらみ 爆発してしまうはずなのだ 破裂した深海魚の どろどろとした肉片が 太陽にさらされて 干からびていく 彼の退化した目が 砂浜でルビーのように光る 深海魚にとっては 潰れている状態がほんとうなのだ
深海魚 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 958.2
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2018-01-14
コメント日時 2018-01-15
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
「深海魚は水圧で潰れている」 「深海魚にとっては 潰れている状態がほんとうなのだ」 「深海の水圧を失った彼はたちまち白くふくらみ爆発してしまうはずなのだ」 これ、科学的知識としてはあまり正確じゃないかな。水の比重からすると水圧によって押しつぶす力は大きなものにはならないし、魚だって身体に水分含まれてるし。魚の身体そのものが潰れることはなく、浮袋などの器官が水圧で一定の大きさに保たれていて、浮き上がるときにその浮袋内のガスが膨張することによって致死することはあるかもしれないけど。例えばの話、アンコウなんか深海にいるけど、水族館なんかで展示してたりは、ふつうにありますからね。 さて、そういう科学的知識はさておき、この詩の評価ですが、この深海魚に例えられているものが、もう少しわかりやすい例、例えば「人間の心」ならば、良いのだけど、譬喩としては失敗しているし、もう少し表現のしようがあったと思う。正直言って、ただ深海魚にまつわる自分の想像力を開陳したいだけならば、それは詩でやらない方が説得力がありそうだし、まあ色々思うところある惜しい詩でした。
0深い自己否定・悲しみの底に沈むとき、明るい方へ手を牽いてもらうより、ただただ自分の内面に耽溺していたい、またそうした方がよい時もあるものだと私は思っています。現代はすぐに立ち直ること・明るく振る舞うことをよしとするように感じますが、本当に立ち直るためには深く悲しむ時間が必要なこともある。 kaz.さんが前述されているような科学的な考証の不足は否めませんが、この詩はそれを許してくれるように感じました。だいぶ主観の入った感想で申し訳ない。
0kazさん あえて科学的なことは無視して書いたというところはあります。 でも、なんか詩としてもダメみたいで申し訳ないです。
0西村卯月さん フォロー、ありがとうございます。
0私は魚を見るのも釣るのも食べるのも好きなので、深海魚にも希望はあるよ、と言いたくなりました。例えばタラは自ら深さの違う海を移動しますし、ゆっくり釣り上げれば膨張せずにキレイな姿で陸にあがりますでしょう? 「深海魚」といいつつも、アンコウのイメージしか感じられなかったので、そこは寂しい気がします。
0白井草介様 フォローなんかではないです。 悲しみに沈んでいる、特になかなか変えられない自己の特性のために傷ついている人にとって、文学作品中の主体の不遇は自己の悲哀を投影する対象たりうる。それは読者に自己の内面に耽溺する時間を許してくれるのではないか。この詩を読んでそれを思ったと、そう言いたかったのです。 長文失礼しました。
0Rさん 深海魚に希望があることくらいはわかっています。 次は罪滅ぼしに「お魚天国」という詩を書こうかとおもっています。 そのときはちゃんとネットで魚について調べてから書きますね。
0西村卯月さん 茶化さず読んでくれてとても嬉しいです。 「なかなか変えられない自己の特性のために傷ついている人」という部分は本当にそうで、 この詩は自分ではそういう詩だとおもっています。
0白井さん、 私は、あえて深海魚という作品中の深海魚さんにも希望があると言いたくなったのです。やり方次第で、破裂せずに陸を自由に散策できるのではないかと。 そんな私のコメントはお節介や身勝手な偽善者そのものかもしれません。私自身がそういう偽善は苦手ですが、それが私に残った深海魚の後味と感想でしたので、どうぞ悪しからず。
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