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プルオーバー
プルオーバーのシャツを買いまくった。もともと被り物は好きではなかったはずなのにプルオーバーのシャツを買いまくった。自分はもしかしたら変温動物か何かなのか、すぐに暑くなるし、すぐに寒くなるしで小まめに体温調節しないといけないからプルオーバーは少し不利である。とても不利である。なぜなら、プルオーバーを電車の中で脱ぐのはみっともない。電車の中で着るのもみっともない。おまけに着脱してる間は全くの無防備状態で、その間に財布を盗まれたりスマホを盗まれたりするかもしれない。ひどい場合には着脱途中段階の悶絶した体勢のまま、見知らぬ人に脇腹をくすぐられたりするかもしれない。最悪である。だから着脱はできない。断固できない。これがプルオーバーの最大の弱点である。つまりプルオーバーはその性質上、必然的に身体を制約する。つまりプルオーバーが身体の動作を定義する。難しい。これはとても難しい問題だ。 だかしかし、ボックスシルエットのプルオーバーシャツを身体に纏ったときのドレープの控えめな美しさ。ゆったりと布に包まれているのだ、というあの感覚。布をそのまま身に纏うようなあの感覚。たまらない。あれはたまらない。やはりカットがシンプルな服はたまらない。シルエットが身体に寄り添わないから身体がシルエットを、形を、空気を規定する。着る人そのものが服になる。素晴らしい。プルオーバーのシャツは着る人をそのままあぶり出す。素晴らしい。人がプルオーバーのシャツを着るとき、人がそのプルオーバーシャツを定義するのだ。つまり、着る人の身体はプルオーバーのシャツによってその動作を定義され、同時に着る人の身体によってプルオーバーシャツは定義されるのである。これは美しい。非常に美しい。昨日夢にみた雪国よりも美しい。着ない訳にはいかない。私はプルオーバーを着なければならない。どうしても着なければならない。ちょうど外科医さんが手術のときに着るような美しい形のプルオーバーを。今すぐ。
プルオーバー ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 913.3
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2018-01-13
コメント日時 2018-01-15
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
>昨日夢にみた雪国よりも美しい。 で、思わず笑いました。 「たまらない。あれはたまらない。」「素晴らしい。」 女性が買う!方向に自分を持っていくときは、 多かれ少なかれこのような言葉が心中飛び交ってますよね。 プルオーバーのシルエットがだんだん他人事でないように思えてきます。 プルオーバーが私もじつは苦手ですが、(頭をくぐらせるとき息が詰まる氣がして)、 やっぱり買ってしまいます。 胸元のラインについて深く頷きました。 ただ、 >プルオーバーのシャツを買いまくった。 >もともと被り物は好きではなかったはずなのにプルオーバーのシャツを買いまくった。 ここが最初にあることについてしばし考えました。 後ろに持ってくるとか、なくてもいいかとか。 今までも色々気になる作品にコメントしたかったのですが、 なにしろ読むのが遅いので、置いてけぼりを食っています。 まずは新作からコメントさせていただきました。
0プルオーバーが何なのか知らないんですが、楽しく読みました。知らないからこそかな?お洒落にはあまり興味がないんですが、だからこそ自分が普段、見ていないものが文章になっているおもしろさをかんじました。
0フリオ・コルサタルの、『誰も悪くない』(SUDDEN FICTION2 ロバート・シャパード/ジェームズ・トーマス編)という短編があるのですが、この作品でやろうとしていることはそれとよく似ていて、その分粗が目につくのですね。コルサタルと比べられたくはないかもしれないけど、これはセーターを着ようとする主題といい、とてもよく似ていて、どうしても比べずにはいられないのですね。
0fiorinaさん コメントありがとうございます!雪国のくだり楽しんでいただけてとても嬉しいです。プルオーバーのあの魅力はなんなんでしょうね、笑。不便とわかりつつついつい買ってしまう。プルオーバーニットも何着か持っているんですが、さすがに温度調整に難あり、でほとんど着ておりませぬ。文頭の部分は確かに除いてみると、随分導入としてスッキリしますし、全体が引き締まりますね。なるほどです。貴重なアドバイスありがとうございます! 白井草介さん 楽しんでいただけて何よりです!<だからこそ自分が普段、見ていないものが文章になっているおもしろさをかんじました>とのことですが、なるほど、そのような楽しみ方があるのですね。コメントありがとうございました。 kaz. さん 私も生粋のMacユーザーなのでkazさんのハンドルネームにアップルマークがついたのがとても嬉しいです。コメントありがとうございます!コルタサルさんってどこぞの誰ぞ?という感じなのですが、日常的なことをコミカルでライトな文体で書かれるそういう名前の作家さんがおられるのですね?もし笑って読めそうであれば読んでみたいと思います。
0この作品はビーレビ杯不参加でよろしくお願いします
0んんん、これは素材であるプルオーバーに持っていかれちゃった感がありますね。もちろん、良い感じで持っていかれちゃいましたよ。でも、なんだろうな、個人的には、前々回の『遠く、朝は』のあの美しい詩をあと40作品ぐらい読みたいです。んんん、でも今作もかっこいいな。
0不参加の件了解です!
0三浦果実さん 嬉しいコメントありがとうございます!今回はプルオーバーに全部持って行ってもらいました、笑。プルオーバー本当に好きなので。『遠く、朝は』のような作品はよっぽど感受性が研ぎ澄まされている時でないとでてこないです。なかなかそうした時間というのは稀です。と同時に同じようなスタイルで書くのはどうしても飽きてしまうんです。
0花緒さん 好意的なコメントとても嬉しくお読みしました、ありがとうございます!おっしゃる通り単体としてはちょっと弱さがあるかな、と自分でも思います。こういうのはシリーズで書いてみたいですね。ビーレビ杯不参加は作品の性質云々というよりも、不参加にしたほうが自分はもっとこの場を楽しめると思ったから、というのが大きいです。そこまで作品作りに時間を割けない事情もあり、評価を気にするのではなく自分の文章ときちんと丁寧に向き合いたいです。いろいろな方のアドバイスも頂きたいですし、いろいろな作品をお読みして自分の技を磨いていきたいな、という気分でいます。また気分が変わったら是非参加させてください!
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