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火の子
街と鳥と船と声 砂と雲と昼と星 四角形に切り取られた木の葉の端、 そこから銀色に塗られた海が静かに流れ出す 喉の振動が髪を結う 3メートルの直線距離 影の形をした虫の心臓 腕から伸びる一本の葦に牛の鼻輪は繋がれる 溶け出した蝋が再び固まるまでの猶予の間、 鳥色の傘は閉じられて開かれる 森の地下を這う根の繁みが 足音を見つめていく 屈折した太陽光を浴び 眠りは地上に逆さの雨を描く 執刀医の手にアルコールは滲む 穴の開いた風に運ばれて 永久凍土は動き出す 蜘蛛の巣を伝う一筋の光が 火の上に落ちる 引き裂かれた蛙を黒煙が包み、 湖は森の底に沈む Hと発音された貨物船と概念的な塩胡椒 木製の杖が老人の手の下にぶら下がると、 花の茎は音もなく崩れ去る 草の息の根 2月生まれの健康診断表は 黒い蜜の上を巡る 呼吸は繁殖を繰り返す 臍の緒が路面を封鎖する 望遠鏡の凹に歌が溜まる 白鳥の講壇での演説 時速12kmが目を閉じる 吐き出す 瞼の上の車輪 揺り籠に入る 甘く染まった包帯が 赤い香草を噛み砕く 電気信号に喩えられた夕闇の色素に向かって 針金に吊るされる金管楽器のように 螺旋状の暗室を裸足の水槽は駆けていく 二酸化炭素混じりのスープ 雪景色 写真の中の 乗算と季節同士の会話 萎れた三つ葉が脂の上を泳ぐ そして立ち止まる 赤外線に縫われた洋服屋の前で 時は瀕死だ 食卓に並ぶ記憶喪失が いつの日か国際電話に代わるだろう そして人は涙を数える 187 鋭く尖った鉛の国 胸ポケットの中身には景色がある 卵巣の飛散した無口なオレンジの恒星
火の子 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 976.4
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2017-03-10
コメント日時 2017-03-23
項目 | 全期間(2024/12/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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エンタメ | 0 | 0 |
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構成 | 0 | 0 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
おや、文学極道だけでなくこちらにも同じ作品を投稿されたんですね。せっかくなので、あちらに書いた感想に少し付け足して書いてみます。 私にとっては意味不明な詩ですが、「溶け出した蝋が再び固まるまでの猶予の間」とかは原発事故のことかなとか、「穴の開いた風に運ばれて/永久凍土は動き出す」は、オゾンホールや地球温暖化のことかなとか、「187」が殺人のスラングなら「鋭く尖った鉛の国」はアメリカのことかな、などと考えながら読みました。意味が分からないのに読んでいて面白いのは、言葉選びのセンスが良いということだと思います。 「臍の緒が路面を封鎖する」は、その奇妙なイメージが頭の中で映画のワンシーンのように展開されました。次の作品でもこの不思議テンションを維持できるのかどうかが、今から楽しみです。
0いやービビった。この作品は衝撃だ。その一言。 きたね。待ってましたよ。これです。まさに。この『火の子』を待ってました。 読者の皆さんは知らない人も多いかもしれないけれども、ケムリさんの再来ではないでしょうか。 十代のカリスマ。(作者が十代でなかったらごめんなさい!) その世界観は『二酸化炭素混じりのスープ』であり、『卵巣の飛散した無口なオレンジの恒星』なんだ。 ピンクパーカーさん、革命を起こしてください。是非。
0なんか好きなんだよなぁ。という感想がまず一つ。読み方というか、多分僕はこの作品を分析して読む手法は持ってないからあんまり細かい事は言えないので、感覚に特化した感想になってしまうのですが、「火の子」というタイトルを通低音として置いておけば、多分最後まで読めるような気がします。なんだか読んでると、火の子っぽい感じがします。火の粉というと粉なんでしょうけど「子」っていう事を考えると最後の >卵巣の飛散した無口なオレンジの恒星 このオチがしっくり来る感じもします。言葉の組み合わせが面白いというよりは中々思いつかないよなぁ。という感じのフレーズが続いて、独自のコードを生み出しているような感じがします。まぁ、なんというか文体としてある意味で完成されちゃってる感じというんでしょうかね。そういう意味で突っ込を入れる余地はないかなぁ…
0語感(音の響き、イメージ)が良い、ほぼ一連四行で進行するリズムがよい、ので・・・とんとんとん、と読まされてしまうのだけれど・・・ イメージがわんさか詰め込まれている感じで、たとえるなら、たくさんのモチーフが張りこまれたコラージュ作品を見ている印象。どうも、うまく繋がって行きません。 1連目が喚起する、ヨットハーバーがありそうな、スタイリッシュな港のイメージ。 2連目、髪をまとめている女性の白い喉を、三メートルほどの近すぎもせず、遠すぎもせずに見ている感じ。 3連は、なんだろう・・・虫の心臓、牛の鼻輪・・・牧草地と黒いこうもり傘のイメージ? 4連目は、眠りの中で深い森を歩いているイメージ。地面の中から、地上を歩く者を見ているような、鏡像的な感覚もあり・・・しかし、ここでどうして森の中に入り込むんだろう。 5連、執刀医が登場し、もしかしたら、これまでの詩は、手術前の麻酔に落ちていく時間の描写であったのか?と思いつつ・・・ここで初めて、題名の「火の子」(火の粉とかけている?)に関連しそうなモチーフが出て来る、わけだけれども・・・ 6連目、森が湖の底に沈む、のではなく、湖が森の底に沈む、という逆説。言葉の世界だけで起きている出来事、というニュアンスが強く出ている部分であるようにも思うけれども・・・花の茎の崩壊は、老いと死の暗示なのかな・・・ 7連、遅生まれの弱々しい命のイメージ・・・はあるけれど、それらが増殖している感覚が、どうもうまくつかめない。 8連、今度は望遠鏡。宇宙からの歌を受信する、ということか。白鳥の演説?という、ファンタジックなイメージ・・・自転車のイメージも登場、するも・・・ 9連、包帯が~噛み砕く イメージできなくもないが、滑稽なお化けのような像しか出てこない・・・夕焼のイメージか。 10連。中空に浮ぶホルンのイメージと、三半規管のイメージと・・・でも、裸足が駆けていく、であれば繋がるものがあるが、裸足の水槽、となると・・・水槽から足が生えているようなものしか、私の中では像を結ばない、のですね・・・ 11連。これはもう、私には全然つかめない。申し訳ない。 12連、「時は瀕死だ」こういうカッコイイ表現、好きなんですが、連関が、イマイチわからない。 13連、「卵巣の飛散した無口なオレンジの恒星」執刀医とか、全体を彩る赤やオレンジのイメージ、生と死のイメージ・・・の終着点、なのだろうけれども・・・ 火の子、が作品全体とどのようにからんでくるのか。一行ずつ見ると文法を破壊しているわけでもない、矛盾を詰め込んでいるわけでもない、のに、全体が分離されたまま寄せ集められている感覚があり、うまく全体がまとまった流れとならない。 イメージが文節され過ぎているのではないか、という印象を受けました。 ひとつひとつのモチーフのキャラが立ったコラージュ作品、として、全体のイメージの重層性や響き合いを楽しむ、ということでよいのか・・・とは思いつつ、イメージが過剰過ぎて、装飾的なものに平板化されてしまっている感もあり・・・奥に詠み込んで行こうとすると、手前ではぐらかされてしまうような感覚もあり・・・ 映像的な美を作りだそうとしたのか、もっと深い創作意図があるのか(その意図を、私が読めていない、のか)作者の側からのコメントがあれば嬉しいと思いました。
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