路 - B-REVIEW
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PICK UP - REVIEW

ことば

ことばという幻想

純粋な疑問が織りなす美しさ。答えを探す途中に見た景色。

花骸

大人用おむつの中で

すごい

これ好きです 世界はどう終わっていくのだろうという現代の不安感を感じます。



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 それが未来への希望なのか、それとも過去へ払拭する近道なのか。ただ引き返すことは適さない。ひとひとりすれ違うのがやっとの細い路地にある。 「私、とは」  いや愚問。  きっと遠くまで響かせる灯りとチカチカと入滅を繰り返すと。ジーというダミ声が頭上から囁き、錆びたシャッター街だと誰かが轟く。  怖々と射せる無声は嘔吐くよう静寂に落ち、壁を反響し罅割れを埋める水音が耳元を不快感を張り付かせる。陰湿ないがらっぽさと、喉を焼く。この苦しみも煩わしさもすべて生を主張するような飛蚊症に過ぎず、喘鳴を感じさせるこれこそが素晴らしい催事だったはずだ。  いまさら、歩いても走ってもそのうち十字路に立たされる。皆閉じてしまえばいったいどこに色恋があったのか、そこに命が売られていたのか、人生などわかりはしない。もう立ち寄る術もないのに行く先だけが伸びていく。  じっとりと染み込む汗、何度でも踏み締め足跡の後を追う、ぬかるみがアスファルトと渇く頃、うまれるまえより古く死ぬ時より新しく巻き戻した時が通過したように、思い患うところが、大概、ひとの悪い癖だろうと攀よじれる。  もとよりこの昏く狭く澱んだみち、はじめて足を踏み入れたのか、もうデジャブだけが手をこまねいていくのに。  今にいやに黄ばんだ頭痛と煤けた色を燻らせる目眩を奔ませ、限界まで吸われたシケモクとなにかを踏み潰す。これを誰かとするならば。ゆめまぼろしでもねえ視界は動作不良をおこしたまま、暗転と交点を刺し互えていたはずだ。  これが絡まり合う触手と幾重にももだついた、己の足元は不安定な泥の膿に溺れゆく、その前に土色の凪が鼠の死相を描いて見せた。  この生はそのうち終わるのか。  ただ定まらぬ永遠に思えるほど長く伸びた道に霞む、後ろを見ても前を向いても同じく、凡庸なありさまをエンドロールさながら映り出しているに過ぎない。  在り来りな呪いに罹った天国への階段、地獄へと誘う永久凍土とも転げ落ちる、足取りは強制的に近く落下するようで浮遊するような至高天の断罪から。  逃れることもできず見過ごすことも叶わない、そんなどうしようもない後悔が、憐れだと波に浚われる航海に取って代わる。逃れられない運命、偶然という必然だと紅梅は降灰に等しく自然に映し出す。それならばもう諦めにも似た産声と尽くと、未だ春まだ浅い生ぬるい風が背を軽くさせた。  ああ、気づいてしまったのだ。  いや築かれていった咲きなのだと、一瞬、曼殊沙華の苑を通過する。  ただ命の息吹だけが、燦燦と明朗に冴え亘り、わたしの、かげもかたちも見受けられないまま。  廃墟が連なる山脈に囲われ、犇めき合い盾のような蔦が幾重にも絡まる。地は人工的な石畳が残りその歪な隙間を赤茶けた土が埋めている。  青空が照り返し、そこに独り佇む。  路地だけでなく、ひとっこひとりいない。表通りのくせに。  どの道を亘り歩いても、炎熱の夏、空蝉が咽び啼くだけ。  それでも閉塞感が幾分和らいだ気がして、ただ己が辛気臭いだけと自嘲する。ならば己の顔を思い浮かべて、便りも返事もないくせに 誰が何かを求めて、ただふらふらと生き急いでいたのかと名出しする。  さすればほら、傍らに侍る。手探りの入口があるのだから這いつくばる出口もあるはずだと虫の知らせが、いったいどうやってここに迷い込んだのか、もうそれすら、  「私とは、ここにいるのか、さだかではないのに。」  うまれていくのか、しんでゆくのか、ただ、白鴉が一斉に視界を遮る。



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作品データ

コメント数 : 6
P V 数 : 1015.4
お気に入り数: 0
投票数   : 1
ポイント数 : 0

作成日時 2023-09-05
コメント日時 2023-09-06
#現代詩 #縦書き
項目全期間(2025/04/12現在)投稿後10日間
叙情性00
前衛性00
可読性00
エンタメ00
技巧00
音韻00
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叙情性00
前衛性00
可読性00
 エンタメ00
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構成00
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閲覧指数:1015.4
2025/04/12 13時34分10秒現在
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    作品に書かれた推薦文

路 コメントセクション

コメント数(6)
田中恭平 new
田中恭平 new
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(2023-09-06)

おはようございます。 この作品は正直、横書きだと読むのが大変で、そうしてプリントアウトして読んだのでした。 その、まあ、いかついテキストだな、と思って。 作者さんも何か怖い方なんじゃないかと恐る恐るコメントしているんですけれど。 その、要は、テキストとしても、ズンズン歩いてゆく、その体感と思考の記述、 だと思うんですけれど、非常に閉じている。 それが良い悪いじゃなくて、これはきっと作者さんのパーソナリティによることで。 その  「私、とは」 という実存?の問いが発せられたあとで すぐに  いや愚問。 と、問い自体が抹消される。これが閉じている所以なのですけれど 態度、スタンスとして非常に格好いい。  しかしその、閉じが、閉塞感へ抱かせるのですね。  それでも閉塞感が幾分和らいだ気がして、ただ己が辛気臭いだけと自嘲する。ならば己の顔を思い浮かべて、便りも返事もないくせに 誰が何かを求めて、ただふらふらと生き急いでいたのかと名出しする。  この、己の顔を思い浮かべることでなにがしか、解決を試みる、とか僕は発想できなかったのですけれど・・・その、己が自己完結的であることは、話者にとって重々承知のことと思いつつ、歩いて、思索して何かを得ようとする。  何かそこら辺、共振するものがあるなぁ、と。 やっぱり、歩いてゆく、そのスピード感と、文体との兼ね合いがうまく行っているのか。 ちょっと一行一行、逐一、考えてみたいテキストでした。

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m.tasaki
作品へ
(2023-09-06)

こんにちは。 とても暗い感じの詩ですね。 自分が何者であるかわからない、あるいは自分は何者にもなれない、そんな生きてゆくことへの絶望感が全体に満ちています。 ただ、全体的に平板で緩急や展開などの変化に乏しい感じがします。これだと読み手が途中で飽きてしまうおそれもあります。 もう少し推敲を重ねたほうがいいように思います。 でも、末尾の 「白鴉が一斉に視界を遮る。」 というところは良いと思いました。 白鴉とはありえないことの喩えですね。それに視界を遮られるというのが、作者の感じているであろう、この世界や生きていることの不条理さを上手く表していると感じました。

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m.tasaki
作品へ
(2023-09-06)

こんにちは。 とても暗い感じの詩ですね。 自分が何者であるかわからない、あるいは自分は何者にもなれない、そんな生きてゆくことへの絶望感が全体に満ちています。 ただ、全体的に平板で緩急や展開などの変化に乏しい感じがします。これだと読み手が途中で飽きてしまうおそれもあります。 もう少し推敲を重ねたほうがいいように思います。 でも、末尾の 「白鴉が一斉に視界を遮る。」 というところは良いと思いました。 白鴉とはありえないことの喩えですね。それに視界を遮られるというのが、作者の感じているであろう、この世界や生きていることの不条理さを上手く表していると感じました。

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m.tasaki
作品へ
(2023-09-06)

すみません。 タップミスをしたらしく、二重投稿になってしまいました。

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A・O・I
田中恭平 newさんへ
(2023-09-06)

自分がどこにいてなにをしているのか、理解できるけれどそれでも、知っていたとしても、迷い込む時があって、出口が定まらない場合があります。ああでもないこうでもないブツクサ思考を巡らせながらひとつひとつ確認していく。そんなイメージでした。ただ一年以上前に書いたものなので今読み返してみるとどう見てもラストがシニアンケンにしか読めなかった。希望に魅せるようにはもっと重ねる必要があった感じがします。それでも今これをうまく直せるかというとできなくて、なのでこれでいいのでしょうね。結構気に入っていたものだったので、出してみましたが。コレ、重いものをかいたワケではなくて、娯楽として軽い気持ちで読んでくださればいいなと思っていました。まあいつもそうですけど、なにかしら楽しんでくだされば幸いです! 田中さまお読みくださりありがとうございます。

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A・O・I
m.tasaki さんへ
(2023-09-06)

m.tasakiさまのコメントを読んでから再度自分のものを読み直したのですが、確かに絶望の中の路しか、このものからは見いだせなかった。自分的には朧気な自分や仄かな希望を見出すイメージで書いていた記憶があるので、いいたいことを伝えるという観点でいうとヘタクソ極まりないものでした。まあ私のものはいつだって伝えたいわけではなくて書きたいだけのもの、なんですけどね。ですから好きなように読んでくだされば、その一期一会にまず嬉しく思っておりますので。白鴉の部分、好いてくれてありがとうございます。 m.tasakiさまコメントありがとうございます。

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