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横山先生への最後の犬笛
以下の掌小説は長編小説『赤十字conspiracy』の一部である 『赤十字conspiracy』の原型はここで読める https://ameblo.jp/djmacuba/entry-12813092387.html) (アキコさん、仇を取ります。私は武器を使えません。だから言葉で。何よりも恐ろしい意思の力で!分裂症を治す、自己の劣性を切り刻む否定の力、地獄からの救済への絶望の叫び、教えてあげる。) 横山先生 これがあなたへの最後の犬笛となります。 今までの感謝を込めてあなたへのプレゼントを贈ります。主治医のあなたへ。最高の生命保険、究極のセーフティーネットを差し上げましょう。 私が経験したもう一つのconspiracy 。小規模などではない、国家規模の、身の毛もよだつ、人生で最も危険な瞬間を、墓場まで持って行かなくてはいけない究極の秘密は包み隠して、少しだけ世界の秘密と私の悪夢をお伝えしましょう。 放射能を、専門職としてわかっている二人のミヤジマお嬢さんだけではなく、本当の大人の優れた頭脳の持ち主である主治医のあなたへ、ここを盗み見している通報者の命すら救うために。人生の先輩から見たらはるかに子供である私が、私の成長を知って安心してもらうために。できれば手書きで一度だけお見せして、紙ごと廃棄したいけれど。 この国は今心理的ショックによって支配、管理されています。現在の自民党政権だけでなく民主党政権からも民衆を恐怖に陥れた上で、無知な日本国民は統治されてきました。 目に見えない猛毒、放射能に怯える全体主義国家なのですよ、この平和な国日本は。あなたに昔質問したことを覚えていますか。ねえ、横山先生?これは記憶は定かではないけれど、確かあの話書いてしまったんでしょう、カルテに。バレているのですよ。私の医療情報はすべて盗まれています!conspiracyなるものは実在するのです。患者の妄想に審判を下す大審問官、私の主治医、横山伸先生! ——先生、311の放射能は微量でしかなかったんでしょう?だって未だに白血病やチェルノブイリのように喉の病気で誰もなくならないじゃないですか。 ——そうだねえ、これだけ何も無いと微量だったのだろうね。 まさしくこの会話に秘密があるのです。 放射能は微量でしかなかった。誰も知らない。みんな恐怖に怯えている。テレビでは毎日放射能の恐怖を伝えている。福島には帰れない。何も起こらない。誰も病気にならない。穏やかでクリーンな福島。無知な日本人と世界の民衆。私たち少数の優れたものだけが冷ややかに事態を眺めている。 しかしあなたも含めてナチュラルサイエンスを、人体への放射線の影響がわかっているインテリ達でも気づかない、さらに少数の知の最高段階に達した知識人、この世界の秘密を知ってしまった者にしか—––まさにこの世の地獄を味わいました—––わからない現実があるのです。 世間知らずの私の可愛い二人のミヤジマお嬢さん—––もともと物質工学専門の美貌の大学院生、最愛の恋人宮島明子お嬢さん、そして新しい主治医美谷島真由美先生、––—いいように私にやられてばかりでいないでね。ねえ、たまには反論したら?やはりお嬢さん ––—はご存知でしょうか?放射能が微量でしかないことを! 不思議だと思わないのかな。テレビに出ている学者先生も新聞に寄稿しているジャーナリストも誰も本当のことを知らない理由を。なぜ誰も貴女たちの大好きな食後の甘いエビデンスを提供してくれないのでしょう。誰もが羨む美貌と優れた知性の持ち主のお二人が将来メディアで「福島の放射能は微量です!エビデンスあります!」と言ってしまった日にはもう遅いのです。だから本当の大人の男である私がここで釘を刺しておくとしましょう。 私は数年前東北からの帰りの新幹線で—まさに動く密室!逃げ場はありません!—––人生で初めて(!)conspiracy—––「陰謀」なるものの片鱗を味わいました。平日の昼下がり、ガラガラの自由席で警視庁のOBを名乗る謎の老人が話しかけてきたのです。 ––––あんた選挙の秘密知ってるかな。 ——知ってますよ。ムサシですね(気の利いた老人だな。話が合いそうだ。) ——私は麻薬捜査をやっていたんだ、色々知ってるよ ——地震は海底に爆弾セットすれば起こせますよね ——よく知ってるね。ではこれはどうかな この調子で日本でヒソヒソ声で語られている秘密が本当のことだと親切に(!)教えていただきました!私が本やネットで入手した知識、情報は本当でした。私は自分のインテリジェンスの能力に自信を持てました。陰謀論を信じる読書人階級として最高の栄誉でした。しかしその時はまだ自分がまさに陰謀そのものの中にいるということがわからなかったのです! そして彼は誰も知らない、どんな陰謀論者も口にしない究極の秘密を私に握らせたのです。もう逃れられなくするためにね。それはここでは書けません。永遠に墓場まで持って行かなくてはなりません。私は狙われる側に捕らえられてしまったのです。私は、私の命と愛する人々を人質に取られました。私には東北の女友達を守らなくてはならなくなりました。一生をかけて。そして二人のミヤジマお嬢さんをも。 ——あまり探りを入れない方がいいよ。私の友人たちも何人も秘密を漏らして殺されてるよ、気をつけなさい。 そして最後に私は聞きました。 ——福島の放射能は微量ですよね? 答えは意外なものでした。 冷たく––––いや、それは違う。放射能は甚大な被害をもたらしている。多くの人が亡くなっている–––– 私は悟ったのです。放射能は微量である——私たちが謎に思っていた疑問、これこそが、日本の究極のタブーだったのです! わかるかな、お嬢さんお二人。これを分からなければ女であれ男であれお嬢さんだ! 墓場まで持っていかなくてはならない秘密があり、一生命をかけて守らなければならない女性がいる。だから私は自分を本当の大人の男だと言ったのだ。この責任の重さがわかるかな。お嬢さんにはわからないかな 私はミヤジマお嬢さんお二人にもこのタブーを伝えなくてはならない。気が重い仕事だな、横山先生。やはり男がしっかりしなければならないのが現実だよ。女の命がかかっているのだから。女を危険な目に合わせないことが男として、さらには保守として最低限の条件なのだよ。わかるかな、お嬢さん。 ——ねえ、助けてよ、アキコさん助けてよ、お母さん! ——あなたしか助けられないの。あなたは恋人で大人の男なの、母親より大切なものがあるということをわかりなさい。あなたなら大丈夫。大病院の精神科医より頼りになるの。自分で向かい合って分裂症を治したのだから。 ——でもそのためにアキコさん、レイプされてまだ精神病院にいるよ。口封じのために、僕をかばってレイプされたんだよ。日赤との交渉の道具にされたんだよ、お母さん。 ——自分の恋人を助けてあげなさい。 ——普通の人じゃ治せないよ。自分の闇と向き合えないよ。薬も飲んじゃいけないんだよ。アキコさんにそんな無理させられないよ。クリスチャンだって神なしで原罪と向き合えないよ。無理だよ、神なしですべてを許さなければならないんだよ。憎しみは自分の罪なんだよ。ねえ、答えてよ、お母さん ——それでもアキコさん助けなさい ——私はずっとアキコさんのそばにいるよ、それしかないよ。せめて私だけはそばにいるよ、いいよねアキコさん。 横山先生、あなたは患者から自分の命を助けてもらった。日赤を守るために代わりに患者に交渉してもらった。しかし私の最愛の人はレイプされて精神病院にいる。法では裁けない。だから人定法ではなく自然法による処刑を行った。 さようなら、横山先生。
横山先生への最後の犬笛 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 981.4
お気に入り数: 0
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ポイント数 : 0
作成日時 2023-09-03
コメント日時 2023-09-07
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 0 | 0 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
非常に面白く、短編小説としても詩としても楽しませていただきました。語り手のある種の傲慢さが悲哀を醸していて、それでいて機械的に、昆虫のような目で自分自身を見つめているようにも見える。タイトルも含めて何処か不気味さのある内容に、ドキドキしながら読み進めました。
0はい。まさに小説であり、詩のようでもある表現を意識しました。
0その、何か語り部に共感した感じではなかったのですよ。 僕自身、病者なのですけれど、その、筆記された独特の世界観も「なんかわかるなぁ」と 思いつつ、そういう意味で、自分は非常にマイノリティに対して そうして自分の置かれているコミュニティー内に於いても じっさい、暗い部分に、闇に、タッチしていないのではないかー、なんて反省しました。
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