おはようを言わない朝もある
おやすみに似合わない夜もあれば
留めておきたくない風景もある
鉄塔を怖がる鳥もいる
拾われて来た子のまま育てられた
白と黒、光と闇、どちらの味方もしなかった
どちらかに行ってしまった人は、黙って見送った
私は裏切り者と呼ばれた
起き抜けにコップ一杯の水を飲み干す
カルキの溶けた軟水は血の味がした
誰の血かわからなかったが
此処では大地で皆繋がっているし
同時に縛られてもいる
だから誰かしらの血であるわけで
私の中に堂々と、ノックも無しに入って来る
そして自由自在にそこら中を歩き回る
最後には私と目合い、生産的な活動に手を染める
時々風が見えてしまうことがある
それは果たして悲しいことなのかどうか
それでも
ありがとうを言わない一日もある
美味しいと思えない食事もあるように
誰も思い出さない夕刻もある
客船を怖がる島もある
空は「空」という物質で埋められている
それはゼリーのような物質で
そのゼリーを掻き分けて鳥は進む
時々喉に詰まらせて窒息するみたいだけど
堕ちない
ゼリーに埋もれて死んでいる
浮かんだまま、鳥の、翼を広げたその姿のまま
死んで、視界の奥で
いや記憶の手前で
いつか消化されるのを待っている
それを私たちは「飛んでいる」と誤解をしている
簡単に狂ってはいけない
罪のない人なんていないのだ
だからあの世には地獄しか存在しない
皆地獄のことを勝手に天国と呼んでいる
なぜ自分以外の領域を欲しがるのか?
泣かなくていい言葉をせっかく選んだ
そんな私に何処までも優しく出来ないで
永遠に隠し通すと決めた気持ちもある
そして今日も
おはようと言えない朝が来て
やっぱり拾われた子のまま生きている
午後には次第に伸びる日陰を恐れ
私の味方は正午だけ
作品データ
コメント数 : 16
P V 数 : 1664.7
お気に入り数: 1
投票数 : 4
ポイント数 : 0
作成日時 2023-07-23
コメント日時 2023-08-11
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 0 | 0 |
閲覧指数:1664.7
2024/11/21 21時53分05秒現在
※ポイントを入れるにはログインが必要です
※自作品にはポイントを入れられません。
こんにちは。 一読して秀逸な作品だと感じました。 メタファーを多用した表現と言うのでしょうか、それとも象徴的な表現と言うのでしょうか。 あまりにも複雑で容易に言葉にできない心情を言葉で表そうとして、結果的に難解な詩になったような印象を受けました。 わかる人にはわかる、わからない人にはわからない、そんな感じです。 ですから一連一連、一行一行、読み解いてゆこうとすると、とんでもなく見当外れの解釈になる恐れがあるような気がします。 全体的に厭世的な雰囲気に包まれていますが、「あの世には地獄しか存在しない」と書かれているので、厭世的であるのを突き抜けて悲観的な感じがしました。 一番印象的なのは、 「空は「空」という物質で埋められている」 というところと、その行から始まる連です。 そこでの表現が非常に巧みで、この連がこの詩の中核をなしているような気がしました。 でもその一方タイトルの「正午」が気になります。 自分の影が最も小さくなる、自分が立っている場所以外には自分の影を落とさない、そんな正午だけが味方なのは何故なのか。 浅薄な解釈は控えておいた方が良さそうです。
0ありがとうございます。読み解かなくてもいいんですよ。読み解いてはいけません。そのまま受け取ってもらえれば。 一見厭世的でも、愛している気持ちはいっぱいなんです。少々口うるさいだけ、おかんみたいなものです。 私あなたのママじゃないのよ、これ人生で何回言われたことか。いや泣いてないです。
0ここまで印象と重ね合わせた適切な言葉を重ねるのは、並大抵のことではできないぞと思いながら読みました。 情念を感じます。 私は「!」や「?」を極力用いないようにするのが好きですが、これはもうここまでされては黙って読むしかないなあと。 とても気持ち良かったです。
0ありがとうございます。以前もそれ誰かに指摘されて、そうかと思ってしばらく意図的に使わないでいたんですが、なんか違うなと思って、それからは気にしないようになりました。合う合わないありますね、そういうの。特に私みたいな癖のある書き方の場合は。でも常に意識はするようにしてます。それが正解かどうかは別として。
1時々風が見えてしまうことがある うらやましい。
0あれこれと決められてしまう、あるいは分別されてしまう世界に対し、曖昧さの中に揺蕩っていたい感情をうたった詩だと受けとりました。不思議な表現だけれど何ともいえない悲しさややりきれなさが伝わってきて、最後にタイトルが回収される形で表れたところは本当に凄いな、と感じました。
0いいでしょー。。特別なサングラスをかけると見えるんです。高円寺のビレバンで1800円で売ってた。
0グミにしようかゼリーにしようか迷ったのですが、昔駄菓子屋に売ってたコーラグミが好きだったのを思い出して、ここはちょっと忍びないと思ってゼリーを身代わりに差し出した次第です。
0私も何書いたのか忘れちゃったので、言われてみてそういう内容だったのかあ、と思って今慌てて本文を見に行ってなるほどと思って感心してたとこだったんです。そうなんです、悲しくてやりきれなくてフォーククルセダーズなんですよ。タイトルも一応回収しとかないとね、自治会長に怒られちゃうんでそこはね、きちんと近所迷惑にならないように。
1こちらこそはじめまして。清き一票をありがとうございます。 情念というか怨念というか因縁というか、なかなかこう築き上げていくのは大変で、耐震構造も気にしなくちゃならないし、フラット35は残念ながら審査で落ちちゃったのであとはもう銀行に泣きつくしかなくなっちゃったんですよね。 頭脳が柔らかいのはたぶん、最近とにかく暑くて冷奴ばっかり食べてるせいだと思うんですよね。頭ん中全部豆腐になっちゃった。ゴマダレがおすすめ。
0ぐいぐい引き込まれてしまってどこへ連れていかれるんだろうと思ったら地獄でした。 あっ、ネタバレしてしまいました。すいません。 さいきん、病み上がりなのですけれど、思えば、日常ってそうだったな、と思ったり 良いのか、悪いのか。ともかく、手腕、にやられましたね。 今音源探せないですけれど、レディオヘッドってバンドのブンブン低音が鳴ってる・・・ なんだっけ失念しましたけれどダークなね、音楽をかけながらまた通読したいと 思います。気になったところが出てきたらまた書きます。
0地獄ですよ地獄。くだらない駄洒落ばかり言ってたら地獄に落ちるんですよ。神様はちゃんと見てるんですよ。 レディオヘッドはよく知らないんですが、あいにく私は横浜銀蝿派なもので湾岸通りをバリバリなんですよ。そんで「よこはまぎんばえ」と打ち込んで何で一発で変換で出て来ないってちょっとそれどういうこと?ってクレーム入れようと思ってたとこなんです。またぜひ、ブンブン言わせてください。15の夜、盗んだバイクはメルカリに。
1隠居が偉そうに言うのもなんですが、ここ1ヶ月くらいここの作品観てきたけど、 妻咲さんが一番今後伸びそう。現在の作品に満足しなければ。 そんな雑感です。作品へのコメントでなくてすみません。
0ありがとうございます。ちゃんと名前を出して投稿してるとこういうことを言って貰えることもあるんだなとわかったので、これからは名前を出して、あんまりふざけたのは出さないようにしようと思いました。とはいえ、ふざけたの出せるのってここぐらいしかないから、どうしようかな。私にとっては貴重なオアシスなんですよね。
0おはようと言えない朝というのが示唆的です。何があったんだと。内容を空想させられるからです。「そして今日も」からちゃんと詩の中では意は尽くされています。しかし地獄の意味を考えるとき、そんなに簡単に判断してはいけないと思うのです。
0特に何があったというわけではありませんが当たり前にあった日常が誰のせいでもなくずれてしまうということはあると思います。どうしてそうなってしまうのかというとそれが地獄の解釈、そこに繋がります。この詩の主人公は何かが欠けているようです。しかもかなり大きく。
0