白い血がおちえ
靄は涙の上を走る
ただきみは
こちらを見ている
重くしめった風
長いまつ毛に
覆い被さると
きみは
軽々と瞬いて
ただきらきらと
輝いている
コンクリートの池を
赤いフナが泳ぐ
鱗にダニ
身動ぎもせず
水ばかりこぼれてゆく
開けられた穴から
音のない夜に
身を任せていると
骨張った翼の
その間が
ぱつんとはじけて
からっぽの肺ばかり
つめたくなる
かたい額を
そっと撫でていると
爪に温度ばかり
こびりついて
囲いの中は
吐息ばかり
廻っている
愛を私に与えないで欲しい
私はもう
どこにも行けない
夜が
こんなにも暗いと
どこかへわたしが
いこうとするから
電灯はつけたまま
じっと天井を見ていると
光も
意味をなくして
私はそっと
淡くなってしまう
作品データ
コメント数 : 5
P V 数 : 1156.8
お気に入り数: 0
投票数 : 2
ポイント数 : 0
作成日時 2023-07-10
コメント日時 2023-07-15
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
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閲覧指数:1156.8
2024/11/21 21時27分09秒現在
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こんにちは。 どこか寂しいような、虚しいような、独特な感じの詩ですね。 6連目がこの詩の主題となっているようですね。それに伴う感覚をその前の5つの連が、巧みに表していると感じました。 タイトルの「毛細管現象」ですが、水ができるだけ縮こまろうとする表面張力によって、極めて細い管に吸い込まれてしまうということが、末尾の 「私はそっと 淡くなってしまう」 というところとイメージが重なったのかなと、そんなふうにも思いました。 繊細な感性の詩だと感じました。
0やっぱ近代文学的なる要素があるように思うんですよね。いや、近代文学的ってなんだよって言われると困るんですけど、明治大正戦前にあった文学って、個人という概念って何よを追求する文学があったと思うんですよね。そこで発見されたというか造語された語句は間違いなくあって、その当時はそれら語句に具わっていた意味が生きていた。意味が死んでいなかったと、そう思うんですよね。で、本作なんですけど、涙や風や水や夜の語句があるなかで、私が注目するのは、 > 愛を私に与えないで欲しい >私はもう >どこにも行けない の「愛」。ホント、私は教養がないのに教養的なことを説こうとするからめっちゃ飛躍しちゃうんだけど、ここで使われる「愛」から、先に述べた近代文学的なる追求によって「言葉の意味が生きていた」という同種の感を受けるんですよ。生々しい、純度が高いと言い換えることも出来る。それって、もしかしたら「現代詩」と云われる分野だからこそ可能な、追求されるべき言語表現なのかもしれない。前衛ではなくて、もう一回見直すことから生まれる現代国語(言葉の意味)、みたいな。そういうコンセプトをこの作者が意識してやってるわけではもちろんないだろう。けれども、作者の作品群を長く読んできて思うのが、語句の組み立てに対するスタイルの特異点、これについて、誰かが論評するべき価値があるように思っていたんですよね。それが、今作を読んで、こうコメントを書いてみて、ちょっと自分なりにみえました。
0自分に繊細と言える感性があるかは分かりませんが、コメントありがとうございます。
0描写が綺麗だなと。あきらさんは流石にもう書き慣れてると思うけど。ずっと、自分自身(個)みたいなものを追求してらっしゃる書き手さんな気がしてて、その身体感覚から滲む心象風景の描写が巧いなと思ったし、その「個」を突き詰めた先に、どんな景色が広がるのだろうと、いつか見せて欲しいなと思いました。
0常に変動する自己というものを、その時々によって必死に書き留めては、また変わってゆくそれを追いかけ続けています。果てがないことです。けれども書き続けていくことによって筆力は良くも悪くも上がりますから、書けるものはどんどんと、深まっているような気がします。
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