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帰らないものたち
いつも泥濘に嵌められる子どもでしたから、もしそこへ戻るならば、新宿とでもいいから、心中したいですね。 せっかく心中するのだから、あなたは信頼に足る人ですか。どうせなら誰かを信じて死にたい。それはあなたでもメイド喫茶のナナちゃんでもいい。いいのですが、もし信じさせてくれる人がいるなら、それは少なくともあなたのを見目をして、あなたの心を持ったひとがいい。 信じ抜くことはできますか。 あなたを信用することは死後の救済を信じるよりも、移り気な子猫を信じるよりも難しい。それは誰の問題なのだろうか。 ああでも、信じ抜くことはできないのだった。あなたが一瞬でも、もう少しだけ生きてみてもよかったと思えば、負けだから。優しい金木犀の匂いを嗅ぐでしょう。苦しみよりも愛が勝ることをそこで悟るでしょう。あゝ他のいとしい人を、思い浮かべているのだろうから。 信仰と不信心の間に揺れてしまうのは、弱く、傷つきやすく、脆いから。あなたに死ねと言われれば消え去る霞草です。わからない、わからないでしょう。わからないから一人で、いつも一人で・・・ どこに行き、誰に会い、いつ生まれたらーーと思ってもそれは、感傷に過ぎない。だって行帰るのは水と季節だけだから。その特権を持たないものたちは、憧れ、そして、裏切られてゆく。理想の人間になる道の途中にやはらかな心だけを置き去りにして。
帰らないものたち ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 902.4
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2017-12-05
コメント日時 2017-12-23
項目 | 全期間(2024/12/22現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
表記に関して、〈あなたのを見目〉と、〈やはらかな〉という、文語体の使用部分が、少し気になりました。 切実に、〈あなた〉を信じたいのに信じられない心情が綴られていく。〈あなた〉を、愛しい人(片思い、あるいは、不実な恋人)として読むのか、もっと大きな・・・神とか信念、未来といった観念的、精神的な存在と読むのか、両者が重なっていると読むのか・・・ 新宿、という場所というか、トポスの持つエネルギー、地霊のようなものを、もっと徹底的に新宿らしい細部や情景を「取り出す」「ちりばめる」ことによって活用するか、あえて内面にだけ目を注いで、心情の波や、不安がいかなる形象(心象風景)を伴って現れるのか・・・ どちらかに明確に舵を切った方が、より読者にインパクトを以て伝わるのではないかと思いました。 信じる、信じない、信じたいのにそれが出来ない、という切実さは、言葉を重ねていくよりも、その不安な心情に映る外景や、不安な心眼の見つめる内景に、より如実に現れるのではないか、という気がします。 信じる、ということの不能性そのものに触れる作品として、ドイツの廃墟文学と呼ばれる一群を思い出しました。 ハインリッヒ・ベルの、蝋燭を聖母に(だったかな、うろ覚え)等が印象に残っています。
0まりもさま コメントありがとうございます。 まず 《あなたのを見目》ですが、誤字です 読みづらくてすみません。 新宿というモチーフについて もっとちりばめる or 心象風景で表すというのはすごくいいなあと思いました。個人的に新宿に行くと心がざわざわしたりとか色んな感情が湧くので私は後者でいきたいと思いました。廃墟文学は初めて知りましたので是非触れて見たいと思います。信じる 信じない が自分の創作のテーマだと思っているので 廃墟文学、紹介して頂けてうれしいです。色々読んでみます。コメントありがとうございました。
0あなたって誰かなぁと思いました。読み手に話しかけてるのかな。二人称の丁寧語は、僕は、あんまり好きじゃ無いです。対象があんまり良く分からないからです。作中ある人間か、読者か、そのどちらにも効くようにか、もしくはそれ以外か。 あなたと語り手の断絶みたいな所から、わかるわからない、愛している愛していない。あなたを見ているわたしをみている。わたしをみていない。あなたをみていない。みたいな感じ。信じる信じない、信仰する、信仰しない、一緒に死ぬ、死ねない、生きたい。あなたがいないと生きられない。死ねる。別に生きられる。死ねない。みたいな感じ。常にアンビバレンスで、水みたいだ。心は硝子であるよりも、水であった方が割れないし、生きやすいだろうと思いました。
0百均さま。 「心は硝子であるよりも、水であった方が割れないし、生きやすいだろう」という言葉にハッとさせられました。私の作品全体を貫くテーマかもしれません。これからは水のような心の作品も書いていきたいと思わされました。素敵なコメントありがとうございました。
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