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冷たい青
海は捻れている 記憶の中の海は 何故だかいつも灰色の空から 雨が落ちている 「じゅんかん」 と君は呟いて 漣の音に 和毛に覆われた 猫の耳を澄ました 月の引力 波の満ち引き、その1度、1度は 根源的な事象なんだろう 僕は君の寒々しく痩せた肩を美しいと思っている しかし 海は捻れている 海鳥達が黒い影となって 灰色にぼう…と光る空を舞っていた 君は少女から少年に変化する あぁ、君は僕の良く知る少年だ その白い滑らかな胸も 痩せた手足も 少し上がり気味の口角も 長い首も 形の良いペニスも 僕が愛の印をつけて回った 少女=少年の変化は 僕の欲深さが引き起こした変化に違いない 「素敵なことさ」 僕の呟きは自嘲のように響いただろう 砂浜は絶えず洗われながら しかし海の猥雑に濡れている ましてや、海は捻れている 君は言う 「血液も、小便も、精液も、愛液も、涎も、涙も」 みんな、元は海水だった そう君は言う なら、君への愛の記憶もきっと この捻れた海に溶けるべき光のようなものなんだろうか 振り向いた君は、相変わらず見慣れた少年で しかし、その顔は黒く塗りつぶされていた それでも、僕には、君が僕の好きな細く吊った目をしていること 唇を綻ばせていることがわかった 波は世界の不条理のようにいつまでも脈打ち続け 海鳥は鋭い疑問符のように空を素早く飛び回り 灰色の空の中空あたりに おそらく南中する太陽があるのだろう その辺りだけがぼんやりと光っていた そして海は捻れ続けていた 「愛って何だろうね」 「君の涙は甘いのを知っているよ」 「少女の乳房も、柔らかな下毛も、甘い肉も。君の痩せた腕も、細すぎる腰も、体格のわりに太い首も、重たい頭も、少し苦い精液も」 僕は、愛しているよ 愛は殺害とワンセット。僕の手は既に君以外の無数の無数の無数の人のような物を殺し続けたから。この手は見えない血に濡れているのを知っていた。 それでも、愛しているよ そう呟いて、僕は彼の手を引いて、捻れた海にざぶざぶと入っていった 君の笑い声を聞いた 捻れた海の 奥の 奥の 奥を目指した 根性の無い僕の声はしゃがれ、手足は重く、冷たさが痺れから麻痺へと変わっていく しかし、彼は、僕の手をぎゅっと握りしめたままだった そこで意識は途切れる 僕は都内のスターバックスでソイラテを飲みながら、冬の大通りを見つめている そこで意識は途切れる 僕は自室で漫画を読んでいる そこで意識は途切れる 僕はロックのライブコンサートの入場列に並びながら、遠くに見える鼠がかった青緑色の海を眺めている そこで意識は途切れる 願わくば 眠れ 捻れた海の底の 姉妹のように 兄弟のように 冷たい青は 美しかったよ
冷たい青 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 927.0
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2017-12-03
コメント日時 2017-12-16
項目 | 全期間(2024/12/22現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 0 | 0 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
映画を見るような、それも、かなり長回しの映像が流れるような前半と、かなり急速に、強引に、映像を遮断しては挿入していく後半。 顔を塗り潰された少年のイメージが、そこに深い黒い穴のように迫ってくる感覚がありますが
0途中で送ってしまいました・・・ 美と殉じてしまいたい、という衝動なのか、君、を独占していたい、という感情を極度にみなぎらせたゆえなのか・・・ 君を、君のすべてを愛しているよ、と呼びかけるけれども、語り手は君との性愛の時間を愛している、と呼びかけているようにも読める。 君、は、エロスの化身なのかもしれない。自意識を忘れ、自らを離れさせてくれるもの、意識を陶酔に導いて、生きる痛みを麻痺させてくれるもの。そんな境地をもたらしてくれる、エロスへの、切ない告白、片想いに近いような独白なのではないか。 少女であり少年であるかのような中性的存在であることも、後に天使として描かれることになるエロース=アモールへの連想に誘われました。
0誘う作品でした。
0人間というよりは獣人間の恋みたいだ。というか、「漣の音に 和毛に覆われた 猫の耳を澄ました」ここでそう思いました。人よりも性に近いからかもしれません。僕が性に対してどうでもいいものだと思っているからかもしれません。多分人間同士で描くと、生臭さく思ってしまうのかなぁと思うのですが、獣だとそうじゃないと思いました。性に忠実な感じがするからという偏見で、それは僕が人間であると多分無意識に自分が思う以上に思い、差別しているから。 >願わくば 眠れ > > >捻れた海の底の 姉妹のように 兄弟のように > > > >冷たい青は 美しかったよ 張り詰めたようなラストで今朝の7時ですが、目が覚めました。震える。
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