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watertime氏「婚礼」
3連目と4連目がやや説明的なのを除いて、他の連は素晴らしかった。 >爽やかで澄み切った顔に光が映え >緑の群れが彼女を祝福するように萌えている >川に揺れる水草の緑の流れと煌きが >彼女の黒髪に嫋やかな模様を作りだす 上から3連目と4連目なのだが、特に3連目の1行目は視覚的な情報しかないという点に於いて、説明以上の意味を受け取ることができなかった。他の連は聴覚的であったり、重層的であったために、視覚的な情報しか書かれていない3連目と4連目が引っかかってしまう。そこは素直にどんな女性であるかを具体的に書かれたのだろうと思うが、僕は読者の代表ではないが僕としては正直、どんな女性であっても構わないと思うし、顔を消した方がより神秘的なイメージを持たせることができたんじゃないかと思う。もっと抽象的にするか、ないしは重層的にする。すなわち、視覚的な描写の中に、聴覚的、嗅覚的、味覚的、触覚的の内のどれかのイメージを忍ばせる。川の中に入っているのだから触覚的な描写が活きるだろう。聴覚的な描写では、他の連で十分に使われているため、ややしつこいかもしれないし、嗅覚も味覚も川の中ではしっくり来ないことだろうから、触覚的なイメージを乗せて欲しい。もしくは、主観的なイメージを入れて欲しい。 >緑の群れが彼女を祝福するように萌えている 3連目の2行目だが、これは良い。祝福するように、というのが「婚礼」に繋がっているし伏線となっている。 >そのひとの婚礼は間近だ ここで伏線回収となっている。ここで初めて、婚約者ではないのだなと知る。そこからの勢いは凄いよ。失恋の痛みがひしひしと伝わってくる。愛すべき…。これは辛い。 >緩やかな記憶の流れをくだり 6連目の2行目のこれは、川のイメージに繋がっている。ここで1連目に書かれた「ぼくの川」の伏線が回収されている。ぼくの川とは、ぼくの思い出であり、思い出の中でくだっていく。落ち込みが非常に伝わってくる重層的な描写が良い。 > 彼女は水を手に汲み、それを飲むと眼を閉じて伸びをする すごく好きなんだなぁと伝わってくる、愛に満ち溢れた描写。 風の鐘はチャペル挙式の鐘でもあるのだろう。何気ないけど、すごい。ダリのダブルイメージを自然に書かれている。二つのイメージを同時に書いている。 そして、最後に >夢の中のように飛び始めた もはや、夢…。飛び始め、手も届かぬほどに遠くへと行ってしまう。置き去りにされてしまう。残された、ぼくの川。 短いながらも、短編小説並の満足度を得た。それだけに思いが詰め込まれているのだろう。
watertime氏「婚礼」 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1056.5
お気に入り数: 1
投票数 : 0
作成日時 2022-12-25
コメント日時 2022-12-28
5票入れるつもりで書いたのに過去作品だったので5票が反映されず……。もっと早く書けば良かった。
1類さん、拙作を丁寧に読み解き下さり有難うございます。 「婚礼」が批評されるとは思いもよりませんでしたので、とてもうれしく思います。 3連目と4連目のご指摘については、今後の詩作に是非とも参考にさせていただきます。 ただ、今作は短い詩ですので、やや難しい試みとなったかもしれませんね。 しかしながら、作者の気が付かなかった読者の受け止めであることは重要だと考えています。 「ぼく」の個人的背景については、概ね、類さんの読み解いた通りになります。 この点、拙作では省略が多いのですが、よく拙作の人物造詣の秘密を明確にして下さいました。。 >短いながらも、短編小説並の満足度を得た。 私は詩作においてストーリーを重視しておりますので、作者冥利に尽きるところです。 有難うございました。 ポイントについては、私自身、気にしておりませんので、類さんのお気持ちだけで感謝です。
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