いつ頃から降り出したのか
さっきからずっと 雨の音がしている
蜂蜜を垂らしたみたいな あめ
私は、ビル・エヴァンスの
静かなジャズを聴きながら
読みかけの本に栞をはさむ
タイトル 匿名
この街の一画で
世界はいつだって、私の好きなように回る
私は世界を選択するが
世界は私を選択しないのだ
傘をさす人々、点滅する信号
雨水に混ざってカラフルな泥
その光に映った
琥珀のような刹那
呼吸すれば 飛んでしまう
薄い銀のせい
私の周りの透明な壁が
六枚の鏡になった
通りを歩く人々が消え
あとにはただ
パッとしない灰色の私
私たちしかいない
昔から
本を読むのが好きだった 私
夕飯の時間になっても
終わらない 時間 読書の時間
一冊の本は 世界への窓だった
モモ
時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にとりかえしてくれた女の子の不思議な物語
事実私は、時間を追っている
……追われている
繰り返しの時間
蛇行した時間
カットガラスに透かした壊れやすい光の機械
喋る灯芯草
いつ頃から絡まってしまったのか
世界は次々に電線で結ばれてゆく
人々は思い思いの孤独を画面に映している
目をつぶっても
終わらない 不安 存在の不安
自分専用のキャンプファイヤー
闇に浮かぶ幾億の灯
それらは千差万別で
七色に輝いている
けれどよく見たら
全部長方形だった
目をつぶっても
終わらない 不安 存在の不安
自分専用のキャンプファイヤー
都会の公園に一人の少年がいる
見えないゴールに向かって
サッカーボールを蹴っている
闇に浮かぶ 幾億の 灯
闇に浮かぶ 幾億の 幾億の 灯
闇に浮かぶ 幾億の 幾億の 幾億の 灯
時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にとりかえしてくれた女の子の不思議な物語
目をつぶっても 目をつぶっても 目をつぶっても 終わらない 終わらない
目をつぶっても 目をつぶっても 終わらない 終わらない 終わらない
目をつぶっても 終わらない 終わらない 終わらない 終わらない
蹴り出されたボールは
世界のあらゆる凹凸にぶつかって
無数の残響が斜陽に溶ける
作品データ
コメント数 : 8
P V 数 : 1244.1
お気に入り数: 0
投票数 : 4
ポイント数 : 4
作成日時 2022-09-07
コメント日時 2022-09-12
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 2 | 2 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 2 | 2 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 4 | 4 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 2 | 2 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 2 | 2 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 4 | 4 |
閲覧指数:1244.1
2024/11/21 20時11分31秒現在
※ポイントを入れるにはログインが必要です
※自作品にはポイントを入れられません。
タイトルが途中で挟まるの、いいですね。
1ビル・エヴァンスの2連目。ぼくもほぼ同じようになったことがあります。主題部があって、中間部は即興的展開。後半は演奏者の掛け合い。ジャズを聴いてるような感じで読みました。読書とジャズと意識の彷徨。勝手な解釈です。(_ _)
1ありがとうございます。 この詩は私が風景のスケッチとして書いた短い文章を一度戯曲化し、さらに詩として再構築した作品です。そういういった意味でパフォーマンス的な部分や即興的な部分を汲んでいただきとても嬉しく思います。
0ご感想、ありがとうございます。 あまり意識せずに書いておりましたが、言われてみると内向⇒外向の流れがありますね。 私自身いつも孤独に飛び込もうとして、しかし同時に孤独には耐えられないというような気質があり、それが詩に現れているかもしれません。
0ありがとうございます。
0かなりしっかり読んでくださり、ありがとうございます。参考にさせていただきます。 私の作品でよく指摘される点として《読まれることを意識している(良くない意味で)》というのがあります。この作品にも恐らくそれはあります。 戯曲として書いたものを詩に再構築したというのもありますが、より正確に言うと、私はいつも読まれないことの恐怖を抱えて書いているということだと思います。
0全部蜂蜜に絡め取られた風景だとしたら面白いなと思いました。孤独も不安も甘美だけど少しエグい。灯も闇も同じ。サッカーボールだけが白い。少年は世界の外に手紙を出そうとしているのかもしれない。そんなこと想像しました。わけわからないこと書いてすみません。
1ああ、モモが、時間泥棒が出て来る。少し昔を懐かしく思いました。しかし今でも読まれていますね。終わらないのは不安だけだろうかと思いました。もしかしたら、希望に不安を見出して居るのかもしれません。だとすると何か不吉な事の契機を警戒して居るのかもしれないと思いました。存在の不安は、ワールドワイドなのだと思いました。
1