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ひとすじの海
何か大切なことを見つけたくて海を見に行った 見つけたことといえば 海は一つのさかなということだった 体温のようなあたたかい風が吹くたびに 水面(みなも)は金色の鱗になった わたしはそれをじっと見つめていた わたしの瞳が金色のビー玉になった頃には 体が波にさらわれて 海のさかなになっていた 小さな小さな 見習いのさかなだ 大きなさかな は じぶんの意思をもって動き出す わたしの意思は無意味なものになった 体が鱗になっていくにつれて わたしの重力が逆さまになった ひとりの少年が見える きみも海の見習いになればいいよ と手を伸ばす 自分の体に残るなみだがひとつ残らず空になった わたしは 自分のなみだが青かったことに驚いた なみだの青がやがて滲んで 空の盃をいっぱいにした頃 夜が始まる さよならをした心の切れ端が 彼方に流されていく すべて あたたかい胎盤のように わたしの中にあったのだった それに気づくことが わたしの旅のはじまりだった 息苦しいほどの水泡に包まれて 指先はひとすじの線を描く
ひとすじの海 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 575.9
お気に入り数: 1
投票数 : 1
ポイント数 : 2
作成日時 2022-09-04
コメント日時 2022-09-05
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 2 | 2 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 2 | 2 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 2 | 2 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 2 | 2 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
小さな魚になった自分が、海という大きな魚の中で泳いでゆくという構図に「スイミー」を思い出しました。静かで透明感のある、素敵に美しい詩だと思います。
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