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歩く
輪郭線のない肺がずっとある ちか ちか ひかる 雨だれのそばまで 歩いていく しめやかに消し去られ 燃えつきた時間と 皮膚との隙間でふるえている透明な呼吸 あたりの空気を食べるように 不織布のマスクから口をだす 照明のまばらな社内 PCの画面には実体なき蝶の翅が映る 羊歯の茂る森では 人は自然の一部であるという 手のひらで弾ける 首すじをつたう 水 エタノールのしろい吐息のよう (病の言葉は反復され 当然のように白昼に充満している) テレワークがあたりまえになったこの頃 静かに浅い眠気が日に何度かおとずれる 通勤のときの道草 色づいたケヤキの巨木にふれてみた 堂々としたそのたたずまいに身を正した 腕時計を見る 目覚めよ 階段をくだり 廊下を進む 靴音は雨だれの響き 総務課で郵便物を受け取ったら 小声であいさつをすませた 進め ありふれた日に書類の束を仕上げていく 新しい熱病も 希薄な酸素も超えていく 真摯な思考は宙をただよう鏡 彼方の青い花園まで歩く キーボードを操作するわたしと 別の意志を持っているかのように しなやかな指先は森のなかで蝶のゆくえを追う
歩く ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 953.8
お気に入り数: 2
投票数 : 1
ポイント数 : 23
作成日時 2022-08-20
コメント日時 2022-08-23
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 5 | 5 |
前衛性 | 2 | 2 |
可読性 | 5 | 5 |
エンタメ | 2 | 2 |
技巧 | 4 | 4 |
音韻 | 2 | 2 |
構成 | 3 | 3 |
総合ポイント | 23 | 23 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 2.5 | 2.5 |
前衛性 | 1 | 1 |
可読性 | 2.5 | 2.5 |
エンタメ | 1 | 1 |
技巧 | 2 | 2 |
音韻 | 1 | 1 |
構成 | 1.5 | 1.5 |
総合 | 11.5 | 11.5 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
最終連が好きです。真摯な思考こそ宙を漂う鏡、いい言葉ですね。蝶は魂の象徴だと昔から言うそうですが、実直な生きざまが詩に宿って、ちゃんと生きている人の息吹を感じ、気持ちの良さを感じました。詩はちょうちょかもしれないですね。
1深尾さん、この作品を読んでよかったです。真摯であること、 身を正すということ、美しく僕もありたいと、そう思いました。
1「羊歯の茂る森では 人は自然の一部であるという」 印象的なフレーズですね。勿論、一番始めの輪郭線の無い肺がこの詩の骨格なのかもしれません。しなやかな指が森のなかで蝶のゆくえを追っている。この詩には幻想では済まないリアルが有ると思いました。
1ある有名詩人の詩集を読んで、すぐに書いた作品です。先にセンテンスがあって、それに物語をつけるように詩作しました。なので、こんな風になったのは偶然です。2次創作なのかも知れません。よって実直ではないのです。極悪になりたいです。
1>身を正すということ、美しく僕もありたいと、そう思いました。 みうらさん、まよわず極悪をめざしてください。
0>このさざなみがうねりになって巨大な壁をぶちやぶればいい。 さざなみが、おならになってばくはつしそうです。
0>「羊歯の茂る森では 人は自然の一部であるという」 >印象的なフレーズですね。 お目が高い。目立ちませんが、いちおしのポイントでした。
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