熱帯夜に寝返りを打てば
焦燥は紅蓮の砂漠を転げる
がばり、起きて一筆啓上詩の用心!
喉がカラカラになった弓張り月の
棘が刺さって薊(あざみ)になったのだ
なによりもあの熱砂に勝つために
私は水を捧げねばならない
嘘の扉を千枚立ててあなたに開けて頂きたい
私はあなたの心を万華鏡のように想像しながら
花の煮込みのアペリティフを出し続ける
花好みのあなたの為に
私はシャボン玉を吹くようにほらを吹くちいさな菫です
私はあなたを酔わせるあなたの想像の花です
私はあなたの心を引っ掻く猫の爪のある花です
あなたを迷路に迷わせて
私は地に芽吹き
青空から降ってきた天使の歌を聴いて
それを持て余すタンポポです
峠の魔女の哀しみと孤独な背に涙を一筋落とす鬼百合です
そんなほらを吹く私は艶やかに
光を灯すように一夜だけ咲く月下美人です
闇を配下に従えて白く輝きたい夜です
ああ、あなたに手折られたい
ああ、私を連れていって
そんなことを囁くのは恥ずかしいと
白百合を隠し窓際に意気軒昂に
青い花瓶に向日葵を飾ろうか
あのあぜ道から噴き出た
痛みの曼珠沙華になるまえに
明日は粗大ごみの日
ショーマストゴーオンとね
靴下を繕う代わりに
さあ網をかけてあの月を盗もう
あの月は私の秘密を知っているから
あの月が孤独に心が錆びるまえに
独白的恋文は恥ずかしい夜長の手紙です
誰にも届かないからそっと息ができる
そんなちいさな私の絶望を
ひんやり冷たい花のシャーベットにしてあなたに捧げる
作品データ
コメント数 : 7
P V 数 : 990.2
お気に入り数: 1
投票数 : 1
ポイント数 : 6
作成日時 2022-08-01
コメント日時 2022-08-30
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 1 | 1 |
エンタメ | 2 | 2 |
技巧 | 2 | 2 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 6 | 6 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 1 | 1 |
エンタメ | 2 | 2 |
技巧 | 2 | 2 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 6 | 6 |
閲覧指数:990.2
2024/11/21 21時31分27秒現在
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花好みのあなたのためにですか。手折られたい願望。痛みの曼殊沙華ですか。死を象徴して居るのかもしれません。月との交感、あなたへの手紙。最後の花のシャーベットが秀抜だと思いました。
0ああ、あなたに手折られたい ああ、私を連れていって ここがキモですね。
0曼珠沙華は地獄の血が噴き出ているような印象があります。絶望も汚く差し上げるのではなく美しくあれかし、そういう思いがあります。花のシャーベットにはそういう思いを込めて。 ご感想ありがとうございます!
0>がばり、起きて一筆啓上詩の用心! 遊び心を忘れない、作者自ら楽しんで創作する。こういったマインドセットって素敵じゃないですか。 ワードセンスになにか天性のものを感じます。 この作品にはあざとく理想化された女性性と言いますか、戦略的なおネエ、作為的な「女神」がいる。
0天性なんて言ってくださって感激です。作為的な女神、そうですね、いろいろ変身して様々な立場で書く習慣です。ありがとうございました。遊び心で詩を書くのはすきです!
0この詩は読み手に様々なイメージを喚起してくれる詩だと思います。 「はなへんげ」というタイトルに相応しい色とりどりの花たちと、そこに投影される「私」の「あなた」に対する、一見混迷しているようで、その実、とても一途な想いたちのマッチングが、絶妙ですね。情熱的なだけではなく、時にせつなく、時にユーモラス、そして全体を通して洒脱な比喩表現が満載で、読めば読むほど「私」のめくるめく世界に引き込まれてしまいました。
0過分なるお褒めの言葉を下さり恐縮です。ありがとうございます。
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