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夜の雷光
夜にさえも見放されて、 飛び起きておもう かつて惹かれた女たちを そしておれをきらった女たちを 氷上の稲妻みたいに去ってしまったなにかが、 おもての車のポーチを照らす いつまでもおれをはなれないかの女らのこと、 眠れないからだが求める、皮膚の安寧 あるいは空腹の技法かなにか、 ともかく道のわからない時間があまりにも多すぎて、 じぶんの痛みさえ、遠い過去みたいにインターの出口をさ迷ってる なにしろ、この時間には終わりというものがないから、 去ってゆく車の窓が怪しく光りだす 過去の高速がすべてをかつて見た夢と融和する まるでその夢のなかで、夢であることを悟ってしまったみたいに 高橋恭司が撮ったブコウスキーのポートレイトを懐いだす 何年もまえから棚にある写真集が時折、おれの手のなかにある 晩年のかれの顔の皺から、おれの手の皺に至るまで、 発光する歳月がおれたちを通り過ぎたものだが、 かれは栄光を勝ち取って、 おれは負けつづけ、 やがて稲妻に打たれる 男というものは母親から女たちへの接し方を憶えるとさっき読んだ それならばおれは失寵と疎外と黙殺を学んだ 新神戸駅が驟雨のなかに建ってる この詩を書くために駅まで歩き、 そして帰ってきたおれには、 おれのような男にふさわしい死をおもうことの、 ほのかな愉しさだけが千年の雷みたいに 窓を照らしつづける、 ──黙れ。
夜の雷光 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 961.7
お気に入り数: 3
投票数 : 2
ポイント数 : 6
作成日時 2022-04-26
コメント日時 2022-05-02
項目 | 全期間(2024/11/22現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 2 | 2 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 2 | 2 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 2 | 2 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 6 | 6 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 2 | 2 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 2 | 2 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 2 | 2 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 6 | 6 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
- 紹介 中田満帆/夜の雷光 (三浦果実)
誰のために書いたわけでもなく、自分にひとつ傷を切りつけたかのような詩で、付け足して想像していく詩じゃないんだなと思いました。ただ書かれていたことを何度もなぞっていくことで男の傷がわかるのかなと思いました
1純粋に詩を書く為に書いているのであって、 SNSとは全然違う方向から出発した作品群だと思っています。 詩を書く動機や環境は人それぞれで、見合った持ち味があると思うのですが、 中田満帆さんのそれは強くて人間らしい言葉ですね。私の中では。 いつかぽきんと芯が折れてしまったりしないでしょうか。 そういう不安を抱かなくていい所が好きです。
1女性の接し方を母から学び、この詩の話者にとっては、それが失寵と疎外と黙殺。凄絶。僕個人の世界線とは当然違うことがむしろ痺れる。ドライで干からびていくような感覚。それでいて「黙殺」という語彙が、最後の詩的な一節「ほのかな愉しさ…」を封じる結語「黙れ」にも繋がっている。読み手との間に決して埋められない溝、そして隔てられた壁があるのに読みやすく、読者を突き放していない。そこに筆者の成熟と技量、技術を感じ取ることが出来る。悪い意味ではほぼ何も指摘するところのない良作。傑作と呼ばないのは、僕の見える世界と筆者の見える世界があまりにかけ離れているからか。その距離を補って余りある描写がここにある。一票。
1男というものは母親から女たちへの接し方を憶えるとさっき読んだ それならばおれは失寵と疎外と黙殺を学んだ 私は慈愛を学んだでしょうか。
0それならばおれは失寵と疎外と黙殺を学んだ ぼくは何を学んだか思いつきませんでした。
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