ししおどし、鹿威しと書けば
厳めしい、いかめしいと書けば
柔らかく、鍋で上手く炊けた
昨晩のイカ飯のようである
獣を威すためのものであるが
実のところ、獣たちは最初こそ
恐れるがすぐに慣れてしまい
風流を解する鹿や猪の文化人は
竹が岩を打つ、あの音がなんとも
小気味良い、などと言い出した
困ったことに我が家の庭にそうした
鹿や猪、果ては熊までが子を連れて
或いは老いた父祖を連れてくるのだ
なかには獣のかみさままでいるから
秋だというのに桜や梅が咲きほこり
庭では猿がにやにや煙草をふかす
そうして、秋の小春日和ともなれば
どやどやとやってきてやがてうつうつ
ひと塊の毛玉になって眠りはじめる
私もししおどしなんですよ、と案山子が
鳴子を鳴らしだす、イカ飯をつまみながら
好きにしろと厳めしい面を捨て共に眠る
遠くでししおどし、目覚めてみれば
庭もないアパートの二階の私の部屋
街路からこちらを見上げる鹿がいた
またおいで、と言えば肩をすくめて
悲しそうに角を降って踊りさるのだ
作品データ
コメント数 : 7
P V 数 : 1194.1
お気に入り数: 0
投票数 : 2
ポイント数 : 16
作成日時 2022-03-24
コメント日時 2022-03-27
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 2 | 2 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 3 | 3 |
エンタメ | 3 | 3 |
技巧 | 4 | 4 |
音韻 | 2 | 2 |
構成 | 2 | 2 |
総合ポイント | 16 | 16 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 1.5 | 1.5 |
エンタメ | 1.5 | 1.5 |
技巧 | 2 | 2 |
音韻 | 1 | 1 |
構成 | 1 | 1 |
総合 | 8 | 8 |
閲覧指数:1194.1
2024/11/21 22時21分25秒現在
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すごく好きです。まず入り方がするっとしていて詩に中に流れ込むように意識が入っていく。言葉遊びが詩世界の広がりに無駄なく繋がっていて、かなり飛躍があるのに同時に流れるような連続性も感じられました。イカ飯を後半でもう一度回収するところがいいですね。最後は現実に引き戻されつつも、見上げる鹿が幻想の残滓のようで、詩が終わっても魂の一部が少しだけ詩の中に取り残されているような感覚を覚えました。
0こんにちは。こうした刺激のない作品はあまり目がつかないだろう、と思いつつ投稿しましたがとりあえず読者がおられたようで何よりです。 私はあまり環境問題などに関心がないのですが、里山、と言われていた緩衝地帯が消えてまちなかに獣たちが現れてきたことは、この何年か気にしています。実際のところ、この詩と違い彼らは一部の観光地域以外では歓迎されない田畑を荒らし時にひとを傷つける侵入者です。だから、鹿なんか撃たれちまえという意見もわかるんですね。私も美味しく頂いてきました。何年か前にある鹿狩りの方が東日本大震災後に自らが狩った鹿が汚染され、食べられないとわかったときに、食べないものは殺さない、と猟を辞められたとききました。そのときの彼は自らの生命も自然の中で鹿や熊に差出すから、狩がで来ると考えてきたのでは、と何となく思ったんですね。この詩はもうそんな関係には戻れないのではないかと考えながら書いたのかもしれません。殆ど後付けの戯言ですが、返信に際してそんな事を思いました。
0タイトルからイメージが引っ張られたのかもしれないけど、水彩画のようでした。
0現実と空想を行き来する旅が上手にまとめられていてするっと気持ちよく読めました。鹿威しとイカ飯が上手なフックになっていて。昔の古き良き縁側に面白き人たちの面々が集っている鳥獣戯画の様にも想像しました。
0この作品が絵画としてイメージを残したのであれば、一先ずは僥倖です。
0鳥獣戯画の如く微苦笑が滲み出る可笑しさがあるならありがたい限りですね。ししおどし、という言葉を追いかけたひとつの連想がしっかりとフラップを得て、無事に飛翔できたようです。
1詳細な読み、ありがとうございます。あまり自作解説はしたくない方ですが、質問にお応えするとこの作品は一連目の着想だけがあり、書き始めたときはまったく全体像は定まっていませんでした。 案山子への言及や夢想のなかで眠り現実へと回帰することなど、書いた本人よりもさまざまな切り口で作品に近づいて貰えた事が興味深く拝見しました。鳴子をならす案山子は確かにようやく眠ったもの達を起こそうとする不協和音でしょうか。もしかすると、この作品はまだ先があるかもしれません。ヒントを貰えたようです。突き放せない現実が侵食してくる足がかりかもしれません。それが肥大化したら、この作品のラストは変わるかもしれない。
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