老いた愛猫が息荒く苦しそうに
そっと眠るのを見つける朝だ
刻一刻と死へ向かう家族よ
いつか来る死の必然を想えば
大いに泣き、笑い、
時に義憤に駆られ、物事に酔いしれ
哀しみに美を感じてよろめいたり、
愛して、愛して、愛して
この取り囲む世界と日常に
まばたきとコマ割りとシャッターチャンスを稼いで
さあ、でんぐりがえし、蝶の心、さてさてさてさて南京玉すだれ
ケチャップや蜂蜜や雨になって四方八方に飛び散ったり、
研ぎ澄まされたナイフの先端になったり、なりはぐったりしよう
薬缶よ静かな部屋に吹け
心をマッサージする窓際の雨だれよ
連弾するフジコヘミングの優しいショパン
甘い女の指が瞼にうるけて幻惑する朝よ
積み上げた詩片の投稿を待つ原稿の暈と未来に
幻の蟻の行軍、
私の眼差しが光れば
影が走馬燈する、
豆の皮、風船、金魚すくいの破れたあみ、
どこに行くのか金魚よ
音の無い存在と過去よ
家を作ろうとして葉っぱを運ぶ蟻たちが
まるで緑色のヨットたちに見えて
それが大規模工場なのか
ヨットレースなのか
人と共に生きることの競争と無機質な労働の影に
病の孤閨を睨み
途方に暮れて生き迷う
ちっぽけな自分を扱いかねるが
南アフリカで見つかったダイヤモンドの塊が
尊大なるミリオンダラーで
昔、中国で食べた蒸しマントウが
汚れた布団のような掛物の笊の中で座り
その素朴な酸っぱい香りとおいしさが心に残れば
げんこつほどの存在ひとつで命がひっくり返ることの
滑稽とバカらしさに
心ばかりは決しよう、
自由でいよう、と私はそっとげんこつを握っては開き
げんこつを握っては開き、げんこつを握っては開き、決める
闇に骸骨が喰らうからこそだ
さあ、愛する者よ
抱いた猫がいつものご飯を食べ残して
命がしゅうしゅうと燃えている
作品データ
コメント数 : 5
P V 数 : 1452.9
お気に入り数: 1
投票数 : 1
ポイント数 : 3
作成日時 2022-03-23
コメント日時 2022-03-29
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 3 | 3 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 3 | 3 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 3 | 3 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 3 | 3 |
閲覧指数:1452.9
2024/11/21 22時07分35秒現在
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いいですね。軽快な語り口のなかで明暗のバランスがとられていて。 げんこつほどの存在ひとつで命がひっくり返ることの 滑稽とバカらしさに という詩行に語り手の哀切に似た愛情を感じます。ユーモア。
0私は感覚的に唄うようにきままに詩を書いて楽しんでいるので、習慣的に、頭を使って詩を書かないので、的確な批評を下さり、すこしびっくりしてしまいました。仰っていただいた通りだと思います。すごく嬉しい批評でした。ありがとうございます。げんこつとでんぐりがえし、は肝だと私も思っています。感謝します。
1生きる事って笑うことで一旦、清算する、喝破する、みたいなことが多いと思うんです。ままならなさに、じゃぁどうしよう、と言う時、詩を唄うのも一つですね。明暗、幅の広い、ダイナミズムのある詩を書けるようになりたいと思っています。ユーモアと言っていただいて嬉しいです。ありがとうございます!
0人生ということを自己の営みのなかで触れることの写生とその表現を一行一行綴りゆくことはとても困難に思うのです。それは気持ちの吐露とすることなく、自身の信念を「読まれてしまう」ものとして平易ではなくて複雑でそう安易には共感されにくいものでありながらも、命という誰もがわかるはずの命題が宿っているということ。おそらくは、詩を書く衝動がコアに在り、その衝動が成立させてしまうもの。本作はなかなか書けるものではないと、そう読んで思いました。観念になりがちな言語化の難しさ。比喩表現のコアなところのこと。
0人生の達観を落としこむような詩は、毎日詩を書いていると、いつも書けるものではなくて、愛猫が亡くなった、ということの事実に押されて胸に落ちたものです。他者に分析して頂いて自分の状態が客観的に感じられることが多いので、批評感想くださって気が付けて嬉しいです。どうもありがとうございます。
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