二〇一七年三月三十日 「atwiddle」
日知庵で、大学で数学を教えていらっしゃるという田中先生といっしょに来ておられたカナダ人の方に、ぼくが詩人で、ロバート・フロストの英詩を訳しているさいちゅうなんですがと断って、2つ質問した。1つは、atwiddle の意味で、もう1つは、固有名詞の Janizary の発音だった。
atwiddle は old English だろうということで、ぼくの推測通り、詩語で、現代英語にはない言葉であろうということだった。Janizary という固有名詞だが、「ジャニザリー?」と発音されたのだが、こんな固有名詞は目にしたことがないとのこと。でもまあ、この発音も、ぼくの推測通りだったので、ひと安心した。きょう、夕方に、ロバート・フロストの詩を2つ、翻訳の下訳をつくっていた。あした、楽天ブログに、それらを貼り付けようと思う。ようやく、詩の情景が、バロウズの小説の一節のように、「カチリとはまった。」のだ。英詩の翻訳は難しい、でも、おもしろい。
そいえば、日知庵で、ぼくがさいごの客だったのだけれど、さいごから2番目の客の2人組がかわいらしかった。22歳と32歳の左官屋さんのふたりだけど、若い子が大阪の堺からきているというので、ぼくがさいしょに付き合ったノブちんのことを思い出したのであった。ストレートかゲイかはわからないけれど、年上の男の子のほうが、「こいつゲイなんすよ。」と言っていたらしい。ぼくは直接、耳にした記憶はないのだけれど、ちょっといかつい感じの年上の男の子と、かわいらしい感じの男の子2人組だったので、BLちゅうもんを、ふと頭に思い浮かべた。いや~、うつくしいもんですな。若いことって。
ぼくは英語が苦手だった。たぶんふつうの中学のふつうの中学生くらいの英語力しかないんじゃないかな。でも、英詩の翻訳はおもしろい。間違ってても、ぜんぜん恥ずかしくはない。もともと専門じゃないし、詩人が英詩の翻訳くらいできなくちゃだめだと思っているから。詩人の役目の一つに、よい外国の詩を翻訳するというのがあると思うのだ。
きょう寝るまえの読書は、きょう郵便受けに入ってたディックの傑作短篇集『時間飛行士へのささやかな贈物』ぱらぱらめくって、寝ようっと。おやすみ、グッジョブ! 日知庵のさいごから2番目のお客の左官屋の2人が愛し合っている情景をちらと思い浮かべながら寝ることにする。セクシーな2人やった。年上の男の子は、大阪ではなくて、静岡出身だということだった。大坂でいえば、南が似合うなあと言ったのだけれど、北でもおかしくない感じもした。南って、ガラ悪いって、ぼくの偏見だけれど。北はおしゃれっつうか、ふつうの不良の街って感じかな。南は、肉体労働者風のジジむさい感じがするかな。
ロバート・フロストの「Departmental」を訳した。
Departmental
Robert Frost
An ant on the tablecloth
Ran into a dormant moth
Of many times his size.
He showed not the least surprise.
His business wasn't with such.
He gave it scarcely a touch,
And was off on his duty run.
Yet if he encountered one
Of the hive's enquiry squad
Whose work is to find out God
And the nature of time and space,
He would put him onto the case.
Ants are a curious race;
One crossing with hurried tread
The body of one of their dead
Isn't given a moment's arrest-
Seems not even impressed.
But he no doubt reports to any
With whom he crosses antennae,
And they no doubt report
To the higher-up at court.
Then word goes forth in Formic:
"Death's come to Jerry McCormic,
Our selfless forager Jerry.
Will the special Janizary
Whose office it is to bury
The dead of the commissary
Go bring him home to his people.
Lay him in state on a sepal.
Wrap him for shroud in a petal.
Embalm him with ichor of nettle.
This is the word of your Queen."
And presently on the scene
Appears a solemn mortician;
And taking formal position,
With feelers calmly atwiddle,
Seizes the dead by the middle,
And heaving him high in air,
Carries him out of there.
No one stands round to stare.
It is nobody else's affair
It couldn't be called ungentle
But how thoroughly departmental
種族
ロバート・フロスト
テーブルクロスのうえにいた一匹の蟻が
動いていない一匹の蛾に偶然出くわした、
自分の何倍もの大きさの蛾に。
蟻はちっとも驚きを見せなかった。
そいつの関心事はそんなことにはなかったのだ。
そいつは蛾のからだにちょこっと触れただけだった。
もしもそいつが別の一匹の虫に突然出くわしたとしても
その蟻っていうのは巣から出て来た先遣部隊の連中の一匹で
その連中の仕事っていうのは神のことを
時空の本質のことを調査することで、
それでも、そいつは箱のうえにその別の一匹の虫のからだを置くだけだろう。
蟻というのは好奇心の強い種族である。
自分たちの仲間の死骸のうえを
あわただしい足取りで横切る一匹の蟻がいるが
そいつはちっとも足をとめたりはしない。
なにも感じていないようにさえ見える。
でも、蟻は疑いもなくいくつかのことを仲間に知らせるのだ、
触角を交差させることによって。
そして、たしかに仲間に知らせるのだ、
庭のうえのほうにいる仲間に。
ところで、蟻という言葉は、ラテン語の Formic(蟻の)からきている。
「死がジェリー・マコーミックのところにきた。
ぼくたちの無私無欲の馬糧徴発隊員のジェリー。
特別な地位にいるジャニザリーは
彼の事務所は、その将校の死体を
埋葬することになっているのだが
ジェリーを彼を待つ人々のところ、彼の家に彼の死体を運ぶだろう。
一片のがくのうえに置くように彼の死体を横たえ
彼の死衣を花びらでびっしりと包み
イラクサのエッセンスの芳香で満たすだろう。
これがあなたたちの女王蟻の言葉である。」
そしてまもなくその場面で
一人のまじめくさった顔をした葬儀屋が姿を現わすのだ。
そして形式的な態度をとりながら
彼の体をなでるようなしぐさでちょこっと触れ
彼の死体の真ん中のところをぐっとつかみ
彼の体を空中高く持ち上げると
そこから外に彼の死体を運び去るのである。
その様子をじっと見るためにそこらへんに立っている者などひとりもいない。
それは、ほかの誰の出来事でもないのだ。
高貴でないと呼ばれることはぜったいにない。
しかし、なんと徹底的な種族なのだ、わたしたち人間というものは。
ロバート・フロストの「Desert Places」を訳した。
Desert Places
Robert Frost
Snow falling and night falling fast, oh, fast
In a field I looked into going past,
And the ground almost covered smooth in snow,
But a few weeds and stubble showing last.
The woods around it have it--it is theirs.
All animals are smothered in their lairs.
I am too absent-spirited to count;
The loneliness includes me unawares.
And lonely as it is that loneliness
Will be more lonely ere it will be less─
A blanker whiteness of benighted snow
With no expression, nothing to express.
They cannot scare me with their empty spaces
Between stars--on stars where no human race is.
I have it in me so much nearer home
To scare myself with my own desert places.
さびしい場所
ロバート・フロスト
雪が降っている、夜には速く降る、おお、よりいっそう速く降るのだ。
野っ原にいて、目の前の道をよく見ると
地面はほとんど真っ平らな雪に覆われているけれども
ただちょっとした草や刈り株が最期の姿を見せていた。
そのまわりの森はそれを持っている、それとは森のもののことだ。
すべての動物たちが巣のなかで、かろうじて息をしている状態だ。
わたしには霊的な能力がなくて、その数を数えられないのだが
突然、孤独な気分に陥った。
そして、孤独な気持ちになって、じっさいのところ、その孤独さとは
その孤独な時期のものなのだろう。でも、ちょっと孤独さが減った。
日の暮れ方の雪のからっぽな真っ白さのおかげである。
それを言葉にして言い表わすことはできない、言い表わすことは何もない。
そのからっぽな空間が、わたしを脅かすことはできない。
星々のあいだにあるそのからっぽな空間、その星というのも、人類などいはしないところなのだ。
わたしはわたしのなかにそれを持っているのだ、家に近い近いところにだ。
それというのは、わたし自身のなかにあるさびしい場所がわたしを脅かすことである。
英詩を訳しているときのゾクゾク感って、自分が詩を書いてるときのゾクゾク感とは違うのだ。翻訳してるときには、ぼくが思ったこともないことが書かれてて、それを日本語にするときに、脳みそがブルブルッと打ち震えてしまうのだ。まあ、そいえば、自分で詩を書いているときにも、ときどきあったっけ。
OXFORD UNIVERCITY PRESS から出てる 20TH-CENTURY POETRY & POETICS に入っているロバート・フロストの詩を訳しているのだが、つぎに訳したいと思っているいくつかのものは短いので、情景をつかみやすいだろうか。どだろ。逆に、難しいかな。しかし、この 20TH-CENTURY POETRY & POETICS のアンソロジストの Gary Geddes というひとの選択眼はすごい。いままで読んだ詩はどれも、ぼくの目にはすばらしいものばかりだ。詩のアンソロジーは、こうあるべきだと思う。ぼくはこのアンソロジーを、偶然、ただで手に入れたけれど、いま Amazon では、けっこうな値段になっている。安ければ、もう1冊買っていただろうに。版が違うのが出ているのだ。ぼくのは旧いほう。新しい版は、イマジストたちにも大きくページを割いているらしい。H.D.とかだ。ありゃ、いま見たら安くなっている。増刷したのかな。4200円台だった。まえは10000円くらいしたと思うんだけど。
https://www.amazon.co.jp/20th-century-Poetry-Poetics-Gary-Geddes/dp/0195422090/ref=sr_1_1?s=english-books&ie=UTF8&qid=1490860503&sr=1-1&keywords=20th-century+poetry+%26+poetics…
新しい版のものも買った。ぼくの持っている旧版のものよりも、60ページくらい長くなっている。H.D.とかのイマジストたちのものだと思うけど。
https://www.amazon.co.jp/20th-century-Poetry-Poetics-Gary-Geddes/dp/0195422090/ref=sr_1_1?s=english-books&ie=UTF8&qid=1490860503&sr=1-1&keywords=20th-century+poetry+%26+poetics…
1116ページなのであった。旧版が954ページだから。ありゃ、引き算、間違ってた。160ページほど増えてるのだった。旧版に入れてたものを除外してなかったらいいのだけれど。
あした健康診断なので、10時以降は水しか飲めない。きょう、郵便受けにディックの短篇集が2冊とどいてた。1冊はまあまあ、いい状態。もう1冊は、背表紙にちょっとしたコスレハゲがあったのだけれど、本体はきれい。まあ、両方とも、1円の品物だから、いいかな。
これからお風呂に入ろう。きょうは早く寝るのだ。お風呂場での読書は、単語調べの終わったロバート・フロストの2つの短篇詩。お湯のなかで、身体も頭もほぐしながら、詩の情景を思い浮かべようと思う。「Neither Out Far Nor In Deep」と「Design」の2篇。
お風呂から出たら、目がさめてしまった。ロバート・フロストの英詩の単語調べでもしようかな。
1つの短詩の単語調べをしたあと、Amazon で自分の詩集の売り上げチェックをした。『全行引用詩・五部作』が上下巻が売れてた。うれしい。よく知られていない無名の詩人だから喜べるのだな。1冊ずつ売れて。よく知られている有名な詩人だったら、こんな喜びはないであろう。という点でも、ぼくは、無名性というものが、ひじょうに大切なものだと思っている。
二〇一七年三月三十一日 「うんこたれ」
そろそろ家を出る用意をする。きょうは健康診断のあと、オリエンテーション。4時半くらいまでかなあ。帰ったら、きょうの夜中に文学極道の詩投稿掲示板に投稿する新しい『詩の日めくり』をつくろう。きょうは、お酒を飲みに行けないかもしれないな。まあ、いいか。学校行く準備しよう。行ってきます。
オリエンテーションが終って、4時20分くらいに終わって、それから学校からの帰り道、河原町に出て、日知庵で飲んで、きみやに行って、また日知庵に戻って、飲みまくった。帰り道で、きゅうに、うんこがしたくなって、急ぎ足で歩いていたのだけれど、間に合わなかったのだ。部屋に戻って、トイレのドアに手をかけたところで、うんこをたれた。一年ぶりくらかな。ブリブリッとうんこをたれてしまったのであった。急いでズボンを脱いだので、うんこまみれになったのは、パンツだけであった。うんこのつづきをしながら、洗面所で、パンツについたうんこを洗い流していたのであった。すぐにお風呂に入って、きれいにしたけれど。ってな話を後日、4月1日に、これまた日知庵に行って、えいちゃんに話したら爆笑された。あとで、Fくんもきたので、Fくんにも、うんこをたれた話をして、「こんなん、ツイッターに書かれへんもんなあ。『詩の日めくり』にも、よう書かんわ。」と言うと、「そんなんこそ、『詩の日めくり』に書くべきですよ。」と言われたので、書くことにした。
作品データ
コメント数 : 1
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作成日時 2022-01-03
コメント日時 2022-01-03
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
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2024/11/21 19時32分37秒現在
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翻訳にも挑戦してみたいという気持ちを抱くことができた。感謝。
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