フィラデルフィアの夜に XXⅧ - B-REVIEW
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ことばという幻想

純粋な疑問が織りなす美しさ。答えを探す途中に見た景色。

花骸

大人用おむつの中で

すごい

これ好きです 世界はどう終わっていくのだろうという現代の不安感を感じます。



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フィラデルフィアの夜に XXⅧ    

フィラデルフィアの夜に、流星が輝きます。  真っ暗な夜に、闇を切り裂くような一つの光が映え、それは明るい街からでも見えました。 それは大きく、多くの人が見上げ、口々に願い事を唱えたのです。 流星は願い事をひとしきり浴びると、最後強く輝いて消えていきました。 人々は消えてしまった事を惜しみましたが、たくさんの願いを祈る事が出来たのです。  流星の光。 それは多くの鈍い光沢を反射させた。  フィラデルフィア、その夜に手が動きだす。 それは墓場。 墓場に、かすかに光沢を放つ何かが蠢きだす。 毛虫の様に、蚯蚓の如く、大蛇にも見える。 それらが地面を這い、何かを暗闇の中で絡み、捻じり、捩り、曲がり、何かを作り出していく。 それは、流星の光によって照らし出された。  墓場の地面に直接生えた、両の腕。 光を両手で受け止める。  それは祈るようでもありました。  針金が動き出します。 両の腕を作る針金たちとは別に、不法に廃棄されたゴミから、最後の力を振り絞る様に。 名もない墓に生えた両の腕はそれらをやさしくつまみ上げ、形を変えてさせていった。 電気ケーブルの銅線の花。 小さな針金をいくつもつなげて作り上げた樹木。 友達だと言いたげな幾つもの小さな工具を引きずってきた針金の、聖人の像。 飛び跳ねてきた多くのバネを使った、塔。 誰かの名前をいくつも描き上げた、針金が集まってできた本。 いくつもいくつも、這い出してきた針金の願いを叶えるかのように、両の腕はやさしく、かつ素早く針金たちをもって作り上げていったのです。 絡め、捻じり、捩り、曲げて。  日が、昇りました。 誰も来ない、身元が分からない人ばかりが埋葬された墓に、姿を変えた無数の針金たちが並んでいました。 それはどれも堂々と、胸を張って誇っているかの様。 そしてその中に。 地面から生えつつ両の手を合わし、祈りを捧げている針金の像がありました。


フィラデルフィアの夜に XXⅧ ポイントセクション

作品データ

コメント数 : 2
P V 数 : 903.4
お気に入り数: 0
投票数   : 0
ポイント数 : 0

作成日時 2022-01-02
コメント日時 2022-01-04
#現代詩
項目全期間(2025/04/11現在)投稿後10日間
叙情性00
前衛性00
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閲覧指数:903.4
2025/04/11 19時05分16秒現在
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    作品に書かれた推薦文

フィラデルフィアの夜に XXⅧ コメントセクション

コメント数(2)
田中宏輔
田中宏輔
作品へ
(2022-01-03)

電気ケーブルの銅線の花。 小さな針金をいくつもつなげて作り上げた樹木。 イメージがあざやかに目に浮かびます。

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羽田恭
田中宏輔さんへ
(2022-01-04)

実は小説家になろうの企画で流れ星で童話を書こうというのがありまして。 それで書いたのがこの作品です。 あまり童話的ではなかったかもしれないですが。 強烈なイメージを出せたように思います。 そこはよかったですね。

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投稿作品数: 1