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秋雨に映る世界と私
蜘蛛の巣巡る網戸が破れる 泣き濡れた風が肌を切り裂き 銅鑼のような 乾いた音色が響く 黄泉の睡蓮が柔らかに薫り 刹那、降りしきる秋雨 雑音 雑談 雑踏 全ての雑を掻き消して 瞬く間に大地に硝子が創られ 瞬く間に人々が溺れてゆく 鴉は一時の行方不明者となり 鳩は一時の水死体となる 塹壕戦に放りだされたような 空中戦に投げだされたような 無軌道 無慈悲 無数の銃弾 透明な機銃には薬莢も硝煙も無い 何処からか 常世の花が匂いたつだけ 雨中の悲劇 或いは喜劇 曇天の下 腐った奴の石榴を割った 死による救いを 死による浄化をと呟いて 漂う灰色の冷めた視線の中 私が朱で塗り潰した死体は ペンキが雨水に流されても赤く 私の罪を洗い流してはくれない 穴の空いたレインコート 折れた蝙蝠傘 私を弾劾裁判するように 私に死刑判決を下すように 無言の銃弾が降り注ぐ ――やがて雨は止み 水色が世界を包み込む 眩い光に晒される 罪に濡れた私 哀しげに揺れる太陽 啼くことをやめない鴉 鳩の透き通った紅い眼も 私に有罪を告げる もう乾くことのない革靴 赤色がおちない両手とシャツ 水鏡に映る私の顔は 絞首されたかのように蒼白だった
秋雨に映る世界と私 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 856.5
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2017-10-15
コメント日時 2017-10-27
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
漢語を多用することによるインパクト、黄泉、常世と言った単語が醸し出す「境界領域」のイメージ。 塹壕戦、空中戦といった言葉が作り上げていく詩の空間と、〈無軌道 無慈悲 無数の銃弾/透明な機銃には薬莢も硝煙も無い〉といった、非現実の、しかし激しい戦闘のイメージ。 〈泣き濡れた風〉はクリシェですし、〈黄泉の睡蓮〉といった言い回しも、言葉のカッコよさから選択されているような印象を受け、冒頭部分に重々しさをもたらす為に置かれた言葉のように感じました。 〈蜘蛛の巣巡る網戸が破れる〉から、〈刹那、降りしきる秋雨/雑音 雑談 雑踏〉に飛んでも良かったように思いますが、どうでしょう。鴉、鳩、この暗喩は何を、誰を差しているのか。 〈曇天の下 腐った奴の石榴を割った〉脳天を割った、イメージ。他者を言葉で抹殺してしまった。ビジネスで相手を叩き潰してしまった。その時の心理的イメージを映像化したら、こんな姿をとるのではないか。 〈赤色がおちない両手とシャツ〉マクベス婦人が見る幻影のようです。洗っても洗っても、自ら手を下してしまった、その記憶、罪悪感は消えない、そんなイメージのショッキングな形象化。 題名は、これでよいのでしょうか。少し漠然とし過ぎている気もしますが・・・
0花緒さま コメントありがとうございます。 一連目を書きながら、続きのイメージが湧いてきたので二連目以降も続けたのですが、 確かに一連目で終わりにした方が余韻も残るし良かったのかもしれません。
0まりもさま コメントありがとうございます。 読み返すと、御指摘頂いた部分は確かに飛んでも良かった気がします。飛んだ方がモタりがなくなってリズムが良くなるというか。 鳩や鴉は情景のパーツの一つなので、特に暗喩とかではないですが、強いて云えば、鳥ですら逃げることの無い終末的な雨であることを表しているというか。 タイトルは書いたときはいくら考えても思いつかなかったので、これになってしまいました。
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