宇宙のどこかにある
星の上に立っていた
アポロが見つけたような
景色がある
足元に
四角い穴があり
ひとがひとり
通れる階段が
無機質にある
穴の中を覗いてみる
行けば行くほど
闇深く
何があるのか
わからない
ゆっくり
おそるおそる
恐れはなく
降りていく
暗いけど
強く無い
狭いけれど
苦しく無い
二十四段ほど降りる
段差は終わり
少し右手に
赤茶色で重厚な扉(ドア)がある
近づいてみれば
おばあちゃんの家の
タンスのように
暗めの茶色で
木製だ
草木が彫刻されている
その細やかさ
遠くからは
単なる木目調
触れても
無数の穴が開いているような
扉に触れる
それが木でなく
金属だと知る
分厚く
汚されていない
銅だ
眺めている
だんだん
薄く透明になっていく
向こう側に見えるのは
やはり宇宙だ
もといた位置から
地球と海王星くらいの距離にある
そのぐらいの
宇宙
どうしても
知りたくて
枠を超える
君がいる
ドラゴンボールのキャラのように
浮いている
まっすぐ
私もまっすぐ立っている
けれど
浮いてはいない
君は浮いている
私は浮いていない
同じ高さにいるけれど
横に立ってはいない
敵とも味方ともわからない
君が
「うん、お疲れ」
と言う
濃い紫色の空気が
僕たちのあいだに漂って
だけど僕らは
エーテルを感じていないようで
既に触れ合っていた
少しだけ
安心感がある
君は静かな瞳で
こっちをじっと見る
口元には微笑を浮かべ
過剰ではない
優しさを保持したまま
「大丈夫だよ」
と言う
僕は紫の宇宙を愛している
居心地がいい
だけど
ここに長く居続けてはいけない
直感があった
おかしな話だけれども
ここは二十五メートル四方の中にある
背後に
降りてきた階段
扉があった場所に
穴
なんとなく
右手を見てみると
さらに降りるための階段がある
君はそちらの方を見ながら
「気が向いたらそっちに行くといいよ」
と何も言わずに
僕はそちらに歩いて行く
ミルク抹茶のような
パステルカラーの階段を見つける
そこは妙に明るくて
柔らかい黄緑色が
広く長く続いている
三人くらいが
横に並んで降りられる
今は私しかいないので
僕ひとりで降りていく
足取りも体も軽い
少し楽しい
二十五メートルくらい
階段を降りる
その先に扉があるよ
と君が背中のほうで言う
僕はちょっとだけ振り返って
会釈をする
扉らしい扉は無い
白い光がひとつの塊になって
ポワンと存在している
光に触れないような距離で
かといって
遠すぎない距離で
光と自分の間の
なにもないところを感じる
ずっと見ていた
君がうしろから囁く
「この扉の先に行くんだよ」
僕は振り返らない
扉のような白い光を
じっと見ている
より白くなっていく
輝きを増す
ただその純粋さを
極めていっているような
世界だ
増す白
密度が極限まで上がったあと
だんだんとゆるく軽くなって
霧のような
柔らかい空気になる
頃合いを見計らう
その光の中を通過する
偉い政治家が
叱られて監禁されていた部屋がある
三段
鉄でできた
非常階段のようなものを降りる
特に何もない
何かがある
かといって
ためにはならない
通過点
無機質で灰色で四角い部屋の
対角線上に
鉄の扉がある
またも
それは
人の手垢のついてない扉
新品の作りたて
ふと右下に目を向ける
君のポスターがある
いつもの君がそこにいる
紫の宇宙の君とは
違う君だ
何もしゃべらない
僕は少し不安になるけど
ポスターだから仕方がない
ポスターをじっと見つめる
三秒後
扉をじっと見つめる
開けると何があるのか
全く見当もつかない
知りたい
思い出している
とにかく
この扉を開けよう
どのぐらいの重さかはよくわからない
ガチャッ
思ったより普通に開く
扉を開けた先の世界は
またも真っ白だ
白いかどうかを
確認する方法がないほど白い
どこまでいっても
壁があるかどうかすらわからない
白というのは
光の白なのか
白い何かの白なのか
分からなくするのが早い
入っていく
自分も見えないほどに白い
体が溶ける
静かに
秒で
溶けた
苦痛はない
ただ
自分が思念体で
浮かんでいる
漂ってみる
君が正面から現れる
よくここまできたね。
結構、大変だったでしょう。
ねぇ。
よくがんばったね。
君の歳でここまで来るのって
結構珍しいことだよ。
うん。
ここが、その先の世界だよ。
君が僕に溶ける
僕も君もいない
セレナイトの塔が
光の中にたたずむ
作品データ
コメント数 : 3
P V 数 : 1185.2
お気に入り数: 0
投票数 : 1
ポイント数 : 3
作成日時 2021-10-03
コメント日時 2021-10-04
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/22現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 1 | 1 |
エンタメ | 1 | 1 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 3 | 3 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 1 | 1 |
エンタメ | 1 | 1 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 3 | 3 |
閲覧指数:1185.2
2024/11/22 00時54分21秒現在
※ポイントを入れるにはログインが必要です
※自作品にはポイントを入れられません。
初読初見の印象ですが、空白の間が適度に配置されていますし、語りの親しみやすさや見た目などからも長さや疲れは感じさせないですね。ドラゴンボールのキャラはたくさんありますが、インターステラーなユニークな喩えがしました。
1わーい。 コメントありがとうございます。 インターステラー見てみます~! (まだ見たことないのです)
1インターステラー見てきました。 個人的にあの映画、酷評したくなる感じでしたが、それもまた勉強になりました笑 ありがとうございます。
1